2016年11月

 今年度第2回SV・JV中間報告会および関連行事のためBogotáに来ています。行事そのものは24日からでしたが、23日にKOICA(韓国のJICAに似た機関)での発表があったので、1日早くArmeniaを出発しました。
久々のBogotáは、やはり空気が悪いのですが、雨期のため毎日雨が降るためか、語学研修当時よりずいぶんましに感じられます。でもちょっと肌寒くコートが必要です。ホテルにはバスタブがあって嬉しいのですが、お湯がぬるい!

 KOICAのビルは、言いにくいですがJICAより立派で、使い勝手がよさそうでした。地下の大会議室にメンバーが集まっていて、発表者は私と先輩JVの2名。JICA事務所からも2名同行してくださいました。KOICAもJICAと似た構成で、若者とシニアが派遣されています。やはり言葉の壁は厚いようで、大変さは同じだと感じました。
 私の発表が先で、「コロンビア、キンディオ県の小学校算数教育の問題点と改善に向けて」というタイトルで約25分発表して(本当は20分と言われていたんですが)、質疑応答20分くらいの時間でした。赴任してまだ3か月ちょっとですが、この間にいろいろ気づいたことがあります。今回の発表のおかげで、コロンビア教育省のホームページも随分読みましたし、GEDESやプロジェクト・チームの皆さんにいろいろ質問して教えていただくことができて、発表してありがとうと言われたけれど、私自身の収穫の方が段違いに大きかったと思っています。

 私が気づいた点は、①教育省が出している指導指針の問題―内容が大雑把すぎることと、系統性に欠けていること、教師用指導書がないこと、教科書会社が出している教科書の内容が多すぎること、など ②教員養成の問題―2年間の高等師範学校では十分な算数指導が学べない、教育学部の入学資格ラインが低く(最近は改善されていると聞いています)数学のレベルも低い、他学部の学生も教職課程を取れば免許は取れるが、専門知識に特化していて生徒に教えるには適していない、など ③現職教員の算数・数学レベルの低さ―簡単な四則計算ができない教員がいる、そもそも立式の重要性がわかっていない、学級集団づくりという視点が欠けている、など ④学校内外の問題―午前・午後の2部制のため、教室は共用。自分たちの教室という気持ちが育ちにくい、家庭の貧しさ、…などなど。Colombia教育省はかなり頑張っていると思います。2部制から派生する問題については、学校を増やすわけにはいかないのですからなんともしがたいのですが、必ず他にかいい方法があるはずです。
 算数のレベルアップをはかるために、私が関わっているプロジェクトで、子どもの教科書づくり、どんな先生でも最低この通りに進めれば授業ができるような教師用指導書づくりに取り組んでいることを発表しました。皆さん興味深々でした。指導書ができても、これを使ってもらうためにどれだけデモ授業をして啓蒙しなければならないか、気が遠くなるような話ですが、少しずつ少しずつ行きつ戻りつしながら進んでいくのでしょう。焦りはありません。プロジェクト・メンバーや協力者の熱意がキンディオ県の算数教育を押し上げていくと確信しています。
 
 24日は安全対策連絡会議と安全対策セミナー。朝8時半から夕方5時まで昼食1時間半をはさんでみっちりやりました。今回のMedellínの事件のことももちろん話題に上りました。これまでに在留者の誘拐というのはありましたが、旅行者が殺害されたことはないそうです。被害者はスマホ、タブレットをとられて取り返そうとコロンビア人の若者ともみあいになり、仲間がたまたま持っていた銃で至近距離で撃たれてしまった。取り返そうとしなければ、仲間が銃を持っていなければ…悪いことが重なってしまった。不運としか言いようがありません。Colombiaの警察組織はかなりしっかりしています。日本を見本にした交番(CAI)が地区ごとにあって、2人組の警察官が何組も区域内を巡回していて、事件を未然に防ぐため、あるいは何かあっても迅速対応できるような体制になっています。アパートの近くにも交番があるので、普段から警察官と仲良くしておこうと思います。セミナーの後は懇親会がありました。

