INSIDE HUDDLE

日大よ、どこへ行く?

日大対関学の第51回定期戦。試合前のセレモニーで握手をかわした日大主将QB18德島と、関学主将QB10光藤

とても残念な試合だった。
5月6日、アミノバイタルフィールドで行われた日本大学フェニックスと関西学院大学ファイターズの第51回定期戦は、21対14で関学大が勝利した。

昨年の甲子園ボウルの再戦、好天にも恵まれ、キャパシティ3000人のスタンドは、ほぼ一杯に埋まっていた。
日大は4月に行われたカレッジ日本代表候補たちとのスクリメージで、日本代表候補たちをきりきり舞いさせるスピードを発揮していたと取材担当者から聞いていた。関学大は4月下旬に行われた明治大との一戦で2年生QB奥野耕世がデビュー。下級生らしからぬ老獪なプレーを見せていた。
甲子園ボウルを制し自信をつけた日大と、新たな体制で王座奪還を狙う関学大。両チームのポテンシャルを推し量る一戦として好試合を期待していたが、その期待は序盤に打ち砕かれてしまった。

日大の最初の攻撃がパントに終わった後、自陣46ヤードから始まった関学大の攻撃だった。
最初のプレーで右ロールからパスを投げ終え、プレーを完全に終えていたQB奥野に対し、バックサイドからパシュートしてきた日大のDLが背後から襲いかかった。後ろから追突され、体が後ろに『くの字』に曲がって倒れた奥野はすぐには立ち上がることができず。負傷退場を強いられた。日大のDLは不必要な乱暴行為の反則と判定された。2プレー後には奥野に代わってQBに入った西野航輝(4年)がブーツレッグのフェイクをした後に再び同じ日大DLに激しく倒され、不必要な乱暴行為の判定を再び受けた。
プレーが終わったタイミングでも容赦ないヒットをしてくる日大DLに対し、プレーが終わりかけているタイミングで関学大の選手がブロックをしたことでもみ合いとなり、日大DLが相手のヘルメットを叩いたとして資格没収(=退場)となったのはその2プレー後だった。さらにヒートアップしかねない状況に、審判団は一旦試合を止めて、両チームに注意を促した。

フットボールは格闘競技である。選手は相手を打ち負かしてやる、という強い闘志を持ってプレーしている。しかし、相手を不必要に傷つける行為は、ルール上はもちろん、倫理上も厳しく禁じていることは言うまでもない。
現場で見た印象、そして、後に映像でも確認したが、少なくとも最初の奥野に対するヒットは、明らかにプレーとは関係ない、かつ、大きな負傷をしかねない、不必要で危険なものだった。奥野が後半からフィールドに戻ることができたのは不幸中の幸いだった。

「力が足りていないので必死。(退場になったDLの選手に対しても)闘志が足りていなかったので、様々な形でプレッシャーをかけていた。それが私のやり方」
日大・内田正人監督は試合後にラフプレーが頻発したことについてそうコメントした。

私が取材を通じて知った日大は勝利に対して合理的な考え方をするチームだったはずだ。反則はチームに大きな不利益をもたらす行為であるが故に、反則をした選手は即刻交代を命じられていた。反則は技術的にも精神的にも未熟であるから起こるのであり、力の足りない選手はフィールドに立つことが許されない、反則をする選手は『恥さらし』という文化を持っていた。

チャンピオンは望む、望まないに関わらず、周囲から注目される、競技の看板を背負う責任がある。

今回のラフプレーは、対戦相手はもちろん、競技の品格を傷つけるものだった。仮に相手に重大な負傷をおわせてしまえば、反則をした本人も深い傷を負うことになる。
闘志をはきちがえた、あまりに稚拙なプレーを見せられた落胆と怒りは多くのフットボールファンが感じている。
私もその一人である。

「周囲の期待を裏切るのは男ではない」

かつて、日大を率いた篠竹幹夫監督の教えを受けたOBの方々から教えてもらった言葉だ。
この一戦を契機に、日大が正しい必死さをフィールドで表現するチームに生まれ変わってくれることを切に願っている。

文=上村弘文