奨学金は低利で借りられるのが魅力
私たち普通の人がお金を借りるのはそんなに簡単なことではありません。今は銀行融資が不況時に比べると盛んではありますが、借りるためには相応の理由が必要です。相応の理由として大きなものは2つです。
- 住宅ローン
- 奨学金
この2つです。いずれも用途がはっきりしており、理由も固いので事業融資などに比べると借りやすくなっています。奨学金にしても、住宅ローンにしても1%を切るものが少なくありません。
下記資料、平成29年度の日本学生支援機構の奨学金の場合、利率固定の貸与型で0.14%~0.27%を推移しています。利率見直し方式、つまり変動金利に至っては0.01%に張り付いており、非常に魅力的な水準になっています。
これが事業に伴う銀行借り入れですと、よほど銀行からの信用が厚く、取引実績のある例でも0.5%がミニマムでしょう。平均すると1%前半から2%前半ぐらいの肌感覚になります。もちろん、銀行と条件によっては3%あるいは4%近くというところもあります。
恵まれた条件、非常に低利で借り入れできるのが奨学金ということになります。ちなみに海外でよく言われるscholarshipは給付型、本当の奨学金ですね。日本の場合は給付型のscholarshipは限られており、実質的には貸与型が殆どです。
この貸与型というのは、分かりやすく言うと「教育ローン」です。つまり借金です。奨学金を借りるならば自分のポテンシャルや将来性を考えて借金をしないと、たちまち延滞、返済不可能となりデフォルトします。
そういう意味では事業融資に似たところがあります。事業も立ち行かなくなればデフォルトします。将来への投資という意味においては共通するものですね。さて、こうしたことを踏まえて奨学金に関するご質問をご紹介します。
奨学金を限度額まで借りて運用をしたい
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はじめまして。いつもブログを拝見しております。
当方、この春に大学に入学したばかりの者です。資産運用に興味を持ち様々な情報があふれる中、理路整然とご意見を述べられているこのブログを、大変参考にさせて頂いております。
今回は、奨学金を限度額まで借りて運用することについて、ぜひご意見を伺いたくメールさせて頂きました。
具体的には
- 将来の資産を増やすために奨学金を投資にあてることの是非について
- どのようなポートフォリオを形成すべきか
- リスクを下げるために投資を行う時期は分散するが、どのように分散させるか
- さらに第二種奨学金(利息3%の奨学金)も借りて運用すべきか
について意見を伺いたいです。
私は現在、実家を離れ大学の寮で1人暮らしをしており、また奨学金を最大月51000円まで無利子で借りれることとなりました。しかし寮はほぼ家賃や食費がかからず親からの仕送りとアルバイト代のみで生活することができ、奨学金を借りる必要はない状況です。
また大学の制度も整っているため生活のみだけではなく海外留学なども生活費のみで可能となり、いわゆる自己への投資を行うために奨学金を借りる必要はありません。そのため奨学金を生活費などに回さずTやJNJなどの増配当が続いている大型高配当株に投資し、トータル・リターンを増やし、卒業後の奨学金の返済を配当金と給料とそれまでに借りた奨学金で行いたいと考えています。
また投資の時期ですが、バフェット太郎さんのように毎月1銘柄に行うことで、時期的なリスクを分散させたいと考えています。
奨学金の額についてですが、修士2年まで大学に在籍する予定ですので、卒業後の毎月の返済額は15,300円(貸与総額36,720,000円を240回払い)となります。
たぱ注※367万2千円ですかね。
第二種奨学金(貸与総額57,60,000を240回払い)も借りた場合はさらに月の返済は32,297円増えて、合計47,597円となります。
第二種は利息が3.00%ですので、利息分を配当金で賄うことができると考え第二種奨学金も借りて運用しようと考えております。
長々とこちらの状況を述べさせていただきましたが、奨学金の運用に関して、ご意見賜れれば幸いです。よろしくお願いいたします。
無利子の奨学金は非常に魅力的
まず、無利子の奨学金は非常に魅力的ですね。これに関しては私は繰り上げ返済をする必要は無く、直接投資のみならず、自分の価値を高めるための投資に活用すればよいと思います。
また、金額も367万円と限られます。返済額も無理がないですね。おそらく大学の様子から推察するに、普通にしていればすぐに取り戻せるご属性ではないでしょうか。ただし、自分の高属性に胡坐をかいてはいけませんよ、大変老婆心ですが。
また、配当金で奨学金を返すという発想も非常に面白いと思いました。普通の学生はこんなことを考えません。人が考えないことを考える。そのこと自体に価値がありますね。ただ、これからの相場はボラティリティが高いことが見込まれ、やや難易度は上がると思っていたほうが良さそうです。
第二種奨学金の金利3%をどう考えるか
次に、第二種奨学金の金利3%をどう考えるかというところですね。非常にアグレッシブで、リスクを取りに行く姿勢、とても良いですね。しかし、これはなかなか危険ですよ。覚悟が必要です。自分の息子ならば勧めません。
金利3%というのは、肌感覚としてかなり高いです。金利を得る側は税金がかかるので少なく感じますが、借りる側としては3%は重く感じます。しかも、運用で3%以上を出そうとすると、心理的に邪魔が入ります。
株式というのは変動が大きすぎて、実は銀行評価は出にくい資産です。せいぜい資産価値の半分程度とする銀行もあります。それほどにリスク資産と思われているのですね。実際やってみると分かるのですが、1日に1%以上動くこともザラです。
じゃあ、なぜ事業融資、あるいはハードアセット投資は3%の融資でも借りることがあるのかということです。これは、例えば太陽光や不動産などは比較的電卓をはじいて「パチッ」と利回りが計算できるからです。もちろん100%ではないですが、株式よりはよほど計算できます。
例えば、12%の実質利回りの不動産を買ったとして、銀行融資を3%とします。ここでは話を単純化させるために融資期間は省きます。すると、「パチッ」と利回りの差が9%と出ます。
これを金利差、イールドギャップと言いますが知識と経験が深いほど誤差は小さくなります。キャピタル部分はやはり変動があるのですが、インカムは地域を加味してかなり計算できます。
これに対して株式はこのような電卓弾きが極めて難しいのです。配当は確かに計算しやすいですが、逆に税金を引くとイールドギャップはリスク程の旨味が出ないと私は思います。どうでしょうか。
まずは無利子奨学金の範疇で試してみて、自らの資質を確認してからでも遅くはないと考えますよ。同じく投資を嗜むものとしては、珍しくコンサバな意見を述べましたが、何かのご参考になれば幸いです。
しかし、非常に野心的で自らの才覚を試そうとするその姿勢、私も見習いたいと思いました。向学心があって素晴らしいですね。人生は挑戦ですからね。刺激的なご質問、ありがとうございました。共にがんばりましょうね。
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住宅ローンは奨学金以上に大きな借金です。だからこそ定期的に見直し、よりよい条件を引き出そうという話です。