米ハワイ州、サンゴに有害な日焼け止め禁止へ
米ハワイ州は1日、サンゴ礁に有害な化学物質を含む日焼け止めの販売を禁止する法案を可決した。施行されれば、米国の州として初の試みとなる。
法案は、オキシベンゾンとオクチノキサートを含む処方せん不要の日焼け止めの販売を州全土で禁止するというもの。これらの化学物質は3500種類以上の最も流通している日焼け止め製品に含まれている。
法案は2021年から施行される予定で、民主党のデイビッド・イゲ州知事の承認を待つのみとなっている。
この法案を提出した民主党のマイク・ギャバード上院議員は地元紙ホノルル・スター・アドバタイザーに対し、知事が承認すれば「世界初の法律となる」と説明した。
「日焼け止めの有害化学物質を禁止することで、ハワイは確実に最先端に立つ」
「ハワイのサンゴ礁や海洋生態系や人間の健康保護にとって、大きな変化をもたらすだろう」
法案では、オキシベンゾンとオクチノキサートが成長途中のサンゴを殺すほか、サンゴの白化を加速し、「サンゴやその他の海洋生物の遺伝子を傷つける」原因となるとしている。
ハワイ人を支援するハワイ人問題事務局(OHA)や数多くの環境保護団体がこの法案を支持している。
議会では、共和党議員4人だけが法案に反対した。しかしいくつかの現地の団体や企業も反対を表明している。
スター・アドバイザーによると、日焼け止め「コッパーストーン」を製造・販売しているドイツのバイエルは、米国ではオキシベンゾンと同等の日焼け防止効果を持つ素材を入手できないと話した。
ハワイ医療協会も、日焼け止めが皮膚がんを予防するという研究結果が数多くあるのに対し、日焼け止めがサンゴ白化の原因となっているとする研究結果は少ないと述べ、法案に反対している。
イゲ州知事は法案承認の是非ついて明らかにしていない。
科学者の意見は?
オキシベンゾンとオクチノキサートの有害性を指摘した調査の共同著者、クレイグ・ダウンズ氏は、2015年に米紙ワシントン・ポストに対して、「オキシベンゾン汚染の影響を抑える取り組みを、どんな小さいことでも実行すれば、サンゴ礁が長く暑い夏を乗り越えられる。あるいは、破壊されたサンゴの回復につながる」と話していた。
環境汚染の専門誌に発表されたこの研究では、推定1万2000トンもの日焼け止めがサンゴ礁へと流れ着いていることが発見された。
一方、学術誌「ネイチャー」は、日焼け止め禁止に大きな効果があるのか確証がないという他の専門家の意見を指摘している。
英サザンプトン大学サンゴ礁研究所のヨルグ・ウィーデンマン氏はネイチャーに対し、「日焼け止め禁止は、異常気温や魚の乱獲、海岸線の侵食といったサンゴを汚染・破壊している諸問題を解決しない」と指摘した。
「しかし、多くの観光客が集中する場所では、『追加要因があるかもしれない』と慎重に注意しておくのは、理不尽なことではない」
ハワイの海には年間800万人の観光客が訪れ、その数は増加の一途をたどっている。