(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年5月4日付)
北朝鮮との和解? それからイランとの戦争?
ドナルド・トランプ大統領の基準に照らしても、ワシントンの万華鏡は目がくらむような速さで回っている。
大統領は、北朝鮮政府と取引をし、彼の国の核兵器を廃棄させたいと話している。そしてその一方で、イラン核合意を廃棄することによって米国のリーダーシップに対する諸外国の信頼を打ち砕くつもりでもいる。
この2つの考えが矛盾することは、意図的に見過ごされている。これはもう、核兵器の拡散に向かっている世界的な流れを止める方法ではない。
トランプ氏と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制との関係が目を見張るほど和らいだことは、予想を裏切る展開だった。
両者はつい数カ月前まで脅迫と侮辱の応酬を繰り広げていたのに、今では朝鮮半島の非核化と恒久的な平和条約の締結が取り沙汰されているのだから。
おまけに、大統領はおなじみの慎み深さを発揮して、自分はノーベル平和賞を受賞するかもしれないなどとのたまう始末だ。
他の者はこのような流れについて、いくらか疑念を抱いても許される。筆者は先日ソウルを訪れた際、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が始めた平和外交に対する疑問の声を数多くの人々から耳にした。