憲法記念日を前にした5月1日、憲法改正を目指す議員グループの集会が開かれた。今年は最大の保守団体「日本会議」の会長、元NHKニュースの気象キャスターも登壇した。「昨年以上の熱気」(関係者)で満員になった会場で何が語られているのか。
「私はここ数年の間に、世界のなかに日本が置かれている状況に気がつき、ようやく問題意識を持ちはじめた」
そう切り出したのは気象予報士で、NHKニュースでも活躍した半井小絵さんだ。なぜ半井さんが改憲派として発信を続けているのか。
きっかけはテレビ番組のコメンテーターに就任したことだという。
半井さんは現在も、ネット放送「虎ノ門ニュース」(DHCテレビ)のレギュラーコメンテーターを務めている。これは百田尚樹さんや『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』を書いたケント・ギルバートさんといった、ネット上の右派からも人気の「論客」が出演している番組だ。
無知、無関心を恥じた
半井さんは「情報はメディアで流れているニュースを鵜呑みにして、自分で考えようとしていなかった」が、番組でコメントをするために自分で調べたり、出演者から話を聞くようになった。そこから、知れば知るほど政治に無関心ではいられなくなったと話した。
最初の転機は、「尖閣諸島のニュースを取り上げたとき」だったと半井さんは語った。
「4年前まで、中国船が尖閣諸島にやってきていることを知らなかった」
「領土の拡大を目論む国が日本に攻めてきた場合、今の憲法では守ることができないという話にピンときませんでした。私が知っているのは、日本の憲法は世界に誇る平和憲法というもの。疑うこともなく信じていた」
それが、ある例え話を聞いて、改憲の必要性が腑に落ちたといって続ける。
「憲法9条が目に入らぬか、といって憲法を差し出すと敵が攻撃をやめるのか?ということです。気象予報士的に申し上げますと、台風が来るなといえば台風はルートを変えることはありえない。平和を守るということがどういうことなのか。見え方が変わりました」
憲法9条についても「自衛隊が違憲か合憲かという議論が行われていること自体がおかしい」。メディアについても言及し「多くの新聞やテレビは本当に大切なことを伝えていないように思う」と批判。会場から大きな拍手が起きた。
半井さんのスピーチは終始、「無知、無関心だった自分」がいかに関心を持ち、自分で憲法改正の意義を考えるようになったのかを語るものだった。
日本会議トップが語ったこと
日本会議の田久保忠衛会長も登壇した。
北朝鮮問題で揺れる国際情勢への対応が必要だと強調。森友・加計問題、日報、財務省セクハラ問題で揺れる国会を「あまりにも危機感がなさすぎる。改憲論を潰すために、次から次につまらない問題を取り出してきて、時間稼ぎをしているのかと勘ぐりたくもなる」と評した。
田久保会長の目からみると、憲法改正はいまが最大のチャンスだという。
「国内的にも3分の2、憲法改正の発議に必要な(国会内の)勢力を確保した。国際的に見ても北朝鮮問題は緊張している。どうか皆さん、我々の手で進めていこう」と語った。
過去最高の熱気
会場は、第2会場も含めて満員になった。昨年は安倍首相も登壇したが、今年は外遊のためメッセージを送るのみにとどまった。それでも関係者は「まだ国民までは届いていないとも思うが、昨年以上の熱気があった。過去最高の熱気だ。憲法改正への関心は高まっている」と語る。
しかし、彼らが最大の頼みにしている安倍政権は、田久保会長が言うところの「つまらない問題」の対応に苦戦している。支持率は下がり、危機的な状況を迎えている。
北朝鮮も南北会談、そして米朝会談へと激動のさなかにある。この状況下で、逼迫した国際情勢に対応するために、なにより改憲が必要だという主張はどこまで説得力を持つのだろうか。
改憲派は仲間内の熱気と、外部の温度差をどう見ているのか。そこは最後までわからないままだった。