著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは5日、定時株主総会を開いた。米中西部ネブラスカ州オマハには4万人を超える株主が世界各地から集まった。米国と中国の貿易摩擦について「自由貿易は米中、双方に恩恵がある」と指摘。問題は収束に向かうとの持論を展開し、改めて米国経済の先行きに強気の姿勢を投資家に示した。
オマハはバフェット氏が生活の拠点とする都市で、バークシャーも本社を構える。一貫した投資哲学と卓越した長年の運用実績、親しみやすいキャラクターから「オマハの賢人」と呼ばれ、世界の投資家から尊敬を集めている。5日の株主総会本番をはさみ全3日間で行われるイベントは、バフェットを信奉する投資家の巡礼とも言われる。
米国以外では中国や韓国、インドなどアジアからの株主が目立った。中国の広東省から初めて参加したジョン・ドンさんは「お金持ちではなく、普通の人を幸せにする商品・サービス関連の企業を中心に投資する方針に共感している」と話す。韓国の投資家向け広報(IR)支援会社に勤める男性は「株主との対話を大切にするバフェット流を韓国企業にも伝えたい」と参加を決めた。
バフェット氏といえば、米国経済や米国株に対する強気の姿勢で知られている。2018年の株主総会でも楽観的な見通しを随所で披露した。株式市場の重荷になっている米国と中国の貿易摩擦について株主から質問が出ると、すでに米中が貿易を通じて共に利益を得る関係にあると指摘。「(制裁の応酬などで)自国経済を苦しめるようなことはしないだろう」と述べた。米国株の年初来騰落率はほぼゼロ%だが、バフェット氏は強気の姿勢を強調した。
もっともバフェット氏の神通力は衰えてきたとの指摘も少なくない。同社の年次報告書によるとバークシャー株の17年末までの直近5年間の上昇率は2.21倍。主要企業で構成するS&P500種株価指数(同2.48倍、配当再投資ベース)を下回る。昨年までの上昇相場をけん引したハイテク株への投資に慎重な姿勢を続けていたことが一因だ。総会に出席した一般株主からハイテク株への投資姿勢を問いただす質問が出ていた。
バフェット氏は17年の株主総会に続き、アマゾン・ドット・コムに投資しなかったことについて反省の弁を述べた。アマゾン株は初期のころから調査をしていたと告白。「(創業者の)ジェフ・ベゾス氏のなし遂げたことは奇跡に近い。我々はそれに賭けられなかった」と悔やんだ。バフェット氏は米アップル株を18年1~3月期に買い増したことをすでに明らかにしているが、後手に回った感が否めない。
バークシャーは株主総会当日の5日、18年1~3月期決算を発表した。最終損益は11億ドルの赤字(前年同期は40億ドルの黒字)。会計ルールの変更で未実現の投資損益を反映しなければならなくなったためだ。総会会場で決算内容について説明したバフェット氏は「悪夢だ」と発言。バークシャーの真の実力を投資家に分かりやすく伝えられず、もどかしさを感じているようだった。
(オマハ〈ネブラスカ州〉=宮本岳則、伴百江)