Oculusは、5月1日(日本時間5月2日)にVRヘッドセットの新型Oculus Goを発売しました。Oculus Goは、PCもスマートフォンも使わない一体型VRヘッドセットです。しかも価格が23,800円から(32GBモデル、税込、送料込)と非常に注目が集まっています。
筆者は発売が発表されたF8に参加。F8では参加者全員にOculus Go 32GBモデルが配布され、当日さっそく入手しました。アフターパーティなどそっちのけで宿に戻り、その日はOculus Goを触って過ごしていました。そして2日が経過。2日が経った時点で感じられた、Oculus Goの良いところ、気になるところをまとめてみました。
目次
+:手軽、立ち上がりがとにかく速い
+:長時間でも快適
+:膨大なボリュームのコンテンツがある
+:寝転がれる
+:持ち運びやすい
△:電池の持ち
△:ストレージが少ない
-:インストールに失敗するときがある
-:空き容量が確認できない
-:前提:移動はできないし、手も動かせない
+:手軽、立ち上がりがとにかく速い
Oculus Goは、一体型のヘッドセットなのでケーブルはありません。筆者は3月のイベントでOculus Goを体験しており、その時点でこれまでのVRヘッドセットと圧倒的に異なる手軽さが最大の特長だと感じていました(体験レポ)。
しかし、実際に手にして、1日使ってみてさらに衝撃を受けました。その手軽さを体現しているのが「VRをやろう」と思ってからVRでコンテンツを体験するまでの速さです。
一度電源を入れてスリープ状態にしてしまえば、Oculus Goを手にとって頭に装着し、一呼吸置いた瞬間にVR体験が始まります。着脱センサーが備わっており、着脱を自動的に認識してスリープのON/OFFが切り替わります。また、スピーカーが内蔵されているため、ヘッドセットを装着してからイヤホンやヘッドホンをかける手間もありません。
https://www.youtube.com/watch?v=2tK2OOPkRhM
(スリープ状態で装着してからレンズの奥にコントローラーのアイコン等が表示されるまでのスピードを示す動画。表示時点で操作可能になっています。なお、撮影のために、指を着脱センサーにかざし、レンズ越しに立ち上がりを確認している。)
被ってからディスプレイにコンテンツが表示され操作できるようになるまでのスピードは、スマートフォンのロックを解除して立ち上げるスピードと比べてもあまり違いのないスピードです。
PCやPlayStationを立ち上げて接続を行うOculus RiftやHTC Vive、PlayStation VRといったハイエンドのVRヘッドセットのみならず、手持ちのスマートフォンを差し込んで体験するVRゴーグルでも実現できなかった圧倒的な手軽さです。
メニューの操作は普通レベルでストレスを感じることなく進めることができます。また、VRでは文字入力が面倒ですが、スマートフォンアプリと連動しているため、アカウント情報の変更やパスワード入力、購入決済などは全てスマートフォンで済ませられます。
ここまでひたすら使い勝手に特化したOculus Go。この手軽さが何を意味するのかというと、「スマホやTVと同じレベルにVRヘッドセットが並んだ」ということです。
「TVを見よう」と思ってリモコンに手を伸ばし、TVをつけてチャンネルを合わせるように「スマホでゲームをしよう」と思ってスマホのロックを解除してアプリを起動するように、VRヘッドセットでコンテンツにアクセスできるようになります。
特に後述するように「Netflix VR」は、「Netflix」のVRアプリです。TVやスマートフォンで楽しめるコンテンツがそのままVRでは映画館のような大画面のシアターで観ることができます。これまでは起動が面倒だったVRですが、一気に選択肢に入ってくるのではないでしょうか。
筆者は、ついつい部屋でOculus Goに手が伸びる、また外に行く時にさっとバッグに突っ込んでしまうようになっていました。
+:長時間でも快適
続いて快適さについて。ヘッドバンドやフェイスパッドの素材は柔らかく、長時間つけていても気にならない触感です。
そして、スマートフォンを使うVRで気になるのが「長時間使用による熱さ」です。コンテンツとデバイス次第では、15分程度でバッテリーの熱でプロセッサが熱暴走を起こして、VR体験を中断しなければいけないこともありました。
