POPなポイントを3行で
- ニコニコ超会議「超音楽祭」キズナアイをレポート
- 金曜日のおはよう、メルトなどを熱唱、小林幸子とコラボも
- トリをつとめた理由を考える
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実際の来場者、生放送での来場者共に増加し、大盛況のまま幕を閉じた「ニコニコ超会議2018」。
数字にも盛り上がりが表れているが、ニコニコ運営責任者にしてドワンゴ取締役である栗田穣崇氏も「今年の超会議は何か変わった」と振り返っている。 灼熱の幕張、今年の超会議にはこれまでにはない熱い変化があった。その中でも一際大きなものがバーチャルYouTuberの本格参戦だ。
昨日のレポートにもあげた「超バーチャルYouTu"BAR"」のようなバーチャルYouTuberをメインにしたブースがあっただけでなく、ゲーム実況のステージにも登場したりと様々なキャラクターが個性を活かした活躍を見せていた。 そして2日間に渡る華々しいバーチャルYouTuberの活躍を締めくくるように、満を持して最後に登場したのがそのトップランナー、キズナアイちゃんだ。
取材・文:オグマフミヤ 編集:ふじきりょうすけ
バーチャルYouTuberとして動画でも「歌ってみた」を投稿しているが、歌って踊るアーティストとしてライブを行うことは初めてとなるアイちゃんが、一体どのようなステージを見せてくれるのか。
出演順は事前に明らかにされておらず、筆者はただ最終日の後半に出るとだけアナウンスされていたアイちゃんの登場を待ち望みながらステージは進んだ。
終盤、残るアーティストは2人。「ラスボス」の異名で愛されている歌手の小林幸子とバーチャルYouTuberのキズナアイ。
百戦錬磨の本格歌手と初ライブのバーチャルキャラクター。どちらをクライマックスに持ってくるかと言えば、順当にいけば前者だろう。しかし、先に登場したのは小林幸子だった。
ニコニコ動画はアーティスト・キズナアイの初ステージにヘッドライナーという大舞台を選んだのだ。
これ以上ないポジションであるトリを任されたということは何か特別なことがあるのではないか。
より具体的に言えば、(結果的にそうはならなかったが)アイちゃんがアーティストとしてデビューすることが発表されてしばらく経ったが、そのオリジナル曲の初披露となるのではないか……。
様々な考えがよぎり、初ライブがそれ以上に歴史的なものになるのではないかという期待を膨らませているとその瞬間は訪れた。
「はいどーもー! バーチャルYouTuberのキズナアイです!」
いつもの挨拶でステージに上がると会場のテンションは一気に最高潮へ。その勢いのまま1曲目、Honey Works「金曜日のおはよう」を披露。Honey Works「金曜日のおはよう」
ニコニコ動画のメインコンテンツ「歌ってみた」を代表する曲の1つである色彩豊かなアッパーチューンを元気に可愛く歌い上げ、会場をキラキラに染め上げていく。
アイちゃんの煌めきに呼応するようにフロアもかつてない一体感を見せ、これがアーティストとしての初ステージとは思えないほどに会場のボルテージが上がっていった。
初にして圧巻のステージングを見せたかと思えば、MCではやってみたかったというコール&レスポンスに挑戦すると少し上手くいかず、いつものアイちゃん具合も感じられた。
そうしてクールダウンしたかに思われたが次の曲がコールされると会場は更なる熱狂を巻き起こす。ryo (supercell) × やなぎなぎ メルト 10th ANNIVERSARY MIX
「メルト」だ。
ボーカロイド・初音ミクを象徴するといっても過言ではないこの曲を、その生誕の地、ニコニコ動画のイベントでバーチャルYouTuberが歌う。
この歴史的な瞬間を目の前にして先ほどまでの盛況を過去にする勢いでフロアに火がついていく。
あの印象的なイントロが流れてから私の心は震えっぱなしだった。
「メルト」を初めて聴いた時の感動がアイちゃんを通じて再構築され、懐かしいはずの曲が感じたことのない衝撃を発し続けている。そんな風にどうレポートに書き起こそうかと考えていた言葉もサビに入ると全て吹き飛んだ。天高く突き上げた右手は震え、声にならない雄叫びは奇跡の中にいる幸福感とともにフロアに溶けていった。
切なくも情熱的な恋心を歌だけでなく、表情でも魅せる。バーチャルYouTuberという新たな存在が「メルト」を更なる次元へ昇華させていた。
熱狂は覚めやらないが、次で最後の曲となることを伝えるとスペシャルゲストとして小林幸子を呼び込む。
自身のステージの際の衣装とはうってかわって「ラスボス」の名に相応しいきらびやかな衣装で登場した小林幸子と微笑ましいやりとりを交わすと、最後はコラボレーションでの「千本桜」でフィナーレを飾る。
アイちゃんも小林幸子と合わせるにあたってこぶしをきかせた歌声を披露。
歌い手としてのレベルの高さをうかがわせたかと思えば、小林幸子が歌う横で体をめいっぱい伸ばしてオタ芸をうっているというこれまで磨きあげたエンターテイナーとしての技を惜しげもなく見せつける。
