ラッド英内相が辞任 不法移民の国外退去問題で

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Image caption アンバー・ラッド氏

アンバー・ラッド英内相は4月29日、内務省が不法移民の国外退去に目標となる人数を定めていた事実をめぐり引責辞任した。

ラッド氏は先に、同省が目標人数を設定していないと下院で説明していたが、これが事実と異なることが明らかになった。後任には、サジド・ジャビド住宅・地域社会・自治相が決まっている。

移民をめぐっては、第2次世界大戦後に英連邦のジャマイカなどカリブ海諸国から移民した「ウィンドラッシュ世代」が強制退去に直面している問題も浮上しているが、移民2世のジャビド新内相は問題解決のために「どんな手段でも取る」としている。

10%の削減目標

ラッド氏は25日に下院で行われたウィンドラッシュ世代をめぐる答弁の際、内務省は不法移民の国外退去で目標を設定していないと説明したが、2015年の調査報告書と矛盾していることが発覚した。

26日にラッド氏は、自主退去については「地域」目標が定められていたと訂正した一方、自身は目標について関知していないと話していた。

しかし英紙ガーディアンは、2017年6月にラッド氏に送られた目標に関するメモを公開。さらに、同氏がテリーザ・メイ首相に「向こう数年間で」10%の不法移民を退去させるとする「野心的だが慎重な」目標について書簡を送っていたことを暴露した。

情報筋によると、ラッド氏と内務省職員は28、29日に目標に言及した書類を全て洗い出し、これらについて事前に関知しておくべきだったとしている。

メイ首相はこの件について個人的に責任を取るべきかとの質問に対し、「私が内相だった時は、不法滞在者を退去させる目標が設定されていた」と説明。

「国民は、我々が不法滞在者を扱っているという保証を求めている」と話した。

野党は、メイ首相が内相時代に移民に対する「敵対環境」政策を作り出したとして、ウィンドラッシュ世代問題に対する責任を追及している。

ウィンドラッシュ世代問題

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Image caption 482人のジャマイカ人を乗せて英国に到着したエンパイア・ウィンドラッシュ号

ラッド氏は辞任前、ウィンドラッシュ世代と呼ばれる移民に対する不当な扱いや移民政策について批判を浴びていた。

ウィンドラッシュ世代とは、ジャマイカなど英連邦加盟国の西インド諸島から最初の移民としてやってきた数千人とその子供たちを指す。親に同行した子供の多くは、旅券や査証など公的書類のないまま入国して、定住した。

ただ、内務省はこれらの人々に対する記録や証明書類を発行しなかったため、ウィンドラッシュ世代は合法的に英国に住んでいることを証明しづらい状況にある。そのため、拘留や失職の憂き目にあったり、医療サービスを受けられないといった問題が浮上している。

こうした問題を受け、政府に不法移民に対する「敵対環境」政策を破棄するよう求める声が上がっている。

新たに就任したジャビド内相は、ウィンドラッシュ世代問題は「緊急課題」として調査が進んでいると説明。これまでに100件以上の案件が進んでいるほか、さらに500件の調査が予定されているという。

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Image caption サジド・ジャビド氏は、英国初の人種マイノリティーの内相となった

移民2世の内相

ジャビド内相は、移民2世としてウィンドラッシュ世代が受けた扱いに対して「怒りを感じている」と話した。

就任後すぐに行われた下院での答弁でジャビド氏は、「長年にわたってコミュニティーの支柱となった人々」が直面してきた問題は二度と繰り返されてはならないと説明。「これが私の母や兄弟、おじ、そして私だったかもしれないと考える」と話した。

さらに「この国に何十年も住んで、なお移民システムに苦労しているウィンドラッシュ世代に約束したい。こうしたことは起こるべきではなかったし、問題を正すために必要なことは何でもする」と述べた。

また、メイ首相が内相時代に制定したいわゆる「敵対環境」政策については、「これは字義的に間違っている。役に立たない言い回しで、国としての価値を反映していない」とし、「受け入れ環境」と呼びたいと話した。

英国で人種的マイノリティーが内相に就任するのは初めて。

ジャビド氏はメイ政権で住宅・地域社会・自治相を1年半務めたほか、キャメロン政権では民間企業・技術革新・技能相や文化・メディア・スポーツ相などを歴任した。

ジャビド氏の内相就任に伴い、住宅・地域社会・自治相はジェイムズ・ブロークンシャー元北アイルランド相が就任した。また、ラッド氏が兼任していた女性・機会均等担当相職は国際開発相のペニー・モードント氏が引き継いだ。

(英語記事 Javid replaces Rudd as home secretary

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