Oculus Goはバッテリーとプロセッサをヘッドセットに内蔵した一体型です。しかし、熱対策が十分にされており、長時間の使用にも耐えられました。「Netflix VR」は2時間以上連続視聴してもほんのり温かくなる程度。処理負荷が高く熱くなりやすいVRゲームに関しても熱暴走してパフォーマンスが落ちることなく、1時間以上連続して快適にプレイすることができました。
ただし、注意しなければいけないポイントが1点ありました。
それは、「VRコンテンツを起動しながら、コンテンツのダウンロードやインストールを同時に行うと急激に温度が上昇しパフォーマンスも落ちる」ということ。アプリやゲームをダウンロードしながら、別のアプリを起動した場合、VR体験中にもバックグラウンドでダウンロードとインストールは続いています。その場合、温度が非常に上昇しやすく、場合によってはパフォーマンスにも影響が出ることを確認しました。
未確認ですが、友達と話しながらVR体験を行う種類の機能やFacebookでのライブストリーミングを行う際は同様の症状が出る可能性があります。
+:膨大なボリュームのコンテンツがある
Oculus Go向けには1,000以上のアプリ・ゲームが配信されています。ただし、「いくらでも楽しめる」とは、そのコンテンツ数自体を意味しているわけではありません。
ここでは「アプリの中で次々とコンテンツが増えていくものがある」ことを意味しています。
代表的なものが、先ほども触れた「Netflix VR」(日本語対応)。他のデバイスと同じくNetflixの全映画・ドラマをVR内の大画面で観ることができます。また、日本では360度動画を配信する「360Channel」なども積極的にコンテンツを増やしています。もう一つ、膨大なコンテンツを有する「DMM VR」は2018年5月中に対応予定です。
海外のものが中心になりますが「Oculus Video」やメニューの「ギャラリー」ではFacebook上の360度動画を観ることもできます。今後、このようなアプリ内で次々とコンテンツが更新されていく日本語対応のアプリの増加にも期待したいところです。記事執筆時点では未対応ですが、ニコニコ動画をVRで視聴する「Niconico VR」がOculus Goに対応するのかどうかも一つポイントになります。
他にも「ホームスターVR」など癒やしのコンテンツもあり、日常的に繰り返し楽しめるようなコンテンツのボリュームになっています。
なお、配信されているコンテンツの多くはゲームです。プレイ言語が英語のものも多くあります。レビューでの評価や言語対応などを確認しましょう。返品システムもあるのでまずは試してみるのもアリですね。
+:寝転がれる
多くのVRヘッドセットと異なり、Oculus Goは装着したまま寝転がることができます。後頭部に固定するストラップがゴム製のため頭にフィットし、寝転がっても当たりません。筆者は2時間以上、Netflixで海外ドラマを見てみましたが、ヘッドバンドは全く気になりませんでした。
ベッドに仰向けに寝転がって、大画面でNetflixの映画を観ることができる、というのはなかなか実現できないことです。それがOculus Goを使うことで簡単に実現してしまいました。
ちなみに、コンテンツによっては寝転がった時に操作面等が目の前にこないことがあります。「Netflix」や「Oculus Video」などのシアターで映像を鑑賞できるアプリは対応しています。
+:持ち運びやすい
サイズがコンパクトで付属品がコントローラーのみのため、普通サイズのバックパックなどであれば持ち運びやすくなっています。立ち上がりが速いので、電車の中でも飛行機の機内でも、待ち合わせのちょっとした時間でも、職場の休み時間でも、どんな場所・シチュエーションでもカバンから取り出してサッとVR体験ができます。
持ち運ぶ際には、むき出しになるレンズに傷がつかないように注意を払う必要があります。また、ヘッドセットを屋外で置く際は、レンズの面を上に向けないように気をつけましょう。日光によって奥のディスプレイが焼けて破損します。
個室以外で使う際は音漏れに注意が必要です。内蔵スピーカーは手軽で便利ですが、ある程度音が漏れます。内側にスピーカーがついているため、小さめの音量にすると音漏れがかなり小さくはなりますが、音量を上げたり、静かな場所では、よく聴き取れるほど周りに音が聴こえることになります。自分の部屋で使いながら隣の部屋に音が聴こえるほどの音漏れは発生しません。周囲の迷惑にはならないように使用しましょう。外部音を遮断してVR体験に没入するためにもイヤホン・ヘッドホンは必要だと感じました。
記事執筆時点ではBluetooth接続による外部機器の接続はできないため、有線での接続となります。
