日頃,調べものをするときに真っ先に利用するのはインターネット.
このエントリーはサイエンス系で役立つ(かもしれない)サイトと,役立つと思って紹介しようと思ったらちょっと残念だったサイト計10選を紹介します.
お役立ちサイト
高精度計算サイト
生活に役立つものから一体全体誰がそんなのを必要とするのかさっぱりわからないことまで手軽に計算できるサイトです.
◆例:学校卒業年(高専や6年生大学には未対応)
履歴書を書くときに利用するといいかもしれません.
◆例:西暦(1989年1月7日)を和暦にすると
まだ昭和64年です.
でも1日たつと・・・
平成元年になりました.
こういった計算はもとより,地震エネルギーをTNT爆薬に換算したり,数学や物理の公式集や統計関数,関数の描画,モンスターハンターワールド(MHW)の会心期待値計算機,艦隊これくしょん遠征収入計算機など,障害使うことが決して無い計算が目白押しです.
ぜひ自分に役に立つ計算を見つけてください.
【閲覧要注意!】害虫分布情報
そのままだとちょっとアレなのでGにモザイクをほどこしました.
(http://www.pestology.jp/pdf/distribution.pdf)
日本ペストロジー学会という学会があります.
ペストはいわゆる"ペスト菌"のペストのほか,有害生物全般も意味します.
そして,ペストロジー(pestology)とは,不快害虫獣を研究対象とし,その防除を目的とする学問分野のこと.
その日本ペストロジー協会のHPに害虫分布情報が記載されています.
ここにはゴキブリの仲間のほか,アルゼンチンアリやセアカゴケグモといった特定外来生物の分布情報が集められています.情報対象となっているのはゴキブリ7種,アリ3種,ガ1種,ゴケグモ4種,ダニ1種,ヤスデ1種です.
これらは「人為的な要因で分布が変化しやすい害虫や,今後,分布が拡大する恐れがある害虫」の中から日本ペストロジー学会と特に関連があるものとのことです.あまり報道されないものが含まれていますが,防除の観点から注視すべき害虫と見なされているのでしょう.
家に出現するゴキブリがどの種なのかを知りたいときはここでだいたいの判別ができると思います.
特定外来生物のデータベースとしては環境省HP(特定外来生物等一覧 | 日本の外来種対策 | 外来生物法)も有用です.
ボクたちの"足もと"から地球のことを知ろう
日本地質学会が平成29年度子どもゆめ基金の助成金公費を受けて作成したサイト.
サイト構成は小学生低学年でも読めるように,とても平易に作られています.
でも中身は「へ〜」の連続.山手線の高低差も,鳥取砂丘の砂がどこからきたのかも知りませんでした.
子どもが基礎から学ぶのにうってつけ,そして大人の知的好奇心をそそるコンテンツがあちこちに散りばめられてます.地質にまつわることを知りたくなったら,まずこのサイトを開くことをオススメします.
物理学70の不思議
http://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/70wonders.php
日本物理学会設立70周年を記念して,物理学にまつわる70の小話が日本物理学会誌に掲載されました.
第1話「宇宙はどのように始まったのか?宇宙の未来は?」から第70話「物理学はどこへ行くのか?」まで,ニュートリノ,クォーク,ヒッグス粒子,原子核の形,ブラックホール,太陽コロナ,シマウマの縞模様といったトピックについて1040字以内でさくっと読めます.
各話へのリンクはこちらから.
70話まとめて読みたいときはこちらから.
小冊子(日本物理学会誌第72巻9号付録,平成29年9月5日発行)頒布の希望はこちらです.
ちょっと残念なサイト
失敗知識データベース
特定非営利活動法人「失敗学会」は「広く社会一般に対して失敗原因の解明および防止に関する事業を行い、社会一般に寄与することを目的」とする学会.
社会一般に寄与しているかどうかはわからないし,そもそもそんな学会があることさえ知らなかったけれど,失敗から学ぶことなしに物事は先に進みません.ならば「失敗知識データベース」にはむしろ学ぶべき知がぎっしり詰まっている,はず.
失敗事例には,若者アニオタたちがアニメフィギュア販売会場へと先を争ってエスカレータに殺到,1段当たり3〜4人(人口密度8.6人/平方メートル)という過積載状態を呈してエスカレーターが停止・逆走の結果10人がケガを負った「東京ビッグサイトエスカレータ逆走(2008)」から,これまでノーマークだった活断層の運動による地震なのでこれを失敗事例にしていいものかちょっと首をひねるけれど失敗事例に数えられている「岩手宮城内陸地震」などが挙げられています.数えるのがめんどくさい(ので数えなかった)ほど多彩な事例が集積されています.
ただし,このデータベースは最新事例が2008年なのでどうみても失敗知識データベース継続に失敗したとしか思えません.
その原因と対策の分析をぜひデータベースに付け加えてほしいものです.
サイエンスミュージアムネット
たとえばフタバスズキリュウ(『ドラえもん のび太の恐竜』のピー助)の標本を見たくなったので博物館に行ったとします.
