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【社説】

麻生氏の暴言 あなたもアウトです

 福田淳一財務省前事務次官の女性記者に対するセクハラ問題をめぐる麻生太郎財務相の発言は、国政の中枢を担う者としての見識を疑う。発言を撤回し、進退を検討すべきだ。

 「セクハラ罪っていう罪はない」。麻生氏がフィリピンでの記者会見で述べた発言は聞くに堪えない暴言である。しかもこの問題では一度ではない。「(女性記者に)はめられた」とも言っていた。

 下村博文元文部科学相ら自民党議員らの心ない発言も続く。セクハラの被害者を批判するような発言は二次被害を拡大させる。まずそのことを認識すべきだ。

 そもそも法を持ち出すまでもない。性的な言動で不快にさせるセクハラは、人の尊厳を傷つける行為である。こうした人権侵害をなくすために取り組むことが今や社会の共通認識である。

 民間では男女雇用機会均等法で事業主にセクハラのない職場環境の整備を求めている。

 公務員もまた、人事院規則によってセクハラ防止について定められている。各省庁の長は具体的な対策などを規定などでまとめ、職員に明示することを職責として求められている。

 福田氏が次官を辞任したのは、職員トップである自らの不適切な言動によって、職責を果たせなくなったからにほかならない。財務省も福田氏のセクハラを認定している。

 にもかかわらず、麻生氏は法にないことを逆手に取って、福田氏を擁護するかのように述べた。

 これまでも被害者に対して名乗り出るように求めるなど、配慮に欠ける発言を繰り返している。

 財務省が福田氏のセクハラを認定した後にも、大臣自らが省の認定と異なるかのような発言をして矛盾を広げている。本来ならば職場環境を改める先頭に立つはずの大臣が、セクハラと認めていないと受け取られかねない。

 国政の要職を担う者としての自覚や資質にも欠けるといわざるをえない。麻生氏が今後も職にとどまり続けるなら、モラルの崩壊など有形無形の悪影響を及ぼすことになるだろう。

 かつて憲法改正について「ナチスの手口に学んだらどうか」と述べるなど、数々の問題発言を繰り返してきた麻生氏である。

 福田氏の問題についても「事実ならアウト」と発言したが、もはや、大臣当人がアウトなのではないか。

 

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