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コンサルタントに向いている人とはどのような人か

こんにちは、シャイニング丸の内です。最近ツイッターでしばしば、コンサルタントに向いている人診断やロジカルシンキングに関するツイートを見て疑問を禁じ得なかったのでアンチテーゼとしてコンサルタントのあるべき姿勢と求められる資質を論じてみます。

 

コンサルタントの使命は企業を動かすこと

コンサルタントの使命、それはお前の成長でも市場価値を高めることでもロジックを組み立てることでも膨大なエクセル計算を実行することでもパワポのフォントを整えることではありません。企業を動かし、インパクトを創出することです。

コンサル論が議論されるとき、本来はただのツールに過ぎないフレームワークやロジカルシンキングが重視され過ぎて、如何に企業を動かすかが論じられないことは本末転倒です。

グローバル人材≠英語を話せる人という関係と似ています。英語は単なるツールであって、英語だけ話せて専門性のない人間には質の低い通訳程度の価値しか出ません。

ロジカルシンキングやフレームワークはコミュニケーションのための道具であってそれ単体でコンサルタントの存在価値を作るものではありません。その道具だけを使いこなせても優秀な作業員ではあるものの、本来の目的を達成出来るコンサルタントではないでしょう。

 大げさに表現すればロジックなんて不要です。以前ジュニア陣が膨大な分析に基づくプレゼンテーションを行いましたがどうも社長には刺さっていません。しかし、最後にシニアがボソッと数分話すと社長の目の色が変わっていきました。結果的にこのプロジェクトはクライアントにとって歴史的な規模の投資の実行に結びつきました。

「コンサルタント」というものをまさに生で見る機会でした。

*ロジカルシンキングが出来ないという意味では全く無い

コンサルタントは2種に分かれているが混同され語られている

コンサルティング業界は数年前から採用数が大幅に拡大しており、そのマジョリティは経営企画部のアウトソース機関、BPO(Business process outsourcing:業務上発生する単純作業の外注)に近寄っていっていることは間違いありません。

ただし、企業の悩みがなくなったという意味では全く無く、むしろ不確実性が増している世の中において悩みの量と複雑性は増大しているとも言え、市場がなくなっているというわけではありません。コンサルティング市場自体は拡大しておりその主なドライバーがBPO的なコンサルタントの増加にあるという意味だと思います。

BPO的なコンサルタントが本来の戦略コンサルタントと自分を混同し、コンサルティング業界を論じ始めると、この業界で必要なのは

・ロジカルシンキング

・フレームワーク

・高速資料作成術

・エクセル術

となります。

インパクトを創出するコンサルタントという観点ではこれらは「言葉が上手に話せます」以上の意味はもっておらず必要十分条件では全くありません。

これからコンサルティング業界に行こうか検討している人は自分がBPO型コンサルタントになりたいのか、インパクトを創出するコンサルタントになりたいのか十分に注意すべきです。コンサルタントの先輩の話を聞くときにもその先輩がどちらのタイプかも注意しましょう、繰り返しですがマジョリティはBPO型コンサルタントです。

事業会社の優秀な人と優秀なコンサルタントの違い

コンサルティング業務を行っていると重要なプロジェクトでは顧客側で出てくるのはエース級です。大手企業のエース級なので当然のように論理的ですし、フレームワークもよく知っています。それではその優秀な人に対して高いフィーを請求するコンサルタントはどのようにしてその価値を保つのでしょうか。

知識体系の構成され方が異なる

事業会社はその言葉の通り、事業を運営することで収益を得ます。

単純に整理すれば企画→製造→販売を続け、改善します。事業会社のエースは企業内で重視されている機能を低いミス確率で高効率で運営しときには革新的な改善手法を生み出し高いパフォーマンスを出すことで出世し「エース」となります。必然的にオペレーションがその知識体系の中心となります。

単純化して表現すると以下の図のようなイメージです。

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例えば自動車会社の販売店配属になり、店長を務めていたなら競合のコスト構造は派生的に知っている場合はありますが、常に使う知識ではなく営業トークで使えたという都合で「偶然知っているかも知れないもの」です。

出世のための必須ツールではありません。これを知らずに高い販売実績を上げて地域統括へ出世したことは、なんら否定されることではありません。

日本企業の場合は経営企画部と一緒に働く機会が多いですが、経営企画のプロというのは稀で多くは複数部署を経験し、キャリアの一つとして経営企画部にいるという方々です。

その方々の知識は特定のオペレーションを円滑に動かし、また改善していく過程でついたものですので成長戦略のように俯瞰的に業界を見渡す機会は稀でしょう。

 

これに対してコンサルタントの知識体系はどのようなものになっているでしょうか。

コンサルタントは特定のイシュー(課題)があり、そのイシューを解決するためにはどうするべきか、という問いに対して答えを出すことが日常業務です。

 コンサルタントの頭の中は日々の業務を通じてイシューを分解する形で構成されます。

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このイシューを解決するためには

・課題を分解する能力

・小さく分解された課題に対して適切な情報を特定する

・集められた情報を用いて解決策をひねり出す

・細切れにされた課題に対する答えを組み合わせ最後は中心となる課題の答えとする

このような能力が必要となります。

どちらが「優秀」という議論に意味はない

事業会社のエースとコンサルタントの知識体系の出来上がり方の違いを見てみました。異なる評価体型やミッションを持った者同士を並べてどちらが「優秀」や「論理的か」という議論には全く意味がないことは認識しておきましょう。

