アイドルは想像を絶する「サバイバー」だった

虐待、非行、女子少年院の日々を乗り越えて

「私は地上のアイドルを目指しているわけじゃない」と言い切る、戦慄かなのさん(撮影:梅谷秀司)
戦慄かなの、19歳。現役大学生のアイドルだ。
まだ、生まれてから19年しか経っていない彼女の人生だが、その歩みは想像を絶する。
虐待、非行、少年院を乗り越えて、アイドルになった彼女が目指すものとは?

16歳から1年8カ月を少年院で過ごした

4月某日に行われた、ある大学の入学式。新入生のなかにひとり、2年前まで、女子少年院で机に向かっていた女性がいた。

「戦慄かなの」さん。目がひときわ大きく、色が白い。西洋人形のようなその外見から、「女子少年院」という言葉はイメージできないが、16歳から1年8カ月をそこで過ごした。

新入生にとって、大学の入学式は出会いの場でもある。それぞれが新しい友だちを作ろうと言葉を交わす周囲の中で、戦慄さんは静かにその場を離れた。キャンパスライフという言葉で表現される、明るく、健全な雰囲気に、居心地の悪さを感じていたのだ。

「友だちを作るつもりはないし、作れませんから。大学生活を楽しみにしているわけでもないし」

そう話す戦慄さんだが、大学の合格通知を受けたときには、涙を流して喜んだ。やりたかったことに、一歩近づいたからだ。その目標は、戦慄さんの生い立ちに、深くかかわっている。

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  • NO NAME893e87d08f8d
    貧困・非行という問題を乗り越えて大学に入ってアイドル活動をしながら、自分が経験したことから社会的活動に力を入れていく姿勢は応援したいです。
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    2018/5/3 08:03
  • KCd747333bae6d
    虐待の相談先として、電話は確かにハードルが高そう。
    ふつうに相談できそうな学校が受け皿になれるといいかと。先生には分野が違ってわからないことも多いだろうから、ITの教室にあるパソコンから相談できるようにしてあげると良い
    虐待からいじめ、貧困、という負のスパイラルは避けたい
    しかしこの人は強い。
    up53
    down5
    2018/5/3 08:06
  • 松村順8ab931ebec17
    昨日の記事『風俗で18年働く「早稲田卒」41歳母の深い苦悩』
    https://toyokeizai.net/articles/-/218690
    に紹介された人と,この記事に紹介されている戦慄かなのさん,似たような生い立ちに見えるけど,どこで何が違ったのだろう。戦慄かなのさんの場合,自分と真剣に向き合う時間があり,自分と真剣に向き合わせてくれる人と出会えた,ということなのかな。
    up42
    down3
    2018/5/3 08:22
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