今年3月から発端となる事件が勃発し、一カ月足らずで10~20人のクリエイターが炎上、そのうちの何人もが謝罪に追い込まれるという、あらゆる方向に向かって憎悪をまき散らすシャレにならない大騒ぎになっている。
しかもいまだに延焼が続いており、4月29日には韓国版アズールレーンのイラストを描いていた女性絵師が炎上し、日本語で運営側の不当な対応を告発したことで、日本でも注目され始めた。
まず韓国社会におけるフェミニズムの問題を理解するには、以下の論文が有益だ。
李聖娥「フェミニズムは誰のもの? -女性嫌悪発言から見る現代韓国社会-」『早稲田社会科学総合研究. 別冊, 2015年度学生論文集』(2016)
この李論文によると、2015年頃から急速に韓国でミソジ二ーVSミサンドリ―という構図が生まれ、対立が激化しているという。
この年、韓国では女性たちによる権利拡大が主張され始め、フェミニズムブームが起こった。
2015年5月に誕生したインターネットコミュニティ「メガリア」はその中でも特に過激な集団で、これまで女性たちがミソジ二ーたちから受けてきた憎悪を逆転させて仕返しするという「ミラーリング戦略」が猛威を振るったようだ。韓国人男のちんこは世界一小さいといった誹謗中傷や、極端な例では、男子風呂の無修正盗撮動画をネットに放流するなど、犯罪まがいの男性憎悪も行われた。
李論文では、この急進的な現象を韓国社会がこれまで女性を抑圧してきた反動と説明している。典型的な家父長制社会、女性は専業主婦、男性は兵役というステレオタイプ等々。
そして、具体的には、「メガリア」が韓国ネット上におけるミソジ二ーの急先鋒だった保守系ネタ専門掲示板「イルベ」を仮想敵として発足したという。
かくしてミソジ二ーとミサンドリ―、両過激派同士の容赦ない殴り合いが始まった。
特にメガリアによる活動はネット社会での風当たりが強く、メガリア=反社会的集団という認識が広まり、さらにはフェミニスト=メガリアというレッテル貼り、揚げ足取りの機能を果たしてしまっているらしいが、部外者である我々日本人には区別がつきにくいのが実情だ(日本でもまなざし村がネットで疎まれているが、メガリアには実社会での行動力がある分、その比ではないようだ)。
一方で、メガリアが発足当初は各種フェミニズム団体や政治家、文化人たちから支持されていたこともまた事実だ。
ともかく、ネット上ではメガリアを筆頭にフェミニズムへの不信感が根強くあり、それがアンチ・フェミニズムの動向になっている。
李論文では、アジア金融危機以降蔓延している高学歴ワープアを背景にした若年層男性たちの不満が背景にあると見ている。
確かに、大卒でも満足のいく社会的地位を得られず、それなのにミサンドリストに憎悪される男たちが何かの拍子にプッツンしてしまっても不思議ではないだろう。
しかも、韓国ではただでさえオタク差別が強くあり、トラウマになっているらしい(日本でも宮崎勤事件を発端にしたオタク叩きの時代があったので、そこらへんはイメージしやすいかもしれない)。
現在では、メガリアのサイトは閉鎖されており、離脱した過激派がウォーマドというサイトを新たに立ち上げている。
しかし、メガリアという呼称が普及しすぎたため、今でも使われている。サイトが消滅したおかげで定義が曖昧になり、フェミ叩きの便利用語になってしまったという見方もできる。
例えば、5chのなんjが消滅したとして、少しでもなんj語を使ったり、そんな雰囲気をまとっていたら、お前なんj民だろというレッテル貼りをされてしまうといった具合だ。
それだけでなく、それまでメガリアがやってきた悪行や過激派のウォーマドと紐づけされて叩かれてしまうわけだ。
そのため、むやみに相手をメガルア認定したために、逆に侮辱罪に問われてしまうという事件も起きている。
2016年7月には、Nexonが提供するゲーム「Clousers」の声優がフェミニズム運動への支持を表明したこと(メガリアの「女の子たちに王子様は要らない」というスローガンが印刷されたTシャツをSNSに投稿)が原因で、声優を擁護するクリエイターVSそれに反発する消費者(この場合男性オタクたち)の大戦争が起こった。
