我が国の就学前の子どもに対する教育及び保育については,満3歳からの子どもを対象に1日4時間を標準とした教育を行う学校である幼稚園と,保護者の就労等の事情により保育に欠ける0歳からの子どもを対象に1日原則8時間の保育を行う児童福祉施設である保育所により担われてきているところである。
表1−1 幼稚園と保育所の比較
幼稚園 | 保育所 | |||||||||
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【根拠】 | 施設の性格 | 学校 | 児童福祉施設 | |||||||
根拠法令 | 学校教育法 | 児童福祉法 | ||||||||
目的 | 「義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして,幼児を保育し,幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて,その心身の発達を助長すること」(学校教育法第22条) | 「日々保護者の委託を受けて,保育に欠ける乳児又は幼児を保育すること」(児童福祉法第39条) | ||||||||
【サービス内容】 | 対象児 | 満3歳〜就学前の幼児 | 0歳〜就学前の保育に欠ける児童 | |||||||
開設日数 | 39週以上(春夏冬休みあり) | 約300日 | ||||||||
保育時間 | 4時間を標準
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8時間を原則
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保育内容・教育内容 | 幼稚園教育要領(平成10年12月文部省告示) | 保育所保育指針(平成11年10月児童家庭局長通知) | ||||||||
【その他】 | 入所 | 保護者と幼稚園設置者との契約 | 市町村と保護者の契約(保護者の希望に基づく) | |||||||
施設数 | 1万4千か所(平成19年5月現在)
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2万3千か所(平成19年4月現在)
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園児数 | 170万5千人
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201万5千人
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このように幼稚園と保育所は,その目的及び役割を異にしており,それぞれの社会的ニーズに応えてきたものであるが,近年の社会構造等の著しい変化を背景として,就学前の子どもに関する教育・保育のニーズは以下のように多様化している。
このように就学前の教育・保育に対するニーズが多様なものとなっていることにかんがみ,地域において子どもが健やかに育成される環境の整備に資するよう,幼稚園及び保育並びに保護者に対する子育て支援の総合的な提供を推進するため,平成18年6月に「就学前の子どもに関する教育・保育等の総合的な提供の推進に関する法律」(平成18年法律第77号)が成立し,同年10月から「認定こども園」制度が開始された。
図1−1 認定こども園の機能について
認定こども園制度は,幼稚園,保育所等のうち,就学前の子どもに教育・保育を一体的に提供し,地域における子育て支援を実施する施設を都道府県知事が「認定こども園」として認定する制度である。
認定こども園には,地域の実情に応じて選択が可能となるよう,以下の4つの類型が設けられている。
事業の概要で記載したとおり,少子化の進行や教育・保育のニーズ多様化に伴い,必ずしもこれまでの取組だけでは対応できない状況が顕在化してきており,事業の必要性は高い。
近年の社会構造就業構造の著しい変化等を踏まえ,地域において児童を総合的に育み,児童の視点に立って新しい児童育成のための体制を整備する観点から,地域のニーズに応じ,就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を可能とする(平成18年度までに検討)。
近年の社会構造就業構造の著しい変化等を踏まえ,地域において児童を総合的に育み,児童の視点に立って新しい児童育成のための体制を整備する観点から,地域のニーズに応じ,就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設を設置する。その実現に向けて,平成16年度中に基本的な考えをとりまとめた上で,平成17年度に施行事業を先行実施するなど,必要な法整備を行うことも含め様々な準備を行い,平成18年度から本格実施を行う。
認定こども園制度の創設にあたっては以下の効果が期待されていたが,それらの点については保護者や施設からも評価されており,有効性は高いと言える。
認定こども園制度の創設によって,就学前の子どもに対する教育・保育の一体的な提供が可能となった。幼稚園,保育所に加えて,認定こども園という利用者に新たな選択肢を提供することにより,保護者や地域社会の多様なニーズに柔軟に応えることができる。なお,今後,認定こども園制度の積極的な活用を促進するにあたって,効果的な推進方策を検討することが必要である。
平成18年の認定こども園制度創設後,文部科学省及び厚生労働省においては,両省に「幼保連携推進室」を設置し,
など,制度の普及啓発に努めてきた。
認定こども園の認定件数等の現状は,以下のとおりとなっている。
表1−2 認定こども園認定件数 | ||||||||||||||||||||||
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(幼保連携推進室調べ) |
表1−3 認定こども園申請見込件数〔平成19年4月1日現在〕 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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(幼保連携推進室調べ) |
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(幼保連携推進室調べ) |
(参考)平成20年4月1日現在の認定こども園への入園児数 | |||||||||
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(幼保連携推進室調べ) |
(1)に記述したとおり,認定こども園の認定件数は着実に増えつつあるものの,平成19年4月1日現在で調査した申請見込件数にはまだ遠く,また,制度創設から1年が経過し,現場における運用上の課題についての指摘の声も出てきている。