バーチャルYouTuberと歌手のコラボレーションは想定以上の相乗効果を生み、「超音楽祭」のグランドフィナーレを華々しく彩った。【キズナアイ×小林幸子】千本桜 歌ってみた【バーチャルコラボ】
歌い終えた後に小林幸子のYouTubeチャンネルの開設と今披露したコラボレーションVerの「千本桜」の公開がアナウンスされ、2人でステージを去った。
しかしバーチャルYouTuberの出現が、ニコニコ動画にも大きな影響を及ぼした。
本家であるバーチャルYouTuberの活動場所はYouTubeが主であることには変わりないが、その二次創作はどこよりニコニコ動画が中心となって盛り上がっている。
月ノ美兎のように、ニコニコ動画での二次創作的盛り上がりを自身の躍進の要因と分析するバーチャルYouTuberもいるように、お互いの親和性の高さは相互に作用し、今日の大ブームを引き起こしている。 バーチャル"YouTuber"の「ニコニコ超会議」への出演には懐疑的な反応があったことも確かだ。
「歌ってみた」に代表される個人によるクリエイティブの場として発展を遂げてきたニコニコ動画にとって、外とも言えるYouTubeを主として活動しているバーチャルYouTuberは受け入れ難いというの理解できない話ではない。
また「ボーカロイド」は現在も単独で巨大ブースを設けているし、コスプレイヤーも数多く見られるのに、それを押し退けてよそが発祥のバーチャルキャラクターを推していくというのは、ファンとしては寂しいだろう。だが、それが常に先進的な取組を続けてきた「ニコニコ超会議」の進化と言えないこともない。
今回のニコニコ超会議×バーチャルYouTuberはここまでの発展の文脈を無視したものではなかった。
以前より「オワコン論」がささやかれはじめていたニコニコ動画。バーチャルYouTuberという新時代のエンターテイメントの隆盛はその流れにトドメを刺すものになるかと思われたが、そうはならなかった。
バーチャルYouTuberはただ先進的なものを取り扱ったムーブメントではなく、ニコニコ動画の文化である個人によるクリエイティブの文脈を辿るものだったのだ。
あらゆる文化を取り込み、歪に見えつつも多彩で、そして自由なエンターテイメントとして進化してきたニコニコ動画。その魂はバーチャルYouTuberに確実に受け継がれていた。
キズナアイが歌い上げた「メルト」はそんな先人達へのリスペクトに満ち、文化の結実として新たな時代のエンターテイメントを創出していた。
アイちゃんのステージを含め、「ニコニコ超会議」におけるバーチャルYouTuberの活躍は、これまでのニコニコ動画文化にこだわる余り、新しいものの参入を拒んでしまう呪いのような疑念を振り払うのに十分なものだった。
もちろん賛否多くの反響があることだろう。表面的には盛り上がったように見えても、未来から振り返った時にこれが終わりの始まりだったと言われることとなるかもしれない。
それでも「ニコニコ超会議」がバーチャルYouTuberをフィーチャーし、キズナアイにヘッドライナーを託したのは、変わらずに変わり続けてきたニコニコ動画としての挑戦であり、受け継がれるその魂が切り開く、未来へ捧げる祈りだったのだ。
数字にも盛り上がりが表れているが、ニコニコ運営責任者にしてドワンゴ取締役である栗田穣崇氏も「今年の超会議は何か変わった」と振り返っている。 灼熱の幕張、今年の超会議にはこれまでにはない熱い変化があった。その中でも一際大きなものがバーチャルYouTuberの本格参戦だ。
昨日のレポートにもあげた「超バーチャルYouTu"BAR"」のようなバーチャルYouTuberをメインにしたブースがあっただけでなく、ゲーム実況のステージにも登場したりと様々なキャラクターが個性を活かした活躍を見せていた。 そして2日間に渡る華々しいバーチャルYouTuberの活躍を締めくくるように、満を持して最後に登場したのがそのトップランナー、キズナアイちゃんだ。
取材・文:オグマフミヤ 編集:ふじきりょうすけ
「歌ってみた」のその向こう
各ジャンルのアーティストがライブを行う「超音楽祭2018」。その出演者の中に「キズナアイ」がラインナップされると、大きな反響を呼んだ。バーチャルYouTuberとして動画でも「歌ってみた」を投稿しているが、歌って踊るアーティストとしてライブを行うことは初めてとなるアイちゃんが、一体どのようなステージを見せてくれるのか。
出演順は事前に明らかにされておらず、筆者はただ最終日の後半に出るとだけアナウンスされていたアイちゃんの登場を待ち望みながらステージは進んだ。
終盤、残るアーティストは2人。「ラスボス」の異名で愛されている歌手の小林幸子とバーチャルYouTuberのキズナアイ。
百戦錬磨の本格歌手と初ライブのバーチャルキャラクター。どちらをクライマックスに持ってくるかと言えば、順当にいけば前者だろう。しかし、先に登場したのは小林幸子だった。
これ以上ないポジションであるトリを任されたということは何か特別なことがあるのではないか。
より具体的に言えば、(結果的にそうはならなかったが)アイちゃんがアーティストとしてデビューすることが発表されてしばらく経ったが、そのオリジナル曲の初披露となるのではないか……。
