朝鮮日報

【コラム】韓国人はまた信じたいことだけ信じている

 長い間虐げられてきた人ほど、相手の小さな好意にすぐ感動する。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が軍事境界線を越えて文在寅(ムン・ジェイン)大統領の手を握った時、手をつないで再び軍事境界線をまたいで北朝鮮側に立った時、「徒歩の橋」での歓談が鳥の声として伝わって来た時、一瞬にしてほぐれた私たち韓国人の感情も、実はそれと同じ感情だったかもしれない。この「感情の武装解除状態」で韓国人は板門店宣言の「平和共存」発言を聞いた。起承転結がきちんと組み立てられた12時間にわたる映画のようだった。金正恩委員長はこの1本の映画により、韓国で「礼儀正しい指導者」になった。いつでも紙くずになり得る文書上の「非核化の約束」ではなく、北朝鮮に対する韓国国民の認識変化の方が劇的だ。今回も信じる根拠があったからではなく、信じたくて信じているのだ。その背景には「民族同質性」と同時に「北朝鮮の核の恐怖」がある。いや、恐怖の方が大きく作用していると思う。

 「では、あなたは戦争と破壊を信じたいのか」と反論されることだろう。韓国で暮らしながら戦争を望む人はいない。しかし、「根拠のない信念や感情的武装解除こそ戦争と破滅を招く」という信念はある。北朝鮮の核廃棄が実現されるまで、金正恩委員長の「平和共存」という主張は、伊藤博文の「東洋平和」という主張と同じ妖説だという信念もある。華やかな政治ショーと美辞麗句のやり取りは「核廃棄」という本質を隠そうとする試みだとの主張も信じる。6・25南侵(朝鮮戦争)、大韓航空機爆破、黄海(西海)挑発、韓国海軍哨戒艦「天安」爆破・沈没、延坪島砲撃…。70年間にわたって積もり積もった北朝鮮に対する韓国人の緊張や感情は、北朝鮮の核の完全な廃棄を見届けてから解きほぐし始めても遅くはない。

社会部=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)部長
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