図1−2 認定こども園の認定を受けた理由
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−3 認定こども園の認定を受けた理由【類型別】
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−4 認定こども園の認定を受けた感想
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−5 認定こども園の認定を受けた感想【類型別】
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−6 認定こども園の認定を受けて良かったと考える点
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−7 認定こども園の認定を受けて良かったと考える点【類型別】
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
現場における運用の実態や課題を把握し,認定こども園制度を推進するため,平成20年3月に文部科学省及び厚生労働省において実態調査を行った。
図1−8 認定を受ける際の準備段階における問題
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−9 認定を受ける際の準備段階における問題【類型別】
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−10 問題があった場合の理由
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−11 問題があった場合の理由【類型別】
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−12 認定こども園の認定を受けた施設が行政が取り組むべきと考える課題
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−13 認定こども園の認定を受けた施設が行政として取り組むべきと考える課題【類型別】
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園の認定を受けた施設への悉皆調査〕)
図1−14 利用している施設が認定こども園の認定を受けたことに対する保護者の評価
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園を利用している保護者への抽出調査(回答数:1,170人)〕)
図1−15 認定こども園を利用している保護者が評価している点
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園を利用している保護者への抽出調査(回答数:1,170人)〕)
図1−16 認定こども園を利用している保護者による認定こども園制度の今後のあり方について
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園を利用している保護者への抽出調査(回答数:1,170人)〕)
施設において,現場における課題として挙げているのは3(1)に記載したとおりであるが,同じ調査において,地方公共団体に対しても「国が取り組むべき課題」について調査を行った。
図1−17 都道府県が考える国として取り組むべき課題
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔全都道府県への悉皆調査〕)
図1−18 市町村が考える国として取り組むべき課題
(平成20年3月幼保連携推進室調べ〔認定こども園がある市町村への悉皆調査〕)
認定こども園は,幼稚園と保育所の制度の枠組みを超えて,小学校就学前の子どもに対し,幼児教育・保育を一体的に提供するとともに,地域における子育て支援の取組を充実させる新たな選択肢として導入された制度である。
平成18年10月の制度創設から1年が過ぎたことから,制度が保護者や地域のニーズに応えているかどうかを検証するため,施設を利用している保護者や施設,地方公共団体に対し実態調査を行った。その結果,保護者の8割近く,施設の9割以上が認定こども園を評価するなど,制度への期待が大きい一方,施設や地方公共団体からは,省庁間や自治体間の連携充実,財政支援,会計処理・申請手続きの改善,制度の普及啓発などについて今後の改善課題として求める声が大きかった。
認定こども園の認定件数は,平成19年4月1日現在で94件,平成20年4月1日現在で229件と着実に増えつつあるが,制度が十分に活用されているとは言い難い。保護者や地域の多様なニーズに応えることが可能であり,また,国民からの期待も大きい認定こども園制度の一層の普及促進を図る必要がある。
(1)評価のまとめに記載したとおり,保護者や施設の評価も高い認定こども園制度を一層普及促進するため,認定こども園に関する課題の改善に取り組むことが必要と考える。
平成20年7月29日に取りまとめられた「社会保障の機能強化のための緊急対策−5つの安心プラン−」において,「こども交付金」の創設等,認定こども園の改革について記述された。
また,平成20年5月に,文部科学省及び厚生労働省において立ち上げた両省局長級の検討会「認定こども園制度の普及促進等に関する検討会」においても,具体的な運用改善策を取りまとめた。
厚生労働省と緊密な連携を図りつつ,今後,これらの改善方策を着実に推進するとともに,認定こども園の制度改革に向けた検討を行い,認定こども園制度が一層積極的に活用されるよう取り組む必要がある。
【21年度における当面の対応(概算要求予定)】 | |
〔「こども交付金」の創設等〕《厚生労働省,文部科学省》
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【制度的な見直しを検討】 | |
〔認定こども園の制度改革〕《内閣府,厚生労働省,文部科学省》
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【20年度における事業実施,運用改善等】 | |
〔二重行政の解消〕《厚生労働省,文部科学省》
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全員参加経済戦略 | |
新雇用戦略
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基本的方向2 | |
個性を尊重しつつ能力を伸ばし,個人として,社会の一員として生きる基盤を育てる |
幼児期における教育を推進する | |||||||||
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