 25日は活動の中間報告会前半。これはJV・SVとも、カウンターパートと2人でスペイン語で行います。品質管理、農業生産性向上とその過程、包装など、様々な報告と今後の活動計画は、聞いていて楽しいものでした。後半は火曜日に行われます。来年6月には私もプロジェクトのメンバーと一緒に報告することになります。その時までにどれだけ進んでいるでしょうね。楽しみです。
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KOICAで。一番奥に座って、パワポを使って発表しています。よく見えませんね。
koicaホームページ掲載写真
KOICAのホームページに掲載されていた写真です。私も見えてます。
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安全対策セミナーで。まず、国家警察の方のお話。右側にいらっしゃるのですが、暗くてよく見えませんね。
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この方、JICA本部安全対策室のアドバイザー。セミナーに先だってMedellinの現場にも足を運んでおり、その話もしてくださいました。
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レストランで食事中に強盗が入ってきたことを想定したロールプレイ。こんなふうに床に伏せます。
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中間発表の様子。滞在ホテルの会議室で。
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おまけ。A型肝炎・B型肝炎の予防接種に訪れた病院で。両方とも3回目で、これで完了。両肩に1本ずつ。駒ヶ根訓練期間中に1日に4本(両肩にそれぞれ2本ずつ)まとめてうたれたことを思い出しました。聞くところによると1日に8本までは可能とのこと。冗談でしょ! 予防接種はあと1回。破傷風注射が残っています。





 


 今回のタイトルは「麻薬」。びっくりしますよね。
 Bogotáでの語学研修の最後に麻薬運び人の女の子の映画を見せてもらったことは以前に書きました。以前よりずいぶん改善されてはいるものの、麻薬は身近な問題です。ここArmeniaでも最近、麻薬密売グループが摘発されていますし、学校の入口近くの角に麻薬が入っていたと思われる小さなビニール袋が落ちていたりします。知らなければわからないのですが、先生たちが「これ、たぶんそうよ」と教えてくれます。カウンターパートのMarthaさんが、「今はそうではないけど、以前13歳くらいの生徒で麻薬を吸っている子がいて、70歳くらい見えた。どうしたらいいのか...」と話してくれました。これまでいろいろな写真を掲載してきましたが、それはこの国のいい部分。その外側には、本当に貧しくて、教育もなくて、生活に窮している分厚い層があることを、私たちは知っておかなければなりません。
 最近、National GeographicというTVチャンネルで、BogotáのEl Drado(黄金)国際空港での麻薬取締官たちの日々の奮闘を放送しています。トランペットのケースの布の内側にケースの色と同じ黒に着色した麻薬を貼り付けたり、コートの裏地の内側に縫い込んだり、手術用手袋の指の部分に麻薬を詰めて結び、それを何十個も飲み込んで運んだり。ありとあらゆる方法で挑んでくる運び屋たちに日々戦々恐々と立ち向かう取締官たちのドキュメンタリー番組。これがこの国の現実です。通りで普通にアレパ(トウモロコシで作ったパン。焼くとおいしい)を売っているおばちゃんが、まさかの麻薬売人だったりします。家族ぐるみで長年やっている。注意してし過ぎることはありません。
 19日午後、第2の都市Medellínで、20代の日本男性が銃で3発撃たれて亡くなったというニュースが入ってきました。なんということでしょう。何でも携帯とタブレットをとられて追いかけたら別の男が発砲したとのこと。詳しくはわかっていませんが…。とられても絶対に追いかけてはいけません。ここでは、物より自分の命を守ることが一番大切です。うちの子どもたちと同じ年代だと思うと、やりきれない気持ちです。

 今週は、県下CircasiaのLibreという学校で3年生の子どもたちと円の勉強をしました。コンパスを持っていない子が多いので、方眼紙を作って長方形に切り、紙コンパスをたくさん用意して、図を描きました。けっこう準備が大変。鉛筆をもっていない、ノートがない…いろいろです。制服があるから一見ちゃんとしているようだけど、貧しい子が多いのです。でも、子どもたちはどこの国も同じです。時間があっという間に過ぎて写真を撮る暇もありませんでした。午前に授業が入ると、朝5時半には起きなければなりません。7時前に学校に着いて、7時開始。Armeniaに戻って12時からスペイン語の勉強。午後から算数プロジェクト・メンバーの先生がうちにやってきて午後5時まで一緒に指導案の見直しと、やることはめいっぱいあります。そして、ここにきて思わぬ朗報です! 教科書作成費用を銀行が出してくれることになりました。教科書の装丁作業も進みつつあります。これだけのプロジェクトクトに関われるのは幸せという他ありません。プロジェクトのメンバーは、それはそれは働きます。いつ休んでいるのかと思うほどです。でも、他のSVの話を聞くと、こんな状況は私の所だけで、思うように進まないケースが多々あるようです。新着JVも今は観察が中心ですが、夜はぐったりのようです。会議などで、思いっきり普通にしゃべっているスペイン語を集中して聞くのはやっぱり疲れますよ。

