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いま、中国と米国は「朝鮮半島の未来」についてこんな風に考えている

すべては両大国の「差配」次第か…

朝鮮戦争は終結するか

北朝鮮の「平和攻勢」が顕著になってきた。それに伴って、「朝鮮戦争が休戦から終戦に向かう」との楽観論も飛び交うようになった。

周知のように、朝鮮戦争は1953年7月27日に休戦協定が結ばれただけで、いまだ終戦に至っていない。ヨーロッパは20世紀の終わりにとっくに冷戦を終結させて、21世紀を迎えたというのに、朝鮮半島だけは世界で唯一、2018年の現在も、冷戦が残存したままだ。

それがいよいよ、冷戦の「最後の残滓」が取り除かれるのではという期待感が、アジアで湧き起こっているのだ。トランプ大統領と金正恩委員長、そして仲介役の文在寅大統領は、早くもイギリスのブックメーカーの間で、今年のノーベル平和賞候補のトップ3に上がっているほどだ。

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だが、事態をそれほど楽観視してよいのだろうか?

そもそも朝鮮戦争とは、米中両大国が初めて直接激突した戦争である。アメリカにとってみれば、1945年に日本帝国を倒し、東アジアを制圧したと思いきや、ソ連と中国という社会主義陣営の新たな強敵が出現した。

そのため、アメリカが朝鮮戦争の勃発から3ヵ月を経た1950年9月に参戦したのは、朝鮮人民軍を叩くというよりは、むしろ、そのバックに控えるソ連と中国を叩くという意味合いが大きかった。

 

一方の中国にとってみても、膨大な犠牲を伴った国民党軍との消耗戦を経て、ようやく1949年10月に新中国を建国したというのに、それからたった1年しか経ていない困難な時期に、「抗美援朝」(アメリカに対抗して北朝鮮を援助する)をスローガンに参戦した。

こちらも、25万の中国人民義勇軍が鴨緑江を渡ったのは、韓国軍を叩くというよりは、東アジアがこのままアメリカに制圧されてしまったら、「台湾統一」という悲願が永遠に実現しなくなると危惧した面が大きかった。

私は、1950年10月に中国が参戦した直後に、人民義勇軍を迎え入れた北朝鮮人(その後亡命)から話を聞いたことがあるが、中国の軍人たちは「我们一定要統一台湾」(われわれは必ず台湾を統一する)と書かれた旗を持っていたそうである。つまり中国もまた、朝鮮戦争を半島の中だけの狭い戦いとは考えていなかったのである。

実際、朝鮮戦争において、丸2年にわたる休戦交渉を主導したのは、米中両大国であって、南北朝鮮ではなかった。かつ1953年7月に板門店で休戦協定を結んだのは、国連軍、朝鮮人民軍、中国人民義勇軍の3者であり、国連軍に組み込まれていた韓国軍は、サインをしていない。

そこから現在に至る65年間、休戦協定を平和協定に変えようという動きは、断続的に起こったが、いずれも実現しなかった。それをいまこそ実現させようというのが、先月27日に文在寅大統領と金正恩委員長の南北首脳会談で締結された「板門店宣言」の主旨に他ならない。