1日4時間労働に変えたら2年でボロ儲け、ドイツ式働き方改革

まぐまぐニュース! / 2018年5月3日 5時0分

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5月1日のメーデーでは各地で「長時間労働の撲滅」が訴えられましたが、ドイツには「週28時間労働制」を取り入れ順調に収益を伸ばしている企業があることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんがその企業の「労働時間削減への取り組みの歴史」を紹介、根底には「人間の力を信じた経営」へと舵を切ったトップの覚悟があるとした上で、ドイツと同じく高齢化と人手不足に悩みながらも、「人を信頼できない経営」が働く人たちを苦しめている我が国の現状を憂いています。

人手不足だからこそ「休もう!」。夢の週28時間労働

1日いつでも4時間だけ働けばいい――。こんな夢のような労働条件で、生産性を上げている企業があります。「ebm パプスト社」。従業員1万4,000人が働く、ドイツ南部の工業用通気システムを製造する世界的企業です。

今から4年前のこと。人手不足に悩んでいたパプスト社は、「働き方を変えよう。会社にいる文化から、結果の文化に変えよう。若い世代を呼び込むにはもっと自由が必要だ」と一念発起。手始めとしてシフト制を廃止し、「最低4時間出社してればオッケー!」と従業員に自由を与えたのです。

8時間労働は厳守ですが、いつ働くかは自由・残業した場合は「時間口座」に貯められるようにしました。「時間口座」とは、フランスなどで取り入れられている制度で、働く人たちは口座から残業時間をおろし有給休暇として使うことが可能です。

しかし、文化を変えるのは、容易ではありませんでした。上司がいるのに「帰れない」と社員はトップに直訴。みんなが会社で働いているのに家でやっていては「サボっている」と思われると不安がる人もいました。

それでもトップは「結果さえ出せばいいんだ。みんなで文化を変えよう!」と社員に言い続けた。「キミたちと一緒に会社を変えたいんだ。魅力的な会社にしよう!」とメッセージを送り続けました。

トップの熱意を「自分たちのことを信じてくれている」と受け止めた社員たちは、「よし! 会社を魅力的にするぞ!」と自分のペースで、自分がもっとも結果を出せる方法を考え、だんだんと自由な働き方は浸透していきます。

そこで同社は、2年後の2016年、なんと「1日の最低出社時間までも廃止したのです!「最低週28時間は必ず働いてくれればいい。それと1日働いた時間を必ず記録する。それさえ守ってくれれば、あとは自由だ! 君たちの自由だ!」こうトップは社員たちに伝えました。

企業には労働者の健康を守る上で、労働時間を管理する義務があるので、それを果たすために労働者に協力してもらったのです。

こういった取り組みの結果、生産性も向上し、売上高は19億ユーロ、日本円で約2,520億。ひとりあたり1億8,000万円売り上げている計算になります。さらに、若者の人気企業になり、ドイツではパプスト社を真似る企業が増えているのです。

パプスト社のトップはこう断言します。「僕が社員に言い続けたのはキミたちを信じているってことだけだ」と。そして、「自由に慣れ、堕落した働き方をする社員も出てくるかもしれない。大切なのはそのことを常に意識し、働く人たちと向き合うことだ」と。

そうです。彼は「人間の力を信じた経営をしよう」と、覚悟したのです。これこそが、真の経営なんじゃないでしょうか。

方や、ドイツと同じく高齢化と人手不足に悩む日本はどうでしょうか? 人間の力を信じているのでしょうか? 社員たちひとりひとりに「期待」をしているのでしょうか?

人手不足で深刻なサービス業では、軒並み残業が増え賃金も上がらず若い人たちが次々と辞めています

「もっと働け!」ではなく、「もっと休め!」

こう覚悟できるトップこそが、これからは勝つ。信頼の上に信頼は築かれ、期待の先に結果がある。人を信頼できない経営が働く人たちを苦しめている。そう思えてなりません。

さて、5月3日から連休後半戦。私も自分の「力」を信じて、いつもよりたくさん寝ようと思います。みなさんは? 連休の過ごし方、おしえてくださいね。

image by: Shutterstock.com

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