様々な考えがよぎり、初ライブがそれ以上に歴史的なものになるのではないかという期待を膨らませているとその瞬間は訪れた。
トリに登場したキズナアイ
いつもの挨拶でステージに上がると会場のテンションは一気に最高潮へ。その勢いのまま1曲目、Honey Works「金曜日のおはよう」を披露。
アイちゃんの煌めきに呼応するようにフロアもかつてない一体感を見せ、これがアーティストとしての初ステージとは思えないほどに会場のボルテージが上がっていった。
初にして圧巻のステージングを見せたかと思えば、MCではやってみたかったというコール&レスポンスに挑戦すると少し上手くいかず、いつものアイちゃん具合も感じられた。
そうしてクールダウンしたかに思われたが次の曲がコールされると会場は更なる熱狂を巻き起こす。
ボーカロイド・初音ミクを象徴するといっても過言ではないこの曲を、その生誕の地、ニコニコ動画のイベントでバーチャルYouTuberが歌う。
この歴史的な瞬間を目の前にして先ほどまでの盛況を過去にする勢いでフロアに火がついていく。
あの印象的なイントロが流れてから私の心は震えっぱなしだった。
切なくも情熱的な恋心を歌だけでなく、表情でも魅せる。バーチャルYouTuberという新たな存在が「メルト」を更なる次元へ昇華させていた。
熱狂は覚めやらないが、次で最後の曲となることを伝えるとスペシャルゲストとして小林幸子を呼び込む。
自身のステージの際の衣装とはうってかわって「ラスボス」の名に相応しいきらびやかな衣装で登場した小林幸子と微笑ましいやりとりを交わすと、最後はコラボレーションでの「千本桜」でフィナーレを飾る。
歌い手としてのレベルの高さをうかがわせたかと思えば、小林幸子が歌う横で体をめいっぱい伸ばしてオタ芸をうっているというこれまで磨きあげたエンターテイナーとしての技を惜しげもなく見せつける。
バーチャルYouTuberと歌手のコラボレーションは想定以上の相乗効果を生み、「超音楽祭」のグランドフィナーレを華々しく彩った。
バーチャル"YouTuber"はニコニコになにをもたらしたのか
「歌ってみた」「踊ってみた」に代表されるようなクリエイティブは元々はニコニコ動画を発祥とするものだ。しかしYouTubeの台頭により、そうしたものはフィールドを移し、冒頭でも述べた通り運営も自覚するようなレベルでニコニコ動画の勢いは減退しているように思われた。しかしバーチャルYouTuberの出現が、ニコニコ動画にも大きな影響を及ぼした。
本家であるバーチャルYouTuberの活動場所はYouTubeが主であることには変わりないが、その二次創作はどこよりニコニコ動画が中心となって盛り上がっている。
月ノ美兎のように、ニコニコ動画での二次創作的盛り上がりを自身の躍進の要因と分析するバーチャルYouTuberもいるように、お互いの親和性の高さは相互に作用し、今日の大ブームを引き起こしている。 バーチャル"YouTuber"の「ニコニコ超会議」への出演には懐疑的な反応があったことも確かだ。
「歌ってみた」に代表される個人によるクリエイティブの場として発展を遂げてきたニコニコ動画にとって、外とも言えるYouTubeを主として活動しているバーチャルYouTuberは受け入れ難いというの理解できない話ではない。
また「ボーカロイド」は現在も単独で巨大ブースを設けているし、コスプレイヤーも数多く見られるのに、それを押し退けてよそが発祥のバーチャルキャラクターを推していくというのは、ファンとしては寂しいだろう。だが、それが常に先進的な取組を続けてきた「ニコニコ超会議」の進化と言えないこともない。
以前より「オワコン論」がささやかれはじめていたニコニコ動画。バーチャルYouTuberという新時代のエンターテイメントの隆盛はその流れにトドメを刺すものになるかと思われたが、そうはならなかった。
バーチャルYouTuberはただ先進的なものを取り扱ったムーブメントではなく、ニコニコ動画の文化である個人によるクリエイティブの文脈を辿るものだったのだ。
あらゆる文化を取り込み、歪に見えつつも多彩で、そして自由なエンターテイメントとして進化してきたニコニコ動画。その魂はバーチャルYouTuberに確実に受け継がれていた。
アイちゃんのステージを含め、「ニコニコ超会議」におけるバーチャルYouTuberの活躍は、これまでのニコニコ動画文化にこだわる余り、新しいものの参入を拒んでしまう呪いのような疑念を振り払うのに十分なものだった。
もちろん賛否多くの反響があることだろう。表面的には盛り上がったように見えても、未来から振り返った時にこれが終わりの始まりだったと言われることとなるかもしれない。
それでも「ニコニコ超会議」がバーチャルYouTuberをフィーチャーし、キズナアイにヘッドライナーを託したのは、変わらずに変わり続けてきたニコニコ動画としての挑戦であり、受け継がれるその魂が切り開く、未来へ捧げる祈りだったのだ。
超会議を振り返ろう
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