Wi-Fi環境についてですが、Oculus Go自体はネットワークにつながっていない状況でも動作します。「Netflix VR」等通信を行うアプリで必要になり、スマートフォンアプリを経由してWi-Fi設定を行うことになります。操作をアプリで行っているだけなので、スマートフォンからのテザリングにも接続することができます。一度接続したネットワークへの再接続は自動で行われるため、スマホでの操作は不要です。
△:電池の持ち
バッテリーの持続時間は、ゲームなどの処理負荷の高いコンテンツをプレイする場合は1時間半〜2時間、Netflixなどの動画視聴では2時間〜2時間半、とされています。
筆者が色々なコンテンツを試したところ、実際にカタログスペック通りの結果となりました。VRゲームをプレイした場合は1時間半強、Netflixでの動画視聴では2時間半で電源が切れました。
サッと体験してサッと終わるならともかく、もっと動画を見たい場合やゲームなどをのんびりとプレイしたい場合、このバッテリーの持続時間は短いと感じるかもしれません。対応としては、充電しながらプレイすることが可能です。なお、給電が追いつかずに充電中でもバッテリーが減っていきますが、充電中は減る速度が遅くなります。また、モバイルバッテリーからの充電も可能です。
△:ストレージが少ない
32GBモデルでは特に顕著ですが、ストレージの容量はすぐに一杯になってしまいます。特にゲームは容量が重いものも多く、注目作の一つステルスゲーム「République VR」に至っては3.8GBのボリュームを使用します。
ストレージを気にせず使いたいのであれば64GBを選択しましょう。
(Oculus公式で謳われている容量の目安)
32GB:HD映画3本、ゲーム10本、アプリ20本
64GB:HD映画7本、ゲーム20本、アプリ40本
-:インストールに失敗するときがある
Oculus Goを体験したときに、筆者が明確に首を傾げたポイントは2つありました。1点目はアプリのインストールがうまくいかない場合があることです。VRアプリはゲームになると数GBの容量になりますが、ダウンロードを終え、インストールが完了する直前にエラーとなることがありました。
エラーとなる明確な条件は不明ですが、
・同時に複数のアプリをインストールしようとした場合
・インストール中にスリープ状態にした場合
・別のアプリを起動中にインストールしようとした場合
にインストールに失敗する現象が起きました。なお、スリープ中や別のアプリの起動中もダウンロードとインストールのプロセス自体は進行します。
-:空き容量が確認できない
Oculus Goはモデルによって、32GBか64GBのストレージがあります。数GBのゲームなどもあるため、容量には気をつけたいところですが、記事執筆時点ではOculus Go内部、またスマートフォンアプリで容量を確認することはできません。
USBケーブルでPCに接続することで容量が確認できます。
-:前提:移動はできないし、手も動かせない
なお、「気になること」として取り上げませんでしたが、Oculus Goには限界があります。
Oculus RiftなどのハイエンドなVRデバイスや一部の一体型VRヘッドセットでは、「動く」、「手を自由に動かす」といった現実の動きをそのままVRに反映させることができます。Oculus Goには、そのような機能はありません。
Oculus Goには、
・頭を回転させて見回す
・リモコン型のコントローラーで手をレーザーポインタのように使ったり、回す
といったVRヘッドセットに最低限の機能しか備わっていません。
キャラクターに顔を近づけてみたり、手を伸ばして触れるような動作はOculus Goではできないということになります。また、Oculus RiftやHTC Vive、PSVR向けのコンテンツを動かすこともできません。(一部、公式がOculus Goに移植しているものはプレイ可能)
また、解像度などの見え方に関しても同様です。Oculus Goに搭載されたディスプレイは、2.5K相当の液晶パネルです。ハイエンドのVRデバイスの中でも2018年に発売された最新型のVive Proの3K相当の有機ELパネルと比べてしまうと見劣りがします。しかし、映像を中心に「そこそこの品質」は実現しています。
以上が、2日間Oculus Goを使った感想になります。購入を検討している方の一助となれば幸いです。
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