カリフォルニア州の運転免許を取得するまでのツライ道のり

前回までのあらすじ

カリフォルニア州の運転免許を取得した。端的に言って非常に苦労した。

この物語はゴールデンステートカリフォルニアと、彼を取り巻くDMVの、愛と絶望とUnprotected Left Turnが満載のアニメであーるぅ(CV若本規夫)

 

Social Security Number取得までの道のり

入国

僕はE2ビザで米国就労している。

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入国審査で「ビジネス目的での滞在」と答えるのは初めてだった。

職業はプログラマでありこの国でもソフトウェア開発をすると伝えたが、職員に平衡二分探索木の実装を求められることはなかった。この日が3/19日

 

I-94入国記録

入国した直後から、I-94というウェブサイトから入国記録を参照することができる。できるだけ迅速にこれを印刷してソーシャルセキュリティーナンバー(以下SSN)という社会保障番号の取得に備える。

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SSN申請

SSNは米国で暮らす上で必要不可欠だ。携帯電話の契約、アパートの契約、ガスや電気(PG&E)の開通、運転免許証の取得など。そう、免許を取るための重要な依存関係である。

申請にはパスポートと前出のI-94入国記録を印刷してSocial Security Administrationのオフィスに持参する必要がある。いくつか選択肢があるが、僕はサンフランシスコのチャイナタウンにあるオフィスに出向いた。ここは職員が親切で仕事が早いと有名だが事実であった。およそアメリカの公的な機関でこれほど気持ちのよい対応を受けることはまずない。

住所は会社の住所で良いのでとにかく早くSSNの申請を済ませること。なんせこれがないと何にもできない。2週間ほどで無事到着。この日が4/2日

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筆記試験とINSTRUCTION PERMIT

アパートの契約

2016年7月1日より、カリフォルニア州の免許を申請する者は居住を証明する書類の提出が必要になった。例えば、

  • アパートの契約書
  • 銀行やComcast(ネット)の郵送の文書
  • PG&E(電気やガス)の郵送の文書

が必要だが、郵送の文書はアパートを契約したはるか後にしか手に入らないのでアパートの契約書が最も難易度が低い。

SSNを取得するとアパートが借りられるようになるので、まずは一刻も早くアパートを契約する。本来は居住を証明できないといけないのだが、DMVの人もそこまで細かくは見ていないので、契約書にサインしてまだ入居してなくても受理されるかも知れない。推奨しているわけではまったくない。

筆記試験対策

SSNカードの到着を待ちつつアパートを探しつつ、この間に並行して運転免許の筆記試験の対策をする。先にカリフォルニア州の免許システムについて説明すると、

  1. 筆記試験に合格するとINSTRUCTION PERMITと呼ばれる仮免が発行される
  2. Behind-the-Wheel Drive Testという実地試験を合格すると晴れて免許が発行される

という仕組みになっている。民間の教習所は存在するが、これらに実技試験の合格を与える能力はなく、単に練習と実技試験の車を貸してくれたりするのみである。

実技はすべてDepartment of Motor Vehicles(自動車両局。以下DMV)で受ける一発試験のみである。

 

話が逸れた。試験対策でオススメの教材はズバリ、DMV Handbook(PDF注意!)という公式PDFである。日本語版(PDF注意!)もある。

なんでこれがオススメかというと、結局法律は時々刻々と変わるので最新の公式情報にあたるのが最も正確だからだ。技術者はこの辺の感覚は痛いほど分かるだろう。

あとDMVが出している公式アプリもオススメである。模擬試験が受けられ、ほとんど同じまたはまったく同じ問題が本番でも出題されたので当日朝にやればより盤石だろう。

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筆記試験

筆記試験はDMVでしか受けられない。公式サイトからOffice Visit Appointmentで予約する。ただ予約は随分先まで取れない。僕の知っている範囲で、San Jose DMVはwalk-inつまり予約なしでも朝イチで並べば筆記試験を受けられる。過去2回程walk-inで行ったが、7時半に現地に到着するように行くとほとんど待つことなくあらゆるサービスを受けられた。DMVの中では比較的職員の対応も良いのでオススメのDMVのひとつである。

