一見すると、普通の家。
しかし、中の様子は…
壁が崩れていたり、天井が剥がれていたりと、随分傷んでいますよね。
群馬県玉村町に建つ、築40年以上のこの家。
いま、ここを拠点に町の交流を生みだそうとしている女子大学生たちがいるんです。
奮闘する姿を取材しました。
■ぼろぼろの空き家を30万円で購入した大学生
かつて町の中心商店街として賑わっていた通りに建つ、3階建ての家。
中を見てみると…
土壁は崩れ、ぼろぼろに剥がれ落ちています。
天井からは雨漏りしていて、畳はいたるところが腐っています。
十数年空き家だったこの家は、とても住める状態ではありません。
家の持ち主は、県立女子大学に通う、本田美咲さんです。
この春、家を丸ごと30万円で買い取りました。
ここを自分たちの居住スペースを兼ねた、町の人達が自由に集まれる拠点にしようと考えています。
本田さん
「みんながたむろできるようにと思って、“たむろ荘”って名前をつけて活動しています。秘密基地みたいにみんなが使えるフリースペースになればいいかなと思っています」
■面白い町に行くより、自分の町を面白くしたい
本田さんは、長野県出身。大学進学を機に玉村町にやってきました。
入学して感じたのは、地元の人達との交流が意外と少ないということでした。
転機になったのは、去年10月、授業の一環で行ったライブ演奏会。
別の空き家を利用して、地元の人たちを呼び込みました。
演奏会は大成功。
大学だけでなく、もっと町の人達と関わりたいと感じました。
本田さん
「玉村町のいろんな人が出入りできる場所になって、町の人も学生もお互いが刺激し合える場所があれば、もっとすてきなところになっていくんじゃないかと思います」
本田さんに理想の完成図を見せてもらいました。
1階には、演奏会、自主映画の上演会、交換図書館など、何をしてもOKなスペースを作り出します。
2階は、自分たちの生活部屋と、ゲストが泊まれるようにする計画です。
本田さん
「面白い町に行くより、自分の町を面白くしていくほうに魅力があるのかなって私は思ったので、そういう風に場所を作ろうと考えています」
■ネットで資金集め、不足分はアルバイト代を
本田さんたちがまず始めたのは、資金集めでした。
インターネットを通じて出資を募ったところ、68人が賛同して、合計48万円集まりました。
しかしそれだけでは足りず、アルバイト代を資金に充てました。巫女や飲食店など、3つ、掛け持ちしています。
本田さん
「いままで“たむろ荘”を始めるまでは、自分の好きなことに使ってしまっていたんですけど、目標ができてからは、貯めるのを頑張っています。でも大変です」
■町内を歩き回り、チラシを作って自ら物件探し
家探しも自ら行いました。
納得できる物件を探すため、自分の足で町内を歩き回ったり、チラシを作って近所のポストに投函したりして、空き家の情報を集めました。
本田さん
「空き家自体はたくさんこの辺りにあるんですけど、持ち主を探して連絡をして、貸してください、売ってくださいの交渉に始まり、下見をして。そこがすごく大変で苦労しました」
こうして手に入れたのが、この家です。
■周りの人たちに支えられながら進む拠点作り
5月、いよいよ改修作業が始まりました。
本田さん
「ここの壁もだめになっているので、はがしてこういうのが全部無い状態にします。
2階の壁とか床を重点的にやって終了となりますので、暑いですがよろしくお願いします」
この日集まったのは、4人。
中には本田さんのSNSの呼びかけに応じて手伝いに来てくれた人もいました。
本田さんの思いに共感してかけつけてくれた、大学の先輩もいます。
大学の先輩・足達さん
「自分も大学に通ってこの町に住んでいるので、住んでいる町を面白くしようっていうのはすごく共感できて、だから手伝おうと思いました」
近所の人
「差し入れ持ってきたから」
本田さんたちの姿を見て、近所の人たちも応援してくれるようになりました。
本田さん
「うれしいです。こういうのがあると頑張ろうって思います」
自分たちの活動をきっかけに、どんどん活気が生まれる町になってほしいと考えている本田さん。
周りの力を借りながら、目指す拠点作りが少しずつ進み始めています。
本田さん
「いろんな考えを持つ人が玉村町に集結するようになって、どんどん“たむろ荘”とかいろんな場所で交流していって、歩いたら、あの人も知り合い、この人も知っているっていう風になってもいいなって思います。結構それは壮大な理想です」
■地場のものを使った料理を出す食堂の構想も
(島津有理子アナウンサー)
家を買い取るという発想がすごいですよね。
なんでも自分たちでやろうという行動力が本当に素晴らしいと思うんですけれども、くれぐれもケガなどはしないように、安全には気を付けていただきたいですよね。
(安川侑希キャスター)
面白い町を作るために、できるところは自分たちで改修を行っているんですが、専門的な修理が必要なところは、ボランティアに参加している工務店の方から指導してもらっているんです。
また本田さんには、大学卒業後も玉村町に残りたい思いがありまして、ゆくゆくは地場のものを使った料理を出す食堂などを開いて交流の場を守っていきたいと考えています。
完成は、今年の秋を予定しています。