 今週の予定-21日月曜日は午前デモンストレーション授業で、午後は指導案見直し。22日は午前Bogotáへ移動して午後は予防接種。23日にKOICA(韓国版JICA)の集会でこの国の教育の現状についてこの3か月で気づいたことを発表する予定。24日からはSV・JVの各種講習(安全対策・健康管理)や先輩隊員の中間発表会など1週間続きます。その後Medellínに行く予定なのですが、今回の騒ぎで行けるかどうか心配しています。

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TV番組から。怪しいとなったら、直ぐ病院に連れて行ってレントゲン撮影。逃げられませんね。
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これもTV番組から。トランペットのケース内側を削ってはがしとっているところ。



  先週の土曜日から月曜日(祝日)にかけて、Bogotáにいる同期の小澤さんが日本からはるばる様子を見にやってきた奥様を連れて、Armenia まで来てくれました。同期というのはいいものです。30年前の協力隊仲間たちとも、何だかんだ言いながら、ずっと仲良くやってきました。今回、駒ヶ根での訓練や語学Webレッスン、そしてBogotáでの現地語学訓練を経て、お互いを知り、共に苦労してここまでやってきたので、わざわざArmeniaまで足を運んでくれるというのは本当に嬉しいものです。
 ここArmeniaには、同期の菅原さんと一緒にやってきましたが、彼女は駒ヶ根で小澤さんと同じ語学クラスで、仲がいいので、まずは菅原さんのお宅に泊まることになりました。本当はCentroを案内する予定だったのですが、着くなり飲み始めてしまったので、とにかく初日の夕食は我が家に来ていただいて(近いんです)パエリャと茶碗蒸しをお出ししました。蒸し器? 買ったんですよ!
 翌日はArmenia近くのコーヒーFinca(農園)へ。まずは「利きコーヒー」。その後Fincaの中を回ってガイドの方からいろいろなお話を聞きました。最後の方で、コーヒーをごちそうになったり、コーヒーカップに絵付けしてお土産にもらったりして、全部で3時間ちょっと。そこにはプール付きホテルも併設されていて、レストランで昼食を食べました。もちろん旅コアラも一緒ですよ。
 最終日、奥様は菅原さんとダンスのレッスン。私は小澤さんのお供をして、今は博物館になっている古い鉄道の駅へ。彼は建築家なので、Armeniaに来たからにはそこを見ないで何を見るということでした。
 今週は、火曜日に新しい仲間が5人も増え(SENAに3人、算数プロジェクトに2人)、私は算数の2人にお供して、県庁に行ったり、市庁舎に行ったり、デモンストレーション授業に加えて、教科書作成費用を出してもらうために乳製品会社を訪問したり(人寄せパンダですけどね。効果あるんですかね)と、忙しい毎日でした。
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パエリャ鍋は売っているんですが、用途がそれだけになるので、みんなでお鍋大会ができるようなものを買いました。けっこうたくさんあったのに、ペロッと食べてしまった!PB060186
Fincaの中。広いですよ~。ガイドさんは、基本英語で。私にはスペイン語でご案内。
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これですよ、これ! いいでしょう?
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コアラさん登場!
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ここのコーヒーは、1年中収穫できるそうです。赤くなった実を集めて種を取り出し、乾燥させ、炒ってコーヒーにします。全て手作業。丁寧にていねいに仕上げていきます。
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Armenia南部にある古い駅舎。今は博物館になっています。開館は平日8時から2時まで。なので中は見れませんでしたが、管理人の女性にお願いして裏側と横の古い倉庫の中を見せてもらいました。そちらも興味深かったですよ。

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県庁最上階(19階)から見たボリーバル広場の様子。左側は谷になっていて、街は右側にずっと広がっています。



 