 

DMVに着いて新規に免許を申請しに来たと伝えると、申請用紙を渡されるので記入する。頭髪や目の色、身長をフィート・体重をポンドで書かされたりする。かなり慌てるので自分の身長が何フィート何インチなのか事前に調べておくと良い。

 

試験は日本語でも受けられる(紙らしい)が、英語で受ける場合は備え付けのタブレット端末で受けることになる。試験対策をちゃんと英語でやっておかないと交通の専門用語のオンパレードで厳しいが、タブレットで受けた場合は自信のない問題を3回までパスできる(不正解にならない)ので少し有利になる。

ただ僕はパスした2問が2問とも再出題された(再出題はパスできない)うえに両方果たして間違えたのでかなり納得いってない。ただ30/36問正解すれば良いので比較的楽勝。僕は4問も間違えてしまったが一発で合格。この日が4/3日

 

合格するとINSTRUCTION PERMITという仮免許に相当する紙切れがその場で発行される。これは助手席にカリフォルニア州の正規の免許保持者が乗っている場合にのみ公道を走れるという許可証である。あとはひたすら友人や同僚に協力してもらって運転の練習をするしかない。

2015年までは日本の免許証を持っていれば筆記試験のあとTEMPORARY LICENSEが発行されて1年間は自分ひとりで運転の練習ができたらしいが、法律が変わって厳しくなっている。単身で来ている場合には非常に厳しい足かせとなる。

 

国際免許証

ちなみに日本の免許証を持っていれば国際免許証を発行できて1年間は米国で合法的に運転できるのでは?と考える人もいるだろう。これは間違いだ。

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DMVハンドブックにあるカリフォルニア州法の説明を引用する。

カリフォルニア居住者となりカリフォルニア州内で車両を運転する場合には、10日以内にカリフォルニア州免許(DL)の申請を行わなければなりません。居住は以下を含むさまざまな形態で立証されます:

(中略)

・その他の非居住者は対象とならない権限/恩恵を受ける。

この、「非居住者は対象とならない権限/恩恵」にVISAを取得して就労している者が含まれるとの見解が一般的だ。つまり国際免許証は短期滞在者にしか適用されない可能性が高い。

 

Behind-the-Wheel Drive Test

予約

まず、実技試験の最大の難関は「予約」である。Behind-the-Wheelテストは事前に予約をした上でしか受けられない。walk-inは一切できない。この予約がとにかく取れない。

DMVの公式サイトの「Behind-the-Wheel Drive Test」から好きなDMVを選んで予約する。

実技試験はそのDMVの周りのコースを使って行われる。DMVの存在する街の人口、道幅、試験官等々、合否を左右する要素は多分にある。次のDMVは、複数の知人によって難易度が低いと言われているDMVである。

  • LOS GATOS
  • SANTA CLARA
  • SAN JOSE

しかしながら、僕はこれらのいずれでも試験を受けていないので真偽についてはノーコメント。

 

必要書類の準備

試験を受けるには次のすべてが必要

  • INSTRUCTION PERMIT(仮免)
  • 有効な車両とそのREGISTRATION登録証
  • 有効な保険

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そもそもBehind-the-Wheelテストでは車両を自分で用意する必要がある。

僕は友人に車を売ってもらってそれを自分で名義変更(Title Transfer*1)してそれで試験を受けたが、自分の車がない場合は友人やレンタカーで借りる必要がある。

また車両には任意保険が必須となっている。仮免の状態では通常自分の名義で保険を掛けることができないので、僕は保険屋に直接電話をして国際免許証でも掛けられる非常に割高な保険に入った。免許を早く取れば取るほど差額を多く返金してもらえる。

 

出発前の対策

DMVにはカリフォルニア州の免許保持者と一緒に向かう。窓口でアポイントで来たと伝える際にちゃんと同行者の免許証をチェックされるのでテキトーな替え玉ではダメ。受け付けが終わると実技試験用の通路に行くように指示されて試験官が来るのを待つ。

