初の個展、そして初のアルバムリリースーー「創作あーちすと」として多方面の活躍を本格化させている、のん(24)。自ら作詞作曲を手がけた5曲も収録される、1stアルバム『スーパーヒーローズ』が5月9日に待望のリリースとなる。
製作陣には、真島昌利、尾崎亜美、矢野顕子、高橋幸宏、鈴木慶一ら音楽界を代表する大物ミュージシャンが名を連ね、そのサウンドは初々しくも骨太なロックに仕上がった。
今回、のんとかねて親交があり、同作にも参加した音楽家・ギタリストの大友良英氏と彼女の対談が実現。2人の出会い、のんの音楽世界の源流と現在地、そして本作の制作裏話を語り尽くした。
大友:僕らの出会いは朝ドラの録音の時だから、2012年だよね。
のん:そうですね!
大友:最初の印象は、すごい猫背でひょこひょこ来る子だなって(笑)。僕も猫背だから人のことは言えないけど、これからドラマ始まるのに、大丈夫かなって心配になった。
でも、はじまって見たらその猫背が役ともハマって、「猫背以外考えられない」ってくらいで、素晴らしかった。
のん:(笑)。結果的に良かったです。
大友:あの頃は未成年だもんね。
のん:19歳でした!
大友:そうそう、20歳の誕生日の時にスタジオでギターをあげたの、覚えていますか?
のん:もちろん。ありがとうございました。でも、あの頃はあまり大友さんとお会いする機会がなくて。お会いしても緊張して、口数も少なく……。
大友:そうですよね。僕は音楽チームで、撮影チームとは離れたところにいましたから。でも、映像を見ながら劇伴(ドラマで流れる音楽)を作っていたから、ずっとのんちゃんのことは見てました。……なんか、ストーカーみたいですね(笑)。
年がら年中、何十時間も映像を見て「この子にどう音楽を付けたらいいか」ばかりを考えていた数ヵ月でしたから、一方的に、近いところにいる気持ちを抱いていました。ドラマの役自体もそうだったけど、のんちゃんって応援したくなる人なんですよ。だからあの後も、勝手に応援していました。
のん:私も、お話はあんまりできなかったんですけど、本当に大友さんの作ってくださる音楽が本当に好きで、親しい気持ちだったんです。ずーっと、また一緒に仕事をしたいと思っていたので、今回ファースト・アルバムでご一緒できて嬉しいです!
大友:こちらこそ参加できて光栄です。
この『スーパーヒーローズ』に参加しているミュージシャンには、大ベテランの方たちがいっぱいいて、こんなこと言うと怒られそうだけど、なんだか孫を可愛がるみたい(笑)。音楽畑の人がのんちゃんを応援したい気持ちがよく分かります。
みんな2013年のあの朝ドラに感謝してるんですよ。それに高橋幸宏さんや鈴木慶一さん(ムーンライダーズ、『My Day』にギターで参加)と一緒にやるなんて、もうそれだけでジェラシーを感じます。僕は握手したこともないですから!
のん:本当に恐れ多いです。2016年の夏に「のん」になって、音楽をやりたいなとずっと思っていました。それで、はじめて人前で演奏したのが、幸宏さんがキュレーターをしているフェス「ワールドハピネス」(2017年8月)だったんです。
本格的に音源を出したいと思った時に、最初に幸宏さんの事務所の方に相談に行って、「こんな音楽をやりたいんです」って、私が作った曲を聞いてもらったんです。
大友:そのあたりの、アルバムを出すまでの道のりの話を聞いてもいいですか。ワーハピでは「お披露目パック」を売ったんですよね。
のん:はい、カセットです。
大友:カセット、いいですよね。しかも収録されているのがサディスティック・ミカ・バンドの『タイムマシンにおねがい』と、(忌野)清志郎さんの『アイライクユー』のカバー。デビューシングルにも収録されているけど、選曲がたまらないよね。
のん:ありがとうございます!
大友:もともとミカバンドや清志郎さんが好きだったんですか?
のん:清志郎さんのファンでした。モノマネしたり。
大友:(笑)モノマネ、上手いですよね。
のん:憧れの人です。本格的に音楽をやろうと思った時に、ボイストレーニングを始めて、その時の最初の練習曲が『タイムマシン』で。ミカバンドを研究しているうちに好きになりました。
大友:いろいろ研究したんですね。
のん:はい。清志郎さんに関しては、私が以前から矢野顕子さんのファンで矢野さんを研究していて、それで矢野さんと清志郎さんが一緒に歌う『ひとつだけ』を聞いていたら、だんだん清志郎さんにひっぱられていって。
最初に何を歌うか、スタッフさんたちと相談したときに、「ミカバンドと清志郎さんを歌いたいです」って候補の曲をいくつか挙げて、最後は私が決めました。
大友:今回のアルバムには矢野さんが作詞作曲した『わたしはベイベー』が入っているけど、清志郎さんへのリスペクト曲でもありますね。
のん:はい。『わたしはベイベー』はレコードも発売されたんです。