環境・エネルギー

衝撃!経産省が、環境省の「温室効果ガス削減案」を握りつぶしていた

第5次エネルギー基本計画骨子案を読む

取り返しがつかないかも

経済産業省の頑なな原子力発電の存続策は、日本を地球温暖化対策で世界の異端児にしてしまうのだろうか。

2年半前のCOP21で採択された「パリ協定」を無視するかのように、4月27日、経済産業省は総合資源エネルギー調査会の分科会に対し、2030年の電源構成目標を見直さない「第5次エネルギー基本計画」の骨子案を提示した。それどころか、10年越しの懸案である2050年までのCO2排出削減計画の具体化策を盛り込まない判断も下したのである。

筆者の取材で、経済産業省はこの方針を押し通すため、2050年の原発依存度が「9~7%」と2030年目標値(22~20%)の半分以下になる、と指摘する環境省の環境基本計画案を潰した事実も浮かび上がってきた。

 

経済産業省の方針は、骨子提示の8日前に、外務省の有識者懇談会が河野外務大臣への提言で「日本の2030年の(CO2排出)削減目標は“Highly Insufficient”(まったく不十分である)との評価を国際的に受けて」いると警鐘を鳴らしたことも黙殺した。

経済産業省は、今夏にも、この第5次エネルギー基本計画の閣議決定を強行したい考えという。地球温暖化対策を巡って失われつつある日本の国際的信用が、取り返しのつかないほど傷付く恐れが高まっている。

一切変更なしって…

「第5次エネルギー基本計画」は、昨年から見直し作業が始まっていた。2014年以来、4年ぶりに改定される予定になっている。

経済産業省が、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会に提示した骨子案によると、冒頭では、見直しのきっかけが「前回の計画を策定してから3 年が経過するとともに、パリ協定の締結により、2050 年に向けた長期のエネルギー戦略を策定する必要性が生じた」ことにあるとし、「最近の情勢変化を踏まえ、2030 年に向けた施策を深掘りするとともに、2050 年に向けてエネルギー転換・脱炭素化への挑戦に取り組む」との見直し方針を掲げている。

ところが、立派なのは見直し方針だけで、まったく中身が伴わない「羊頭狗肉の審議会答申」になっている。多くの専門家の意見を無視して、肝心の2030年の電源構成案を、一切変更しないというのだ。

この結果、2030年に向けて、太陽光や風力など再生可能エネルギーを「主力電源化」するという方針を打ち出したにもかかわらず、その比率は拡大せず従来と同じ「22~24%」に据え置かれた。

一方、原子力については、前回のエネルギー基本計画と同様、「重要なベースロード電源」と持ち上げながら、原発依存度については「可能な限り低減させる」と、相矛盾する二兎を追う方針を堅持。電源構成でも「22~20%」と、実現性に疑問符が付いている目標をそのまま掲げた。