【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)統計局が2日発表した2018年1~3月期のユーロ圏の域内総生産(GDP)の速報値は、物価の影響を除いた実質で前期比0.4%増えた。EU統計局によると、年率換算の成長率は前期比1.7%。17年10~12月期(同2.7%)から伸び率が大きく鈍化した。2%台を割り込むのは16年7~9月期以来で、6四半期ぶり。
市場の事前予想にほぼ沿った内容となった。ユーロ圏のプラス成長は13年4~6月期以降、20四半期(5年)連続。成長ペースは鈍化したものの、1%程度とされる潜在成長率はなお上回っており、緩やかな回復基調は保っている。
伸び率が大きく鈍った主因とみられるのが、1~3月にかけて欧州をたびたび襲った大寒波だ。イタリアのローマは6年ぶりの大雪に見舞われ、例年ならば冬でも温暖な南仏など地中海に面したビーチも雪に覆われた。
雪が積もった道路や空港の閉鎖が欧州各地で相次ぐなど混乱が広がり、域内の物流などにも大きな影響を与えた。消費者が外出を控え、域内の個人消費が抑えられたとの見方もある。
今後の欧州景気の焦点は、1~3月期の成長率の鈍化が寒波など季節要因に伴う一時的な景気の踊り場にすぎないのか、それとも本格的な減速につながるかだ。
懸念材料は年明け以降、減速が鮮明な域内の製造業の動向だ。英IHSマークイットが2日発表した4月のユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)は56.2となり、4カ月連続で前月を下回った。約1年ぶりの低水準で、ユーロ圏の製造業の勢いが鈍っている可能性を示す。同指数は12月に過去最高水準(60.6)を記録した後、減速基調に転じた。
1~3月に相次いだ寒波の影響が消えたはずの4月も同指数が低調にとどまった背景には、ユーロ高による輸出の押し下げが製造業の活動を抑え始めた可能性もある。5月以降、製造業の減速ペースに歯止めがかかるかが、ユーロ圏景気の先行きを見極める注目点となりそうだ。
米国との鉄鋼・アルミの輸入制限を巡る協議も先行きの懸念材料だ。トランプ米政権は4月30日、5月1日までとしていた輸入制限の発動の猶予期間を1カ月延長した。
輸入制限をちらつかせながら鉄鋼などの対米輸出削減を迫る米国に対し、EU側は「脅威の下での交渉には応じない」(欧州委員会)方針。米国が輸入制限を発動すれば対抗措置も辞さない構えで、制裁合戦がエスカレートして米欧間の「貿易戦争」に発展する懸念もある。そうなれば企業心理の悪化や投資抑制を通じ、ユーロ圏の景気に急ブレーキをかけるリスクがある。