 タイトルを見て何だろうと思われたことでしょう。今週はSemana de Matemática(数学週間)で、キンディオ大学の教員養成コースの学生対象に、普段とは違ういろいろなテーマで数学の講座が開設されています。私の担当は水曜日の夜、6時15分から途中休憩をはさんで9時30分まで。タイトルは「日本の算数教授法」。学生は20人程です。前半は、まず、キンディオ県の数学コーディネーターのMagdaさんがJICAの招へいで筑波で研修した際に見学した日本での算数の授業の様子などをpowerpointで紹介。次に私が同じくpowerpointで日本の教育システムなどを紹介しました。その後、模擬授業として「計算の順序」を行いました。8時過ぎに休憩を取りましたが、その時に、ジュースとサンドイッチが提供されました。お腹がすいていたので、とってもおいしかった! 後半は、まずカウンターパートのMarthaさんがかけつけて算数プロジェクトの紹介をしました。これもpowerpointで、現在、各学年の1時間ごとの指導案の作成が終盤に入っていること、その必要性、本を作るにはかなりの予算がかかること、その獲得に頑張っていることなどのプレゼンをして、次に私の5年生の子どもたちに実施した「円周率」の模擬授業。
 学生たちは、教員を目指しているからか、興味を持って授業に参加してくれました。何回も同じ模擬授業をやってきましたが、その度に気づかされるのは、式の意味、立式の大切さという部分が抜けていることです。例えば、「1箱25個入りののチョコレートの箱が12箱あるとき、チョコレートの個数は全部で何個?」という問題の答えを求める式として、ほとんどが25×12と書いてしまいます。正解と思うでしょう? 違うんですよ。ラテンアメリカ諸国では、かける数とかけられる数の順番は逆なんです。これは言葉の順序の問題で、「12veces 25(12回 25を)」となるので、正解は12×25なんです。誰も式の意味について考えが及んでいないんです。それでも、なぜこの式になるのかと聞いて、やり取りしていると、理解していきます。まさにpoco a poco(少しずつ)ですね。
 なので、掛け算は、例えば2の段は、1×2、2×2、3×2、4×2、5×2、6×2、7×2、8×2、9×2となります。いろんな教室を回っていると、壁面に掛け算九九の表が貼ってあることがあります。1度、日本と同じ表が貼ってあったので、同じ方法でやっているのかと思ったのですが、後で教科書を見たら、2×1、2×2、2×3、2×4・・・の意味は、1が2回、2が2回、3が2回、4が2回・・・ということなんです。これではなかなか理解しにくい。だから、子どもたちの多くが上の学年になっても掛け算が頭に入っていない状況なのだと思います。大きな課題です。このことをわかっている人はたくさんいるので、みんなで知恵をしぼっていかなければね。そうそう、2桁以上の掛け算のひっ算は、大きい数を上に、小さい方を下に書いて計算するんですよ。まあ、計算の工夫だからいいんですけどね。そうと知ってやらないと、立式が正確にできなくなりますよね。
 後半の円周率の模擬授業は、子どもたちにやったのと同じく、実測して円の周が半径のほぼ3.14倍になることに気づかせるものです。実測用のセットは、夜なべで厚紙を切って作ったもので、本当は皆に1セットずつあげたかったんですが、今後も使うからとカウンターパートからダメ出しされました。え?夜なべなんていつの時代だって? ホントにそうですね。
 この週末には、ボゴタから同期の仲間が遊びに来ます。来週は、2次隊のSVとJV計5名がアルメニアに着任する予定。賑やかになります。そんな中、私は相変わらず先生や生徒たちへの授業の日々です。
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アルメニア市内のLas Colinasという学校の先生たちへの模擬授業。ここは、以前は危険地帯と言われていて、今もアルメニアの先生方はここに赴任したがらないようです。でもね、ここの先生方はみんなとても熱心なので、必ず将来レベルアップできると思いますよ。
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Las Colinasの校舎の一部。1階右端が校長室。
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キンディオ大学の303教室。教員養成コースの学生たちです。一部、特別参加者もいます。後でだんだん増えてきます。
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円周を実測しているところ。

以下はおまけです。10月31日はハロウィンでしたが、夜遅くまで、町中、仮装した親子連れでいっぱいでした。
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こんな感じ。あんまりかわいいから撮らせてもらいました。この格好でお店に入ると必ずお菓子をもらえます。
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これもすごいでしょ? 





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