マーケティング
2018.04.26
キーエンスのWebマーケティングが凄すぎるので、解説してみた
上場企業の年収ランキングで、常に上位にランクインするキーエンス。同社はセンサーなどの精密機器を販売するメーカーですが
- 直販で売るので利益率が高い
- 付加価値を載せて利益率を更に高くする
- 自社で工場を持たない
というビジネスモデルで年商が4000億、営業利益率が50%以上ある会社です。
キーエンスは営業の強さが有名ですが、B2B企業のWebサイトランキングで常に上位にいることはあまり知られていません。
今回はキーエンスのウェブマーケティングは何が優れているのかを紹介しましょう。
キーエンスのウェブマーケティングは何が凄いのか
キーエンスはなぜWebが強いと言えるのでしょうか?
先に結論をまとめると
- 自社メディアに掲載されるホワイトペーパーの質量
- ホワイトペーパーの生産体制
- 巨大な会員数を誇るメルマガの規模
- メルマガのコンテンツの質が圧倒的に高い
- ウェブ経由のリードをクロージングする営業力
このあたりがとにかく凄いです。
ひとつずつ解説します。
コンスタントに生産される良質なホワイトペーパー
キーエンスはオンラインの集客チャネルの7割が自社メディアです。
また流入キーワードを外部分析ツールでみると、中立情報をまとめた特化型メディアでテールワードを多く集客しているのがわかります。
例
マシニングセンタ 2位
https://www.keyence.co.jp/ss/imagemeasure/processing/cutting/machiningcenter/
多くのコンテンツが掲載される自社メディアですが、検索エンジン経由で圧倒的に集客力があるのが技術資料です。
ダウンロード | 技術資料 | キーエンス
https://www-search.keyence.co.jp/jp/jajp/downloadcon/search.x?mode=tg&ie=utf8
2018年4月時点で1000件以上掲載されていますが、これらは毎月増えています。
※参考:https://www.keyence.co.jp/support/registration/
キーエンスの組織をマーケティング観点で説明すると
- 事業推進部(全社販促)
- 8事業部(販促グループ、営業グループ)
という構造になっており、毎月事業部がお客様からの要望を、販促に上げる義務があります。
その要望のなかから
- 商品化すべきもの
- 技術資料にすべきもの
を事業推進部がジャッジし、技術資料にすべきものは事業部が毎月資料を作るという流れになっています。
事業部は8個あるので、毎月数個のホワイトペーパーがコンスタントに生まれる仕組みになっています。
ホワイトペーパーというとどんなイメージをお持ちでしょうか?
キーエンスが面白いのはホワイトペーパーは
- お客様が知りたいこと
を掲載するスタンスで作っているということ。
例えば
- あるセンサーは、上下どちらに設置した方が誤動作が少ないのか?
- 静電気が発生するメカニズムはどうなっているのか?
といったカタログスペックではない情報を伝える目的になっています。
もちろん技術資料を用意したうえでスペックを伝えるカタログペーパーも用意しています。
https://www-search.keyence.co.jp/jp/jajp/downloadcon/search.x
お客様が知りたい情報を全社でコンスタントに作り続けるというのは簡単に真似できないでしょう。
個別最適化されたメルマガ配信基盤
具体的には話せませんが、キーエンスのメルマガ会員数は相当の規模です。
https://www.keyence.co.jp/support/registration/
週2回
- 共通メルマガ
- パーソナライズメール
が送られてくるのですが、これも凄い。会員のアクティビティデータ(閲覧数、問い合わせ内容、開封率etc)などで、各会員をスコアリングし
- 共通メルマガの順番はスコアリングで並び替え
- パーソナライズメールはスコアリングで個別化
をしているのです。
共通メルマガを見ると、センサーに詳しくない私でも、どのコンテンツも思わずクリックしたくなるような見出しになっていました。
各事業部の営業担当が執筆している
中身を全社販促のメルマガチームがチェックをし、校閲編集をしたうえで配信という流れになっています。
お客様の知りたいことを営業が引き上げコンテンツにして流通させることを組織で徹底的にやっているのがキーエンスの凄まじさです。
ちなみにスコアリングやナーチャリングにMAツールは使っていません。
こういったことを10年以上前からスクラッチのシステムでやっているのです。
キーエンスの方法から何を学ぶべきか?
大事なことはキーエンスのウェブマーケティングから何を学ぶかですが、一体何を真似すべきでしょうか?
実は
- 技術資料を作る
- スコアリングしてメルマガを送る
ことが最優先ではありません。
なぜか?
どちらも非常に大変で真似が難しいというのが身も蓋もない答えです。
ではなにをすべきでしょうか。
キーエンスのマーケティングに非常に詳しい方に、やるべきことを聞くと
- 既存顧客管理
- 営業手法
- 誰が旗を振るのか
これを確認すべきということでした。
よくあるのは既存顧客の情報が、SFAやMAツールに入力されていない、また入力されていても、営業プロセスに落とし込まれてないケース。
2の営業手法にも関連する話ですが、キーエンスは顧客に聞くべきことが定型化されています。
要はお客様にこれを聞ければ
- 売れる
もしくは
- 営業はすべきことはもう無い
というのが決まっているのです。
なので、どのお客様に何をどこまで聞けたのかというプロセスを管理すべきということでした。
この1と2がない状況で、ホワイトペーパー生産やメルマガ活動に勤しんだとしても、穴の空いたバケツ状態で成果が出ません。
そして最も大事なのが、誰が旗を振るのか問題です。
キーエンスの営業の根っこにあるのは定形化です。
仮に、ある組織でエースの営業が8割の受注をとっているといった状態で、この方式をマーケター主導でやろうと思っても、そもそもエースの営業の存在を否定する結果にもなりかねませんのでうまくはいかないでしょう。
経営陣主導で、組織を変えないとキーエンス式のマーケティングはうまくはいかないのです。
キーエンスの凄すぎるマーケティング
キーエンスの営業手法は小手先の話が非常に少なく、簡単に真似ができない分価値があると考えます。
関連書籍などもいくつかあるので
- 営業の生産性を高めたい
- 誰もが売れるような営業組織を作りたい
- エースの営業頼みをなんとかしたい
という課題を持つ経営者の方は読んでみることをおすすめします。
※参考書籍:『誰でも売れる「プロセス思考」営業術』
- 著者/村上 薫
- 匿名SEOコンサルタント
大学在学中、ITベンチャーを起業。自ら経営者として様々なウェブサービスの運営を行いつつ、コンサルタントとして様々なサービスの改善を行ってきた経験を持つ。 このコラムでは経営者としての目線を元に、“実利になるマーケティングとならないマーケティング”というテーマで情報を発信していく。