フランスの南東部に位置するグルノーブル市の中心街では、近年、オレンジと黒のツートンカラーのとある機械が見られるようになった。
置かれている場所は、駅、自治体の建物、地域の美術館などだ。現在のところ、街の中心部の、約18平方kmの範囲に14台が設置されている。
さて、これは何のための機械なのだろう?
上部の3つのボタンからひとつを選んで押すと、レシートのような細長い紙が出てくる。しかし、そこに印刷されているのは数字ではない。文字なのだ。
これは、「短編小説」の自動販売機なのである。モニター上ではなく、昔ながらの、紙に印刷された小説だ。しかも無料である。
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短編小説を自動で提供する機械
この「小説販売機」は、グルノーブルにある「ショートエディション」という会社が開発したものだ。
ある日、コーヒーの自動販売機の前にいた4人の社員が、「こうやって、コーヒーのように(手軽に)、『文化』がどこでも手に入るようにできないか?」と考えたのが開発のきっかけだそうだ。
小説の自動販売機とはいうものの、機械にはお金の投入口はない。小説は無料で提供されるのである。
image credit: Short Edition
どんな小説がでてくるのかはお楽しみ
どのような小説を受け取れるかは選べない。選べるのはおおよその長さだけで、読了にかかる時間の目安として、1分、3分、5分の3種類のボタンがあるだけだ。
しかし、読者はそのようにランダムに選ばれた小説を「自分のために書かれた物語」であるかのように感じることも多く、「自分自身の生活と密接に関係しているように思われる」という感想も寄せられるという。
おみくじと一緒の感覚になるのだろう。偶然に必然を見出すのは人の常だ。
image credit: YouTube
小説のストックは現在10万作品、新作も続々登場
小説のストックは、現時点で10万作品あるそうだ。
また、新しい小説も供給されている。ショートエディション社の開催するコンテストから常に新作が供給されるのだ。
コンテストでは、同社の審査員が注意深く選定した作品、また、オンラインで20万人の読者コミュニティーが投票した作品が賞を得る。
image credit: YouTube
アメリカでも続々と登場
アメリカで最初にこの機械を導入したのは、映画監督であり実業家でもあるフランシス・フォード・コッポラ氏が経営するカフェ・ゾエトロープだ。たくさんの絵が飾られたホールの中央に「小説販売機」がある。お客さんからの評判も上々らしい。
芸術をテーマにおくこのカフェでは、スマートフォンやデジタル機器からしばしの間目を離すよう、お客さんに働きかけている。
子どものためにWi-Fiはないかと聞かれた際には、カフェの支配人は小説販売機を指差し、「Wi-Fiはありませんが、お読みになれる小説がありますよ」と答えるそうだ。
image credit: YouTube
販売機本体は約100万円、月々のコストは約2万円である。
小説販売機が有名になったため、時には、何も注文せず、小説を手に入れるためだけにカフェに入ってくる人もいるらしい。
本来なら失礼とみなされる行動だが、カフェの支配人はこういった行動をも歓迎している。文学の持つ力を通して、新しい顧客になる可能性があるからだ。
「今日は小説を読みたくて来た。今まで一度も来たことがない人が、です。ドアを開けて、この場所を見た。ここを気に入って、また来てくれるでしょう」
Coppola, le parrain du Distributeur d'Histoires Courtes
世界中で広がりを見せる文学の環
2016年秋の発売から1年半ほど経った現在では、世界各国に150台以上が存在する。その大半はフランス国内だが、アメリカにも20~30台、また、カナダ、オーストラリア、香港、ギニアにも設置されている。
image credit: YouTube
ショートエディション社は、様々な地域、文化の中で書かれた小説を翻訳し、世界の各地で読めるようになることを目標に掲げている。
「アジアの作家(による小説)がヨーロッパやアメリカで、アメリカ(合衆国)の作家がアフリカや南アメリカで読まれるようにしたい」と同社の国際ビジネス開発担当者、ギラウト氏はいう。「そのためのプラットフォームを創造したいのです」
日本にも設置されるとうれしいな。トイレ中とか常に活字を読もうとしてしまう活字中毒者にはもってこいかも。文学に触れる機会が増えるのもうれしいね。
References: Atlas Obscura / LITERARY HUB など / written by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
この試みはめっちゃ面白そう、実際に読んでみたいわ
長編小説だったら、冒頭の数ページだけサンプルとして読めれて、本の著者やタイトルも印字されてるから後日改めてその本を図書館とかで探してみるっていう宝探し的な事にも応用できそうだ
2. 匿名処理班
無料なのに自動販売機・・・・なんかもっとこううまく当てはまる名称考えたいな(思いつかない)
3. 匿名処理班
この小説自動販売機そのものが短編小説のなかの存在に思えるほど素敵なアイデアだ
4. 匿名処理班
えー、すっごいレトロなのに画期的で面白い!
これ以上無料で何かを提供するというのも、日本では、やり過ぎなのでは…とも思うんだけど…。
手軽に興味を持てるコンテンツって、有難いですよね。
5. 匿名処理班
いやあ、洒落ていてカッコいいですね
流石は芸術大国というか、日本にもこんなサービスがあればと思ってしまいますよ
6. 匿名処理班
活字離れ対策にもなりそうだな
7. 匿名処理班
文字離れのストッパーになるといいね
8. 匿名処理班
日本でも欲しい。こういうこと考える人が好き。
9.
10.
