2015.01.24 12:15
テクノロジーエンターテイメントの中で生きるプロフェッショナルが、未来のテクノロジーを担う若者達に向け、 自らの価値観や思想を論じるSENSORSの新コーナー「論」。
今回は、月間38億PVを誇るイラストコミュニケーションサービス「pixiv」の副社長 永田寛哲(ながたひろあき)氏が、インターネットの登場による変化を当事者の目線から論ずる。そこには、永田氏が考えるインターネットと現実の居場所に必要なこと、そして、若者へのメッセージが込められていた。
永田寛哲氏
pixiv副社長の永田寛哲です。
pixivという会社は、イラストを共有する「pixiv」というSNSの運営や、「虹のコンキスタドール」というアイドルグループをプロデュースしていますが、共通する考え方として「インターネット上の居場所をつくる」ということを目標として事業をやっています。
僕はイラストや漫画が昔から好きだったけど、書く才能が無かったので、せめて、書くことが好きな人達や、その世界を目指している人達の文化に貢献や恩返しができればいいなと思っています。
永田氏の論を聞く若者たち
僕はマンガとかイラスト、あるいはゲームとかアニメ、アイドルだったりとかいわゆるオタク的な文化が昔から好きだったけど、生まれ育ったのは四国の田舎だった。
そのため、ゲームもVHSも売っている場所もなかったので、当時は自分が見たいものや、欲しいものを買うことすら大変だった。ましてや、好きなことを共有できる友達がいない環境下だったから、ずっと東京に行きたいと思っていて、実際に東京に来てからは好きなことが共有できる友達は多少増えた。でも東京に来たことなんかより、インターネットが登場して、格段に爆発的にそういった友達や好きな人との交流ができるようになって、それを体感した時にインターネットのすごさを実感した。
実際に僕も、インターネットでの出会いをきっかけに自分としても仕事を始めたりとか、そこでの人間関係から徐々に広がって来て、いま僕はここにいるっていう、インターネットが無かったらまったく違う人生を歩んでいただろうなと確信をもって言えます。だからインターネットに対して感謝しているし、可能性も感じています。
スマートフォンで永田氏を撮影する若者
インターネット上に居場所をつくるためには2つのことが必要だと思っています。
それは「中立」であること、「寛容」であること。
この2つが居場所をつくるにしても重要だし、文化を育むにしても絶対に必要。インターネットの登場以前に「中立」と「寛容」を実現していたのは、コミックマーケットです。コミックマーケットとは年2回の同人誌のイベント。コミケのすごいところは、企業が運営しているわけでなく、好きな人たちが立ち上げて、好きな人たちがスタッフをやって、全員が同等の立場として運営がされている。それが何十万人も参加する規模の大きいイベントに成長している。お金がなくとも、秩序だって運営されているある種の理想形。このようなイベントをpixivもリスペクトしています。
コミケについて語る永田氏
「インターネットの居場所」の対立となるは、現実の居場所なのか?
僕は、インターネット上の人格と、現実の人格を分けるべきでないと思います。自分というものは1つで、それをどう表現していくか。
これはネットのこと、これは現実のことと分けたほうがいいという考え方もあるが、いわゆる道具の使い方のような問題であって、インターネットという場を上手く使い現実の豊かさや個人の成長などにつなげていくのが良いと思います。
ぜひみんなにもそのようにインターネットを活用してほしいです。
若者が撮影した永田氏
pixivでもそれは理想です。ピクシブ上で頑張って書いて、ファンがすごく増えたことを是非その人に夢につなげていってほしいなと思っています。
高い技能や志を持った人達がそこで終わってしまうのは寂しい。やっぱりそれだけ頑張って絵を描いている人は趣味だけではなくて、いつかプロになりたいと考えていたりとか、仕事にしたいと思っている人も少なからずいるので、そういった人たちが活発に交流出来るための設計を心がけています。
僕にとってインターネットやSNSは、親であり、教師でもあり、すごく身近で、学びや気付きを与えてくれるもの。
みんなの世代だとインターネットを使うことは普通だとは思うが、僕らの世代は、インターネットを通じて自分が変わることができたという強烈な体験をした世代。
だからこそ、今はあたり前の様になっているみんなの世代に、それをぜひ伝えたいと思って、今日はここに来ました。
ありがとうございました。
(SENSORS編集部 石塚たけろう)