試験官が来ると、先ずは車両そのものの保安部品のチェックをされる。

  1. 左ウィンカー、右ウィンカー。ライトは前後とも点くこと。
  2. ブレーキを踏んでブレーキ灯が点くこと。
  3. クラクションを鳴らせること。

ライトがひとつでも切れていたらその時点で不合格で試験終了。非常に時間の無駄なので事前にチェックしておくこと。

なおこの時の指示は当然英語なので知っておかねばならない。ウィンカーは英語ではblinker, signalなどと指示がある。ブレーキはfoot brake。クラクションはhorn*2

 

次に、各保安部品を知っているか聞かれる。

  1. ワイパーを動かすレバーはどれか。
  2. ヘッドライトを点ける部品はどれか
  3. くもり取りはどれか
  4. ハザードはどれか
  5. サイドブレーキはどれで、どのように使うか
  6. 手信号で左折、右折、ストップ(減速)を示せ

保安部品がまた、和製英語だらけで日本人殺しの罠になってしまっている。フロントガラス(和製英語)ワイパーはWindshield wyper, くもり取りはDefroster, ハザードはemergency flasher, サイドブレーキはemergency brake / hand brakeなど。余談だけどバックミラーも和製英語で本当はrear view mirror

 

手信号(Hand Signals)はYouTubeを確認して欲しい。

www.youtube.com

 

実技の対策

出発前チェックがOKならば、いよいよ道路に出て走ることになる。道路では主に次のことが問われる。

  • 正しく右折(Right Turn)できる
  • 正しく左折(Left Turn)できる
  • 車線変更(Lane Change)が正しくできる
  • 道路標識(制限速度、STOP他)に正しく従える
  • 路肩に駐車(Pull Over)とバック(Pull Back)が正しくできる

基本的にはこれだけ!なんだそんなことかと思われるかも知れない。ただ日本と違う部分で注意する必要がある。

赤信号で右折できることがある

アメリカでは特に禁止されていない限り赤信号でも右折(日本でいう左折)できるケースがある。一時停止して左からくる車も対向から左折/Uターンしてくる車もいなければ曲がれちゃうのだ。ただしNO TURN ON REDと書かれていると違法。これが非常に分かりづらい交差点が存在したりして罠になっている。

Left / Right Arrow

赤矢印信号の場合はどんな場合も右左折禁止。

4 Way Stop

信号のない交差点は全方向STOPサインが出ており、これは停まった順に動きはじめる。同時の場合は右優先。

Center Left Turn Lanes

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初めて見た時は衝撃だったけど、道路の真ん中に左折のために両方向から入れる道路が存在することがある。FREMONTDMVだとこれを実際に試験で走らされたので心の準備が必要。

School Bus

スクールバスが赤ランプを灯しているときは反対車線の車も*3一時停止して絶対に追い越してはいけない。試験でも違反するともちろん一発アウト。

 

他にも山ほどあるんだけど全部は書ききれない。オススメの動画を貼っておくので見て欲しい。

www.youtube.com

www.youtube.com

 

合否判定

試験官は減点方式で候補者を採点する。15個までのMinor Errorは許される。

その他に、それを犯すと1発アウトのCritical Errorが用意されている。代表的なものをいくつか書くと、

  • 右左折前にウィンカーを出し、ミラーを確認し、最後に肩越しに死角(Blind Spot)確認をしなかった
  • 著しいスピード違反
  • バック時に肩越しに後方確認しなかった
  • バック時に路肩に乗り上げる
  • 左折時に指定されたレーンから外れる
  • その他試験官が危険だと判断した場合

等々。

 

試験1回目

初めての試験はFREMONT DMVで4/10に行われた。結果は不合格。

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曰く、左折時に前方から車が来ているにも関わらず強引に左折(Illegal Unprotected Left Turn)した危険運転(Dangerous Maneuver)。Critical Error1発アウト。ペーパーを見ても分かるように、全コースを回りきったあとDMVに入る最後の左折であった。

