6年ぶりに最高益更新、商社5社決算-純利益の合計1兆9000億円

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  • 三菱商は初の5000億円超え-伊藤忠や住友商、丸紅も最高益に
  • 資源価格の上昇に加え、重点投資してきた非資源分野の利益伸ばす

総合商社5社の2018年3月期連結決算が8日、出そろった。5社を合計した純利益は前の期と比べて33%増の1兆8988億円となり、6年ぶりに最高益を更新した。石炭や鉄鉱石、銅などの資源価格が上昇したことに加え、各社が重点的に投資してきた非資源分野での増益が寄与した。

  三菱商事の純利益は前期比27%増の5602億円と10期ぶりに最高益を更新。総合商社では初めて5000億円の大台を突破した。伊藤忠商事が2期連続で最高益を更新したほか、住友商事は6期ぶり、丸紅は4期ぶりの最高益となった。三井物産も過去2番目に高い利益水準だった。

  原油や銅などの価格下落により、資源エネルギー分野を中心に多額の減損損失を計上した16年3月期から、わずか2年での急回復となった。三菱商はノルウェーのサケ養殖会社セルマック、伊藤忠は中国政府系企業の中国中信集団(CITIC)グループからの利益がそれぞれ寄与するなど、ここ数年の新規投資先からの利益が貢献。各社とも資産入れ替えを進めるなどして、既存事業の収益性も高めた。

  同日会見した三菱商の垣内威彦社長は、損失懸念のある案件については徹底的に処理を進めてきたとして「下振れする要素がなくなってきた」と収益力に自信を示した。経営を担う立場に人材を派遣している投資先企業からの利益拡大も寄与したと指摘した。

  前回、5社合計の純利益が最高だった12年3月期は原油価格が1バレル当たり100ドルを超え、銅価格も1トン当たり8800ドル超と資源価格が高騰していた時期。住友商を除く4社で利益の半分以上を資源エネルギー分野が占めていた。一方、今回の決算では三井物を除く4社で、非資源分野と位置付ける利益が過半を占める結果になった。

純利益合計は2兆円に迫る規模に

6年ぶりに最高益を更新

出所:各社資料よりブルームバーグ作成

注:単位は億円 

  過去最高益が相次いだが、伊藤忠を除いた4社の株価は理論上の解散価値である株価純資産倍率(PBR)1倍を割り込んだ水準で推移している。

  大和投資信託の石曽根毅チーフ・アナリストは、これまで総合商社の利益は資源価格の動向によって大きく左右されてきたとして、2桁の株主資本利益率(ROE)を持続的に維持できた例は少ないと指摘。「安定的に2桁のROEを出す力があるとマーケットが認識してくれば、PBRも1倍に向かう形で評価されてくる可能性はある」との見方を示す。今期以降、資源価格が低迷したとしても、非資源を中心に高い利益水準を稼ぎ出す収益体質を構築できるかに注目している。

  今期(19年3月期)は全社が増益を見込む。三井物を除く4社が最高益を引き続き更新する見通し。
 
【総合商社5社の業績一覧】

会社名18年3月期実績19年3月期計画 ROE
三菱商  5,602(27)   6,000(7.1)   10.9%
三井物  4,185(37)   4,200(0.4)   10.9%
伊藤忠  4,003(14)   4,500( 12) 15.8%
住友商  3,085(81)   3,200(3.7)   12.5%
丸紅  2,113(36)   2,300(8.9)   14.0%

(注:単位は億円、カッコ内は前期比%、ROEは18年3月期実績、全社国際会計基準)

  

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