脳科学の国のアリス

神経細胞ネットワークをコンピューターゲームを使って解こう、という野心的な研究プロジェクトの新イベント、Alice’s Adventures in Neurolandが発表されていました。

元のプロジェクトはEyeWire。このブログでも何年か前から定期的に紹介しているので覚えている人も多いかもしれません。

 

 

EyeWireとは

脳の中にある神経細胞がどうやってネットワークを作っているか、その全貌を明らかにする「コネクトーム (connect + ome)」という研究分野があります。脳には数百億以上も神経細胞があり、その1つ1つの細胞の形を詳細にモデリングしようというのは、想像するだけで頭がクラクラするような壮大な研究です。

コネクトームのデータ取得は電子顕微鏡で行いますが、それから細胞の写真を機械学習(AI)を使って自動的にモデリングするのは未だに困難です。しかし数百億以上もある細胞を人間が手作業で塗り絵をしていたらとても終わりません。そこでMITの研究グループは考えつきました。「そうだ、塗り絵をゲームにして一般の人に研究を手伝ってもらえば良いんだ」と。

コネクトームはEyeWireによってある程度の成功が得られています。網膜の神経細胞の形を解いた論文は著名な学術誌に発表されています (Nature, 2014Cell Reports, 2016)。しかしまだ脳の全体を解き尽くすには遠く及びません。

ポケモンgoくらい色んな人がゲームに取り組めば、もう少し研究は進むのかもしれませんが、残念ながらEyeWireのゲーム内容自体は単純な塗り絵作業で、それ自身を変えることはできません。そこで定期的にAlice’s Adventures in Neurolandのようなイベントをやってユーザーを飽きさせないようにしているわけです。

 

終わりに

少しでも内容が気になった人は公式サイトにアクセスしてみて下さい。塗り絵を続けると下のような神経細胞の3Dイメージが出来上がるのです。チュートリアルが全部英語ということもありアジア人は少ないですが、時々ランキングに入っている人もいます。

EyeWireをやれば間違いなく科学の発展に貢献します。ゲームをやればやるほど、論文の著者一覧にthe EyeWiresが入っていることを喜ばしく思えるのでしょう。

 

 

PS. このプロジェクトのトップ、MITのSebastian Seungによる日本語本はこちら。脳とコンピューター、例えば攻殻機動隊みたいなSFが好きな人は「こんな研究がリアルにあるのか!!!」と感動できるのではないでしょうか。コネクトームによって人間がコンピューター上で再現できるかもしれない、知的好奇心にグイグイ来るすごい本です。

コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか

コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか

  • 著者セバスチャン・スン
  • 価格¥ 2,592(2018/05/03 19:19時点)
  • 出版日2015/11/18
  • 商品ランキング139,569位
  • 単行本504ページ
  • ISBN-104794221657
  • ISBN-139784794221650
  • 出版社草思社
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