11. 匿名処理班
これは面白いなぁ。
日本でも、日本文化の一旦として漫画でやればいいのに。
漫画村騒ぎでぎすぎすしてるより、いい加減こういう感心できるニュースをみたいよ。
12. 匿名処理班
いいよねぇコレ。
日本にも登場して欲しい。
13. 匿名処理班
凄くいい試み。
ただ老眼の私には読むの辛そうww
14. 匿名処理班
こういうアイデアが生まれるあたり、さすが芸術の国だなぁ
手軽に楽しめるし興味本位ででも小説を読んだ人が「自分も書いてみたい」と思うきっかけにもなるんじゃないかと思う
ホント日本にも欲しいよ
15. 匿名処理班
待ち合わせとかちょっとした時間に読んだりして楽しめそうだね
これはちょっとした新聞のようなフリーペーパーのようなものだと思うけど
内容はランダムに変わるんだろ?
16. 匿名処理班
生まれて初めてフランス人を羨ましいと思ったかもw
活字中毒者には救世主!
17. 匿名処理班
そのうち「歩きスマホ禁止」ならぬ「歩きショートエディション禁止」になりそうだ。活字中毒の俺は気をつけなきゃ。
18. 匿名処理班
さすがフランス
シャレてるな~
19. 匿名処理班
紙資源の無駄
スマホを使いこなせないのかしら?
20. 匿名処理班
日本でも青空文庫とかとタイアップすれば十分イケそうだよね
21. 匿名処理班
素晴らしいなこれは
22. 匿名処理班
日本だと小説以外にも俳句や川柳のボタンがあると良いかも。
23. 匿名処理班
手軽にSS読めるの良いな。
日本でも始めてくれマジで。
24. 匿名処理班
これは面白いね
長編だとちょっと読む気にならんけど、5~10分で読めるなら読んでみたい。場所も取らないし
25. 匿名処理班
小説好きなので待ち望んでる
ネット上の小説よりもはるかに需要あるし
紙の本に興味持つ人も出てくるじゃないのかな
出版業界もメリットあるしいいものは是非採用してくれ
26. 匿名処理班
へぇ、しゃれてんね。
日本も特に最近は小説を書く人が増えてるし、こういうところで発表できたりすると楽しいな。
27. 匿名処理班
これを元に小説一本かけそうだね
28.
29. 匿名処理班
これ凄いよ!!!
しっかりと吟味された作品が出てくるなら大歓迎。うちの会社に置きたい。
吟味されて無くても、しっかりとした描写があればそれだけでもいい。
ただ起承転結も描写も何もないなろうレベルの小説が出てくるならイラネ。
パテントとかどうなってんだろ?
日本の出版社もこれやればいいのにな。無駄に作家を使い潰して「本が売れない」とか自虐してる場合じゃねーぞ。
30. 匿名処理班
ええなこれ
日本でもやろう
星新一酷使や
31. 匿名処理班
これは素敵な機械
読み終わったあとゴミにならないような工夫があると安心だ
32. 匿名処理班
日本でやるとしたら漫画、小説、歌集、詩集、俳句集かな。有名な作品からマイナーな良作幅広く読みたい。
表は母国語で裏に英語訳だったら外国の方でも読みやすくなるかも。
33. 匿名処理班
ボタン押して出てきた小説を気に入って
その作家さんのほかの小説にも触れたくなるなんて想像すると素敵だなあ
34. 匿名処理班
良いなー日本にも欲しい
高校くらいから短編の方が好きになったからこれは羨ましい
35. 匿名処理班
小説投稿サイトとか、コンテンツたくさんあるんだから何とかできないかな?
QRコードを添付して、人気投票したりとか。
36. 匿名処理班
日本にもあって欲しい飲み物代くらいの値段なら払うから、というか多少でも対価払えた方が気軽にポンポン手に入るより思い入れのあるものになりそう
カフェの支配人のコメントが寛大だなあ、こっちだとそういう人は管理者が許しても周囲の利用者に叩かれそうだ
37. 匿名処理班
トイレットペーパーに印刷したらどうだろう。
38. 匿名処理班
※17
>スマートフォンやデジタル機器からしばしの間目を離すよう、お客さんに働きかけている。
スマホだと長文は読み飛ばしがちっていう高度なギャグですね
39. 匿名処理班
バス停とか駅とかに置いてほしい
置かないかなぁ
40. 匿名処理班
粋な試みだねえ
日本にも早く来ないかな
個人的には五円玉くらい投入したい
小説版ミュージックボックスみたいに
実際はいろいろ費用もかかるだろうし
なにより御縁がありました、なんて
41. 匿名処理班
久しぶりにいい記事をみた
42.
43. 匿名処理班
欲しい!
更に集めた短編の紙をまとめられる、
お洒落な専用バインダーとかあったら
尚良いな。レシートみたいだから、伝票挟むヤツ位の大きさで、もちろんこちらはお金を払って購入って事で(  ̄▽ ̄)
44. 匿名処理班
ちゃんとクオリティの高いものだしてくれる保証があるからいいね
素人投稿サイトだと質にバラつきが出るから全然同じではないよ
トイレットペーパーにされると待ってる人困っちゃうからダメww
45. 匿名処理班
これいいなー
おみくじみたいな形式でも面白いかも
46. 匿名処理班
※32
裏に英語とか外国語があれば、語学の勉強(教材)にもいいかもね!
47. 匿名処理班
こういうアイデアとそれを実行する行動力が大好物。思いつくだけなら誰でもできるけど実行となるとね~