2018-05-02

今、韓国サブカル界隈でミソジニーVSミサンドリ―の大戦争が勃発している。

今年3月から発端となる事件が勃発し、一カ月足らずで1020人のクリエイター炎上、そのうちの何人もが謝罪に追い込まれるという、あらゆる方向に向かって憎悪をまき散らすシャレにならない大騒ぎになっている。

しかもいまだに延焼が続いており、4月29日には韓国版アズールレーンイラストを描いていた女性絵師炎上し、日本語運営側の不当な対応告発したことで、日本でも注目され始めた。

以下、時系列に沿って、説明を試みたい。

 

1.韓国フェミニズム特殊性

まず韓国社会におけるフェミニズム問題理解するには、以下の論文有益だ。

李聖娥「フェミニズムは誰のもの? -女性嫌悪発言から見る現代韓国社会-」『早稲田社会科学総合研究. 別冊, 2015年度学生論文集』(2016)

https://waseda.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=15023&item_no=1&page_id=13&block_id=21

 

この李論文によると、2015年頃から急速に韓国でミソジ二ーVSミサンドリ―という構図が生まれ対立が激化しているという。

この年、韓国では女性たちによる権利拡大が主張され始め、フェミニズムブームが起こった。

2015年5月誕生したインターネットコミュニティメガリア」はその中でも特に過激集団で、これまで女性たちがミソジ二ーたちから受けてきた憎悪を逆転させて仕返しするという「ミラーリング戦略」が猛威を振るったようだ。韓国人男のちんこ世界一小さいといった誹謗中傷や、極端な例では、男子風呂無修正盗撮動画ネットに放流するなど、犯罪まがいの男性憎悪も行われた。

論文では、この急進的な現象韓国社会がこれまで女性を抑圧してきた反動説明している。典型的な家父長制社会女性専業主婦男性兵役というステレオタイプ等々。

そして、具体的には、「メガリア」が韓国ネット上におけるミソジ二ーの急先鋒だった保守系ネタ専門掲示板イルベ」を仮想敵として発足したという。

かくしてミソジ二ーとミサンドリ―、両過激派同士の容赦ない殴り合いが始まった。

特にメガリアによる活動ネット社会での風当たりが強く、メガリア=反社会的集団という認識が広まりさらにはフェミニストメガリアというレッテル貼り揚げ足取り機能果たしてしまっているらしいが、部外者である我々日本人には区別がつきにくいのが実情だ(日本でもまなざし村ネットで疎まれているが、メガリアには実社会での行動力がある分、その比ではないようだ)。

一方で、メガリアが発足当初は各種フェミニズム団体政治家文化人たちから支持されていたこともまた事実だ。

 

ともかく、ネット上ではメガリアを筆頭にフェミニズムへの不信感が根強くあり、それがアンチフェミニズムの動向になっている。

論文では、アジア金融危機以降蔓延している高学歴ワープアを背景にした若年層男性たちの不満が背景にあると見ている。

かに大卒でも満足のいく社会的地位を得られず、それなのにミサンドリストに憎悪される男たちが何かの拍子にプッツンしてしまっても不思議ではないだろう。

しかも、韓国ではただでさえオタク差別が強くあり、トラウマになっているらしい(日本でも宮崎勤事件を発端にしたオタク叩きの時代があったので、そこらへんはイメージやすいかもしれない)。

 

現在では、メガリアのサイトは閉鎖されており、離脱した過激派がウォーマドというサイトを新たに立ち上げている。

しかし、メガリアという呼称が普及しすぎたため、今でも使われている。サイト消滅したおかげで定義曖昧になり、フェミ叩きの便利用語になってしまったという見方もできる。

例えば、5chのなんjが消滅したとして、少しでもなんj語を使ったり、そんな雰囲気をまとっていたら、お前なんj民だろというレッテル貼りをされてしまうといった具合だ。

それだけでなく、それまでメガリアがやってきた悪行や過激派のウォーマドと紐づけされて叩かれてしまうわけだ。

そのため、むやみに相手メガルア認定したために、逆に侮辱罪に問われてしまうという事件も起きている。

 

2.第一韓国サブカル大戦

2016年7月には、Nexon提供するゲーム「Clousers」の声優フェミニズム運動への支持を表明したことメガリアの「女の子たちに王子様は要らない」というスローガン印刷されたTシャツSNS投稿)が原因で、声優擁護するクリエイターVSそれに反発する消費者(この場合男性オタクたち)の大戦争が起こった。

以下の韓国wikiサイトmamuをGoogle翻訳に掛けてみればその泥沼具合がよくわかる。この大戦メガリア支持を表明した作家たちへのバッシング作家による過去性犯罪告発、各種フェミ団体の参入、そして政党まで巻き込む騒動になった。これを地獄と言わずになんというべきか。

https://namu.wiki/w/%ED%81%B4%EB%A1%9C%EC%A0%80%EC%8A%A4%20%ED%8B%B0%EB%82%98%20%EC%84%B1%EC%9A%B0%20%EA%B5%90%EC%B2%B4%20%EB%85%BC%EB%9E%80#s-2.3