以下の韓国wikiサイトmamuをGoogle翻訳に掛けてみればその泥沼具合がよくわかる。この大戦がメガリア支持を表明した作家たちへのバッシング、作家による過去の性犯罪告発、各種フェミ団体の参入、そして政党まで巻き込む騒動になった。これを地獄と言わずになんというべきか。
結果は、おおよそ男性オタク側の勝利で終わったようだ。まぁ彼らのゲリラ戦術が優位だったのは容易に想像がつく。
騒動によって全体の3割のユーザーを失ったゲームもあり、彼らの脅しにはそれなりの実力があることが証明されている。
そして、本題の今年の3月から勃発している一連の騒動は、以下のnamuの記事を見ればおおよそ理解できる。
この記事によれば、先の第一次大戦よりも今回のほうが規模が大きいという。どんだけ~(CV:イッコ―)。
概要を説明しよう。発端は、3月21日に中国の会社が提供するゲーム「少女前線」で女性絵師RODが描いたキャラが発表されたこと。
RODは、Twitterでミサンドリ―的な内容のツイート(韓国人男性を虫と読んで嘲笑する内容など)をRTしていたことが問題視され、炎上してしまった。
そこでキャラクターイラストの公開は中止。RODは釈明を試みるも効果はなく、ツイ垢とpixiv垢を削除し、後に新たなツイ垢を作成したようだ。
以下の報道でも触れられている。
http://www.afpbb.com/articles/-/3173082
この記事によるとゲーム業界のユーザーの4割以上が女性だという。男性と女性との間の分断が進んでいるという構図が見えてくる。
そして、予想されていたことだが、この事件に対して女性弾圧だとするフェミニストたちが声を上げ、男性オタクたちとの対立が過激化している。ここにミソジ二ーVSミサンドリ―の構図が再び出来上がったのだ。
炎上の震源地となっている韓国の大型掲示板「DC inside」(日本でいう5ch)では、Twitterでのいいねが相手の思想に対する賛同を意味するという論理(正直かなり無理やり感があるが)によって、他のクリエイターがメガリア的な思想の人間のツイート(内容はどうでもいいらしい)をいいねしていないか、あら探しが始まる(これが魔女狩りと揶揄されている)。
その網に引っ掛かってしまった内の一人が女性絵師Nardack、今回の韓国版アズレン騒動というわけだ。
Nardackは、RODのツイート(内容はフェミと全く関係なし)をいいねしていたこと、RODを擁護しフェミ狩りを批判した団体のツイをRTしていたこと、過去に「相手をメガル(メガリアの住民)呼ばわりしたことが侮辱罪に問われた事件」に言及し、メガルというレッテル貼りは不当な女性差別だとツイートしていたことなどを理由に炎上してしまったという経緯らしい。
騒動は現在でも燃え広がっており、いつ鎮火するのかまったく見通しが立たない状況だが、驚くべきことに韓国人の間ではこれからが本番だろうという見方がされている。
最終的には、業界全体で女性クリエイターの雇用が減るのではないかという危惧まであるようだ。
4.どうかしてるんじゃね~のぉ?(迫真)
一連の騒動に対しての私の見解はと言うと、正直韓国の男性オタクたちのやり方には賛同を示しづらい。
先にあげた
を読むと、それは難癖なんじゃないのか?という部分もかなりあり、全部が全部支持できるわけではない、という気分にさせられる。
日本では、彼等のどちらを支持するか、という以前に、まず韓国の状況にドン引きしてしまってそれどころの話ではないという人がほとんどだろう。私もそうだ。
もちろん、ミサンドリーは決して容認してはならないものだし、最初に炎上した絵師RODが男性相手の商売をしておいて男性叩きのRTをしていたのは理屈がおかしいことくらい理解できる。
しかし、それでも、とことん相手が潰れるまで殴りまくるのが韓国でのオタクしぐさなのか?ひどいな、という感想を抱かずにはいられない。
オタク男子たちがイニシアチブを握って他のクリエイターまで巻き込んで私刑にし、企業が彼等のご機嫌を伺わなければいけないという状況は、どうみても異常だ。
乙 これが全面的に正しいかはわからんけどよくまとめてくれた
韓国オタクたちが受けている差別も相当のようで、「オタクというだけで叩かれる」「日本のアニメを見てたら日本びいきと叩かれる」「表現規制があほみたいに厳しい」「メガリアが...
ブコメの指摘サンクス 訂正したよ