崩れ落ちる氷河で知られる南米アルゼンチンの世界遺産ロス・グラシアレス国立公園。なかでも、巨大な氷河アーチの崩壊は、一大スペクタクルとして注目を集めている。
アイスブルーに輝く氷河アーチは、2年から4年の周期で、轟音を立てながらアルヘンティーノ湖に崩れ落ちている。この3月の中旬にも崩れ落ちそうになり、壮大な氷のショーを見ようと多くの人が集まった。(参考記事:「氷河の絶景 パタゴニア」)
しかし、2018年に氷河アーチが崩壊したのは日曜日の夜中だった。悪天候により公園が閉鎖されていたため、残念ながら誰一人その瞬間を見ることは叶わなかった。
2016年、ペリト・モレノ氷河はドラマティックなショーを見せてくれた。数千人の観光客の目の前で氷河アーチが崩れ落ちたのだ。その光景は映像に記録されている。このアーチは2015年に人工衛星からも撮影されていた。(参考記事:「絶景、氷の世界のアドベンチャー写真21選」)
アーチはなぜ繰り返しできては壊れるのか
ペリト・モレノ氷河のアーチが周期的に崩壊する理由はこうだ。山の斜面にある氷河は、常に湖に向かってゆっくりと移動している。その先の対岸は岬のように突き出ており、氷河が到達すると、浅い湖の流れをせきとめる氷の壁となる。その後、解けた氷河の水が湖に流れ込んで水位が上昇するとともに、湖の流れが壁に穴を開け、やがて一気に崩壊する。
今年は氷河の崩壊を見逃した人も、2~4年後にはまたチャンスが巡ってくるはずだ。ペリト・モレノ氷河は、世界でも数少ない成長する氷河だ。世界中で氷河が縮小するなかで、なぜペリト・モレノ氷河が成長しているのはわからない。研究者たちは、氷河がある場所の急な勾配が関係しているのではないかとみている。(参考記事:「パタゴニアの氷河、温暖化でも謎の成長」)
自然の驚異
ロス・グラシアレス国立公園には、末端が高さ60メートルに達するこの氷河のほかにも、大きな氷河がふたつある。アルヘンティーノ湖の近くにはやはり氷河湖のビエドマ湖もある。面積は6000平方キロメートルに及び、膨大な量の淡水を含んでいる。(参考記事:「世界各地の氷河が驚くほどの速さで解けている」)
周囲はアンデス山脈に囲まれ、氷河は広大な南パタゴニア氷原から移動してくる。人里離れた場所にあるほぼ原初の大自然は、観光客に手つかずの生態系を垣間見せてくれるだろう。
ロス・グラシアレスへ行くには、アルヘンティーノ湖畔の南端にあるエル・カラファテという町から向かうのがお勧めだ。ペリト・モレノ氷河を見学する日帰り旅行も用意されている。