結果は、おおよそ男性オタク側の勝利で終わったようだ。まぁ彼らのゲリラ戦術が優位だったのは容易に想像がつく。

騒動によって全体の3割のユーザーを失ったゲームもあり、彼らの脅しにはそれなりの実力があることが証明されている。

 

3.第二次韓国サブカル大戦

そして、本題の今年の3月から勃発している一連の騒動は、以下のnamuの記事を見ればおおよそ理解できる。

https://namu.wiki/w/%EC%86%8C%EB%85%80%EC%A0%84%EC%84%A0%20K7%20%EC%97%85%EB%8D%B0%EC%9D%B4%ED%8A%B8%20%EC%97%B0%EA%B8%B0%20%EB%85%BC%EB%9E%80

この記事によれば、先の第一大戦よりも今回のほうが規模が大きいという。どんだけ~CV:イッコ―)。

概要説明しよう。発端は、3月21日に中国会社提供するゲーム少女前線」で女性絵師RODが描いたキャラが発表されたこと。

RODは、Twitterミサンドリ―的な内容のツイート韓国男性を虫と読んで嘲笑する内容など)をRTしていたことが問題視され、炎上してしまった。

そこでキャラクターイラストの公開は中止。RODは釈明を試みるも効果はなく、ツイ垢pixiv垢を削除し、後に新たなツイ垢作成したようだ。

以下の報道でも触れられている。

http://www.afpbb.com/articles/-/3173082

この記事によるとゲーム業界ユーザーの4割以上が女性だという。男性女性との間の分断が進んでいるという構図が見えてくる。

 

そして、予想されていたことだが、この事件に対して女性弾圧だとするフェミニストたちが声を上げ、男性オタクたちとの対立過激化している。ここにミソジ二ーVSミサンドリ―の構図が再び出来上がったのだ。

炎上震源地となっている韓国の大型掲示板DC inside」(日本でいう5ch)では、Twitterでのいいね相手思想に対する賛同意味するという論理(正直かなり無理やり感があるが)によって、他のクリエイターメガリア的な思想人間ツイート(内容はどうでもいいらしい)をいいねしていないか、あら探しが始まる(これが魔女狩り揶揄されている)。

 

その網に引っ掛かってしまった内の一人が女性絵師Nardack、今回の韓国版アズレン騒動というわけだ。

Nardackは、RODのツイート(内容はフェミと全く関係なし)をいいねしていたこと、RODを擁護フェミ狩りを批判した団体のツイをRTしていたこと、過去に「相手メガル(メガリアの住民)呼ばわりしたこと侮辱罪に問われた事件」に言及し、メガルというレッテル貼りは不当な女性差別だとツイートしていたことなどを理由炎上してしまったという経緯らしい。

https://namu.wiki/w/Nardack

 

騒動現在でも燃え広がっており、いつ鎮火するのかまったく見通しが立たない状況だが、驚くべきことに韓国人の間ではこれからが本番だろうという見方がされている。

最終的には、業界全体で女性クリエイター雇用が減るのではないかという危惧であるようだ。

 

4.どうかしてるんじゃね~のぉ?(迫真

一連の騒動に対しての私の見解はと言うと、正直韓国男性オタクたちのやり方には賛同を示しづらい。

先にあげた

https://namu.wiki/w/%EC%86%8C%EB%85%80%EC%A0%84%EC%84%A0%20K7%20%EC%97%85%EB%8D%B0%EC%9D%B4%ED%8A%B8%20%EC%97%B0%EA%B8%B0%20%EB%85%BC%EB%9E%80

を読むと、それは難癖なんじゃないのか?という部分もかなりあり、全部が全部支持できるわけではない、という気分にさせられる。

 

日本では、彼等のどちらを支持するか、という以前に、まず韓国の状況にドン引きしてしまってそれどころの話ではないという人がほとんどだろう。私もそうだ。

もちろん、ミサンドリーは決して容認してはならないものだし、最初炎上した絵師RODが男性相手商売をしておいて男性叩きのRTをしていたのは理屈おかしいことくらい理解できる。

しかし、それでも、とことん相手が潰れるまで殴りまくるのが韓国でのオタクしぐさなのか?ひどいな、という感想を抱かずにはいられない。

オタク男子たちがイニシアチブを握って他のクリエイターまで巻き込んで私刑にし、企業が彼等のご機嫌を伺わなければいけないという状況は、どうみても異常だ。

  • anond:20180502015101

    乙 これが全面的に正しいかはわからんけどよくまとめてくれた

  • anond:20180502015101

    韓国オタクたちが受けている差別も相当のようで、「オタクというだけで叩かれる」「日本のアニメを見てたら日本びいきと叩かれる」「表現規制があほみたいに厳しい」「メガリアが...

  • anond:20180502015101

    ブコメの指摘サンクス 訂正したよ

記事への反応(ブックマークコメント)

 
 
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