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黒田日銀「楽観的な現状維持」にはこんな評価を下すべきだ

デフレ脱却まで「もう一押し」なのに

「出口政策」の封印は正解

4月26、27日の日銀の金融政策決定会合は、新体制に移行してから初の開催ということでメディア等の注目度も高まった。特に、リフレ政策を支持する層は、岩田規久男氏の後を継いだ若田部昌澄副総裁の投票行動に注目していた。

結果としては、大きな波乱はなかった。また、若田部副総裁も一部のリフレ支持者が期待するような反対票を投じることはなく、反対票は従来通り、片岡剛士審議委員の1票だけとなった。

 

このところ、米国長期金利の上昇によって、日本の国債市場も残存期間10年超の国債で金利上昇圧力が高まりつつある。したがって、単純に考えれば、片岡審議委員が提案するように、このタイミングで日銀は10年超の国債を買い増しすることによって、金利上昇を抑制しつつ、マネタリーベースの拡大ペースの回復に努めても特に深刻な副作用はないだろう。

むしろ、労働市場をみれば、2月以降、非労働力人口の減少ペースが加速していることを考えると、問題であった「Discouraged Worker(職探しを放棄してしまっていた無業者)」の労働市場への再参入が加速度的に増加している可能性がある。ここで「もう一押し」すれば、日本経済はデフレを克服できるかもしれないという状況でもある。

また、円安も進行している。現在、ドル円レートは1ドル=109円台半ばで推移している。これは、主に米国のマネタリーベースの鈍化によるところが大きいが、このまま米国のマネタリーベースが減少し続ければ、「リスクオフ局面」への転換に伴う急激な円高が襲いかかる懸念がある。

ここでもし、日本のマネタリーベースの拡大ペースが加速すれば、リスクオフ局面を迎えることなく(もしくはリスクオフになっても)円安局面が続く可能性もある。

以上のように考えれば、このタイミングでの緩和強化は、それが仮に小規模な追加緩和であったとしても、「リフレレジームの再構築」という意味で極めて有効であったかもしれない。

ただし、過去の追加緩和が、デフレ脱却の道筋があやしくなったタイミングで発動されてきた経緯を考えると、景気拡大が続くこの局面での追加緩和は、よほどの「蛮勇」がない限り、現実的には実行不可能であるという見方もできる。したがって、リフレ派的な見方をする場合でも、失望する必要は全くないだろう。

逆に、筆者は、現在の日本経済の状況は、既に2006年、2007年の状況を上回っているのではないかと考えるが、それでも、出口政策の早期実行を主張する「外野」の声には耳を貸さず、日銀が「出口政策」を封印し、現状の緩和を続けることを明言した点はよかったと思う。

なにしろ、2006年には、量的緩和が解除され、超過準備の急激な減少が実現し、その後、利上げによってゼロ金利政策も解除されたのだから。つまり、現体制が旧日銀のままであれば、今頃は出口政策が推し進められていたはずである。そうでないだけでもましであると思われるのである。