今年の1月にコンセプト動画が公開され、おおいに話題を集めたニンテンドーラボ。
4月20日の発売日に早速入手し、ゴールデンウィークの間にダンボールと格闘していた人も多かったのではないかと思います。
我が家もご多分に漏れず、ゴールデンウィークの半分をニンテンドーラボに費やした一家ですが、息子たちがニンテンドーラボを楽しんでいる姿を見て、感じたことをメモしておきたいと思います。
個人的に、一番強く感じたのは、ニンテンドーラボこそが任天堂が考える「仮想現実」の1つの答えなんじゃないかな、ということです。
■仮想現実とはVRゴーグルのこと?
いわゆる一般的な「仮想現実」、つまり「バーチャルリアリティ(VR)」という言葉で多くの人がイメージするのは、ヘッドマウントディスプレイやVRゴーグルと呼ばれる端末でしょう。
PlayStation VRに代表されるように、プレイヤーの頭部にディスプレイを装着し、360度の仮想空間に没入することができる機器が多数発売され、2016年はVR元年と呼ばれたほど。
ただ、任天堂はこのVRゴーグルを中心とした「仮想現実」に対しては、今のところ一貫して距離を置く発言をつづけています。
象徴的なものは、スーパーマリオやゼルダの伝説の生みの親として知られる宮本茂氏の、プレイヤーが現実世界から閉鎖されるVRの場合、家族で一緒にプレイできるゲームが難しい、という趣旨の発言や、君島社長によるVR技術を使ったゲームではまだ面白いものができていない、という趣旨の発言があげられるでしょう。
参考:任天堂社長「2年目の『スイッチ』は普段ゲームに見向きもしない層まで広がる」
競合企業であるソニーのプレイステーションがVRで先行する中、必ず聞かれるこの質問に、任天堂の方々がある意味うんざりしているだろうことは想像に難くありません。
当然ながら、任天堂も過去にバーチャルボーイというVRゴーグルの先駆けとも言える製品を発売した歴史もありますから、自社独自のVRの研究もしているはず。
それでも、現時点でVRゴーグルに手を出さないのは、おそらく任天堂にとって最も重要な顧客である子ども達に斜視のリスクがあるためではないかと想像しています。
参考:VRによる斜視リスクに“企業はどう対策しているのか”を聞いた
■二次元でも没入できるニンテンドーラボ
そこで、ニンテンドーラボの話に戻るわけですが。
まずは百聞は一見にしかず、この動画を見てみて下さい。
恥ずかしながら、これは我が家のゴールデンウィークの一幕ですが。
ニンテンドーラボのロボットによって、完全に次男がロボットになりきっているのが伝わるのでは無いかと思います。
もちろん、マリオやゼルダをやっていても、子ども達はゲームの世界に十分没入しているわけですが。
やはり小さい子どもはコントローラーの操作には不慣れなことが多く、敵の攻撃にとっさに反応できずにゲームオーバーになることがしょっちゅうあります。
それがニンテンドーラボのロボットでは、自分の手足の動作がそのままロボットに反映されるので、これだけロボットになりきって楽しむことができているわけです。
この動画、ロボットを組み立て終わった直後の最初のプレイですからね。
画面こそ二次元のテレビ画面ですが、子どもは完全に仮想現実の世界に没入できていると感じます。
おそらくニンテンドーラボでロボットをプレイした瞬間、次男の頭の中では、先週見たばかりのレディプレイヤー1の「俺はガンダムで行く」のシーンがシンクロされていたことでしょう。
(映画を見てない人には上手く伝わらないかもしれません、すいません。)
■バイクを曲げるのに身体を曲げるのは当然?
同じようなことは、ニンテンドーラボの他のゲームでも感じることができます。
特に分かりやすいのはバイク。
一見、ダンボールでできたハンドルだけのシンプルな作りですが、ちゃんと実際のバイク同様、右ハンドルを手前にひねると加速して、ハンドルを左右に曲げれば曲がります。
特に注目したいのは、ハンドル毎身体を傾けてもちゃんと曲がるところです。
昔のファミコンやプレイステーションでレースゲームをプレイしていて、ついつい手や身体を曲がりたい方向に曲げてしまって友達に笑われたことがある人は多いのではないでしょうか。
我が家でも、次男がレースゲームで、コントローラーを持ったまま身体を回転させてなんとか曲がろうとしている姿(もちろんゲーム内では全く曲がらない)を、家族で笑っていたことがあります。
でも本来のバイクなら身体を傾けて曲がることができるのはむしろ当たり前。
ニンテンドーラボのバイクは、子ども達を見事に仮想空間のライダーとシンクロさせてくれているわけで。
身体を傾けたり回転したりすることで曲がろうとしたのを笑われること自体が、従来のゲームがただのゲームであったことの象徴とすら思えてくるわけです。
■子ども達の想像力があればVRゴーグルはいらない、かも
しかも、ニンテンドーラボではそのコントローラー自体も、自分でダンボールで作ることになります。
そもそもファミコンもプレステもなかった時代から、子どもの頃の私たちはダンボールで秘密基地を作り、武器を作り、ロボットになっていたわけです。
大人の視点からすると、VRゴーグルで360度全く違う世界に没入することこそがVRであり仮想現実かもしれませんが、子ども達はVRゴーグルがなくても、自分で作ったダンボールのハンドルやロボットを入り口に、自分達の無限の想像力で容易に現実と仮想空間の隙間を埋めることができるはず。
そんな子ども達が、斜視の危険を気にすることなく仮想現実を楽しむための、現時点での最適解こそがニンテンドーラボである。
そんな任天堂のメッセージを、ニンテンドーラボのゲームの数々から勝手に感じてしまうのは私だけでしょうか?
改めて振り返りたいのは、任天堂の宮本さんや君島社長のVRに対するコメントです。
「プレイヤーが現実世界から閉鎖されるVRの場合、家族で一緒にプレイできるゲームが難しい」かもしれませんが、ニンテンドーラボの仮想現実世界であれば、子どもが楽しんでいる姿を親も楽しく応援することができます。
「VR技術を使ったゲームではまだ面白いものができていない」かもしれませんが、ニンテンドーラボは子ども達が素直に楽しむことができる、面白いゲームが実現できている、と感じることができるわけです。
もちろん、ニンテンドーラボは必ずしも子ども向けというわけでもなく、基本のコントローラーを作り終わってからは、大人も楽しめる奥深い世界が拡がっているわけですが。
少なくとも工作好きのお子さんがおられる家庭なら、今からスイッチをセットで買ってでも体験しておくべき世界なのではないかなと感じます。
私たちが子どもの頃に夢見ていた未来が、間違いなく、今、ここにあります。
いや、ホント今すぐ5歳児に戻って、子どもの視点で素直にニンテンドーラボを楽しみたいです。
ちなみに、さらにニンテンドーラボで感動するのは、このダンボールによる仮想現実を実現している基礎技術が、実は赤外線カメラという、スイッチが発表された時に何で実装されているのか凡人の私には全く理解できなかった機能だった、ということなんですが。
えらく長くなりましたので今日のところはこの辺で。
ニンテンドーラボが開いてくれた、もう一つの仮想現実の扉が、これからどこに続いて、どのように拡がっていくのか、息子たちと引き続き楽しませていただきたいと思います。