そして当然ながら頻繁に経営課題とされるイシューに対する解決策を導出するという観点で比較するなら慣れているコンサルタントが優位です。

コンサルタントの視点は経営者の視点と同じなのか

どうやらコンサルタントが求められる視点というのはオペレーションの遂行および持続的な改善を要求される社員とは異なるようです。それではこの視点は経営者と同じ視点なのでしょうか。実はこれもかなり違うと思います。

経営者が考える経営課題とは実はより複雑であり、コンサルタントに発注される時点でのイシューはかなり単純化し「切り出された課題」であるということは認識しておいたほうがよいでしょう。

例えばコスト削減プロジェクトであっても、「小ロット多品種が非効率であるから車種を絞ろう。最も売れており利益率の高い車種に注力する」という当然に思える結論は経営者からすれば当然ではありません。

それでは「今」利益率の高い車種は会社のフラッグシップモデルたりうる憧れを社内外から惹きつけられるのか、敢えて困難な開発に挑んでいる研究チームを潰すことは会社全体として新たな試みに対する消極的な態度と捉えられるため長期的な競争力減少にならないか、潰される車種のために20年働いてきた人の気持ちをどうするのか。

「イシュー」と綺麗に切り出せるほど人間の組織は単純ではありませんし、その組織の中で一つ一つの判断は自分のメッセージであるわけです。これを敢えて外注可能な形に単純化したものが「イシュー」と呼ばれているものであるケースは多く、コンサルタントも経営者と「同じ」目線を持っているとは言えないでしょう。

もっと言えば、明確なデータに基づいて予測可能な経営判断なんてこの動きの激しい時代には重要な課題であればあるほど多いわけではありません。

こちらは経営論になるので別の機会に考えてみようと思います。

必要なのはスキルじゃねぇ、ウィル(意思)だ

少々脱線しましたが、これまでの議論を踏まえて考えると、コンサルタントに求められる素養とはなんでしょうか。

BPO型のコンサルタントに必要なのはロジカルシンキング、エクセルのようなツールの使いこなし、淡々と安定的にパフォーマンスを出す能力、体力あたりかと思います。要は目指せスーパー作業員です。

会社を動かす戦略コンサルタントにとってはロジカルシンキングのようなツールの使いこなしは当然出来るとして、その先に求められるのは強烈なウィル(意思)ではないでしょうか。

産業を盛り上げたい、片手落ちだが強烈なビジョンを持っている経営者と共に走りたい、国を創りたい。その中でたまたま自分にとって適切な立ち位置がコンサルタントという立場であっただけ。そのようなウィルこそが人を動かし会社を動かしていくものかと思います。

ロジカルシンキングが必要ないとは決して言っておりません、「英語話せればグローバル人材」ではないように、一定程度の分析が出来たり論理的に物事が考えられたりということは言葉を話せる程度の価値であって、それを極めたところでウィル不在の人が行き着く先は言われたことをミスなく高速でこなすスーパー作業員型コンサルタントです。

ちなみに技術の方向性を考えるとスーパー作業員型コンサルタントは技術の発展と共に衰退するビジネスです。エクセル・パワポ・ロジカルシンキングを極めることを自分の中心的な価値とする危険性は認識しておきましょう。

ウィルがあればスキルなんて後から付いてきます。一定レベルのファームに内定する時点でその学習スキルは一定程度認められているということで、その人が本気で取り組めば習得不能なスキルというのは極めて困難なもののみではないでしょうか。

内定すらしない人は最低ライン以下なので自分自身の適正を見つめ直しましょう。

ウィルはどうやって見出すのか

巷にはスキルの付け方、学び方は大量に出回ってますね。一方で重要だと論じたウィルについてはスキルと比較して重視されていないと思います。私もこの問題に対する明確な答えを今持っているわけではありませんが、意思を持ち情熱的に動いている人の特徴としてはとにかく行動の中でそれを見つけたということがあるかと思います。

自分がやりたいことは机の上でじっと考えてひねり出されるものではありません、様々なものを見、経験する中で見出されるものと思います。未だ明確なものが語れない人はとにかく行動してみてはいかがでしょうか。

意思を実現する手段は多様にある

やりたいことがある・創造的=起業・スタートアップ

やりたいことがない・非創造的=会社勤め

これはあまりに単純過ぎる発想です。

私はビジョンがある起業が増え、結果的に積極的に挑戦がなされること自体は良いことと思っていますが、誰も彼も起業しろとは思いませんし、起業家以外が非創造的であるとも思いません。

何らかの意思の実現には実に様々な関わり方があるはずなのですが過剰に起業家以外の関わり方を見下し、起業家に価値を起きすぎる。

コンサルタントとしてプロジェクトに関わることは大企業内部の独特の遅さやリスクへの恐れに苛立つ機会も多いものの、動き出した際に出せるインパクトは小さな起業よりも大きなものになります。

何よりもインパクト(ここではカネ)の大きさのみで、その人を評価し見下すのは非常に下品な行為に感じます。そのような意見を見ると様々な仕事に敬意を持って見て欲しいとは思いました。

スキルの病に陥らず、ウィルを実現して欲しい

随分と長い文章になりましたが伝えたいこととしては、「言うことを聞くだけの作業員であればスキル重視でもよいが、大きなインパクトを出すコンサルタントでありたいならウィルを持とう」です。

そんじゃねー