大雪が降った日の夕刻。早めに帰宅しようとする乗客が殺到した東京・池袋駅の西武池袋線の改札。東京五輪でも乗換駅が観戦客で混雑し、同じような光景が再現されるかもしれない=2018年1月22日午後5時30分ごろ

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 2年後の東京五輪

 対策を取らなければ、競技集中日の朝のラッシュ時に東京圏の鉄道が止まり、予定の時間に競技場や会社にたどり着けない人が続出するだろう――。中央大学理工学部の田口東(あずま)教授(66)がそんな試算をした。田口教授は、主な乗換駅で人があふれて乗り換えができなくなり、鉄道の運行が止まる可能性が高いと指摘する。

 田口教授は数理モデルを使って実社会の課題を計算する専門家で、通勤電車の遅延計算モデルなどをつくってきた。東急田園都市線は朝のラッシュ時に各駅停車だけを走らせた方が遅延が減ると予測。東急はその2年後に急行の運転をやめた。こうした実学研究が評価され、所属する日本オペレーションズ・リサーチ学会で昨年、最高賞を受けている。

 首都圏の通勤・通学の鉄道利用者は1日約800万人。田口教授は、招致段階の競技日程・会場計画に基づき、最も試合が多い日の観客を65万人と想定。時間ごとに首都圏の駅や列車ごとの乗降客数をシミュレーションした。その結果、午前6時~9時の間、乗車率200%以上の電車が50%増えると予測した。「乗車率200%」は他の乗客と密着し圧迫感があるが、雑誌は何とか読める状態とされる。

 さらに通勤ラッシュと競技観戦客の輸送ピークが重なる午前8時~9時の間に、乗り換え客が多いJRと地下鉄の東京駅、JRや私鉄などの新宿駅、地下鉄永田町駅で人がどれくらい滞留するかを1分ごとに計算。その結果、駅構内はふだんの1・8~3倍の乗客であふれるという結果が出た。

 深刻なのは駅が狭い永田町駅で、ホームや通路が人で埋まって電車への乗降が滞り、電車が立ち往生する可能性が高いという。駅が広い新宿駅、東京駅でも同様の可能性があるという。