Google マップ

ここから左前方のDMVへの左折。

 

この時の状況はよく覚えていて、前方の車は明らかに200フィートは離れていたので抗議したのだが実らず。これはわざわざ日付が近いからとFREMONTまで遠征したので最初から落とすつもりだったのではと今でも胸くそが悪い。

 

試験2回目

奇跡的に同じくFREMONT DMVが4/19に取れたので2回目の挑戦。結果はまたも不合格…

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これもコースを全部回りきってDMVに帰ってくる手前の左折。

Google マップ

この位置で左折するように言われてそのまま点線に沿って曲がったのだが、DMVに帰ってきてからホントは居ちゃいけないところから線をまたいで車線をズレたと言われてこれもCritical Error一発アウト。

これも何度Mapを見返しても納得できなくて、2連続の仕打ちにFREMONT DMVの試験官にむちゃくちゃ悪いイメージを持ってしまった。

 

試験3回目

まさか3回目までもつれ込むとは思ってもみなかった。大体1回ぐらいはみんな落とされても不思議じゃないと励まされるんだけど、2回も落ちてる人は周りにほとんどいなくて、この歳になっても何かに2回連続で落ちるという事実に単純にもの凄いヘコんだ。

ちなみに3回連続で落ちると筆記試験からやり直しで、これまでかかった手間と費用がまたそのままかかる。これだけは絶対に避けたい。

この辺りで「すごい簡単だという噂のLOS GATOSにDMVを変更しようか…」などと悩んだが、LOS GATOSは人気で7月まで予約が取れない。妻が再来週渡米するので彼女の免許は僕がサポートする必要があり、7月まで待っていては生活がままならない。ということで、DMVにしつこく予約確認をして、4/26に最難関と言われるSAN FRANCISCO DMVを予約した。

 

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結果はようやく合格。

SAN FRANCISCO DMVはめちゃくちゃ酷い坂道がいっぱいあるし、人も自転車も信じられないほどいるし、違法な2重路駐とかが平気でしてあるし、間違いなくこれまでのFREMONTとはコース的な難易度では比べ物にならないぐらい大変だった。なので初めて受ける人には全然オススメできない。

 

SAN FRANCISCO DMVで興味深かったのは、市内はあまりにも路駐が多いので公道で路肩に駐車&バックの試験が事実上不可能なので、DMVの敷地内であらかじめこの試験をしてから公道に出るスタイルだった。

 

それからひとつ事件が起こって、僕の試験官が直前に担当した16歳ぐらいの少年が速攻で不合格になってたぽかったんだけど、そのお母さんが試験官にクレームを言いに来たのだ。

母「ちょっといい?息子がどうして落ちたか説明してもらえる?」

試「試験中に起きたことは守秘義務があるのです(極めて紳士的に)息子さんには車中でしっかり説明し納得してもらえました。特にあなたにお話しすることはありません」

母「守秘義務だと、Bullshit!! 彼が素晴らしいドライバーなのはよく知っている。彼が落ちたのはお前がレイシストだからだ」

試「レイシストだとBitch!! 俺はメキシカンだ。差別してるのはお前らWhiteじゃないのか」(ここで同僚が止めに入る)

 

ぼくはもうホント勘弁してください俺の試験どうなるの…干し芋みたいに縮こまって運転席に座ってたんだけど、帰ってきた試験官はもう陽気なお兄ちゃんに戻っており、朗らかに試験をしてくれたのでした。

 

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これがTEMPORARY LICENSE。2週間から2ヶ月で本物が届くそうな。楽しみだね。

 

結論

DMVは地獄

*1:この時売却額に応じた税金をカリフォルニア州に納めるのだが、なんと売却額の8-10%ぐらい取られる。すっごい高い!

*2:鳴らすはhonk。honk the horn!とか指示される

*3:ただし片側2車線ずつの反対車線の場合は停止しなくてよい