でも博物館によって収蔵している標本はそれぞれ.せっかく博物館に行くなら,あらかじめ調べておくにこしたことはありません.
そんなときに役立つのがサイエンスミュージアムネット.
ここまで書いてから「フタバスズキリュウ」で検索したところ,該当無しというとても残念な結果になりました.
ほかの恐竜はどうなんだろうと思って検索したところ,恐竜は全滅でした.
ちなみに国立科学博物館常設展示データベースでフタバスズキリュウを検索したら標本が日本館3階に展示されていることが判明.
サイエンスミュージアムネットにはもうちょっとなんとかして欲しいものです.
動物関連サイト
動物行動の映像データベース(お役立ち)
movie archives of animal behavior
動物の本を読んでいると,書いてある説明をまったくイメージできない事態にたびたび出くわします.
例えばサルの中にはブリッジングと呼ばれる行動をする種がいます.でもブリッジングと聞いても何のことだかちょっとよくわかりません.
ブリッジングは「2頭のオトナオスが一緒に1頭の子どものオスを持ち上げ,一方のオスが子どものペニスを舐める行動」のこと.
そう説明されたらなおさら何のことだか理解に苦しむかもしれません.
そんなときは動画を見れば一目瞭然,『動物行動の映像データベース』で探しましょう.
『動物行動の映像データベース』は動物たちが見せる摩訶不思議なあんな行動やこんな行動の宝庫なのですから.
動画は検索ボックス,「行動の種類」,「階層分類_(サルなら「脊索動物門>哺乳綱>霊長目」),そして「やさしい分類」(サルなら「せきつい動物>サルの仲間」)から探せます.ぜひブリッジングも一度見てください.
Webサル図鑑(お役立ち)
愛知県には日本モンキーセンター(JMC)というサルの動物園があります。JMCで飼育・展示している/していたサル(ヒトは除く)について、画像・英名・学名・分布・CITES附属書区分・IUCNレッドリストカテゴリーや諸特徴が簡潔に示されています。
日本語のWebサイトでは今のところ最大。でもサルの種数は400以上.さらなる充実を希望します。
霊長類和名リスト(個人的興味からよく使うけど不十分)
1990年代のサルの種数は200程度だったけど,2010年代の今は400種を超えるようになりました.
学名には決まったルールがありますが,和名はそうじゃありませんでした.だから学名Gorilla gorilla gorillaの和名がニシローランドゴリラだったりウェスタンローランドゴリラだったりします.
知りたいのはただひとつ,「このサルはなんと呼ぶのか?」,それだけです.
なのに,屋久島にいるニホンザルをあっちの本では「ヤクシマザル」,こっちの本では「屋久島のニホンザル」,などというのは勘弁してもらいたいもの.
そういうときはこの霊長類和名リストを参照します.
ただ,このリストにはまだまだ不満があります.
それは,リストが三名法に対応していないこと.
リストに記載されているのは属名+種小名の二名法に対応する和名(と英名)だけ(Gorilla gorillaは属名+種小名の二名法).三名法(亜種小名も用いた学名)のGorilla gorilla gorillaやMacaca fuscata yakuiは載ってません.
ちなみにサイエンスミュージアムネットでフサオマキザルを検索するといくつかの博物館での所蔵がヒットしましたが,どれもこれも学名が古いままでした.
動物園を楽しむ 日本と世界の動物園水族館(国内はお役立ち)
(http://www.zoo-net.org/joy/map/index.html)
市民ZOOネットワークによる「国内外の動物園水族館を地図から検索する」ページです.
諸外国とくらべ,日本は動物園・水族館がとても充実しています.というよりこんなに必要あるのかなと思うほどこれでもかと言わんばかりの数があることがこれを見るとよくわかります.
例えばヨーロッパを見てみましょう.
23の動物園と水族館が載っています(エイに触れて楽しかったロンドン水族館がないけれど・・・).
それに対し,日本だと・・・
色分けされた各地方をクリックすると,URL付きのリストが表示されて関東だけでもヨーロッパを上回る25の動物園と13の水族館,計38施設もあることがすぐわかります.
とはいえ,どの辺りにどの動物園/水族館があるのかを見たかったのでちょっとがっかり.
それと,ロンドン水族館が載っていなかったように,アメリカなんかではまだ記載数が少ないです.ここは早急に改めてほしいところです.
まとめ
以上,10サイトを紹介しました.
- 高精度計算サイト
- 害虫分布情報
- ボクたちの"足もと"から地球のことを知ろう
- 物理学70の不思議
- 失敗知識データベース
- サイエンスミュージアムネット
- movie archives of animal behavior
- (公財)日本モンキーセンター Webサル図鑑
- 日本モンキーセンター 霊長類和名リスト
- 動物園を楽しむ 日本と世界の動物園水族館
さらにマニアックなものとしては日本蜘蛛学会のクモ類生息地点情報データベース:日本蜘蛛学会や霊長類の文献データベースPrimateLit Databaseなどもあります.
このエントリーで紹介したもの以外にも,お役立ちサイトはたくさんあると思います.ここが役立つ!というのがあれば,ぜひはてなブックマークでお知らせください.
ではまた!