分譲マンション最大の行事「管理組合総会」に対するフロント社員の本音は?
管理組合総会は分譲マンションの最高の意思決定機関であり、年間で最も重要な組合行事です。
前回は「総会とは何か」についてご説明しましたが、総会はフロントにとっても重要な業務であり、今回はフロントの側から見た総会について書いてみたいと思います。
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フロント業務としての総会
【特別決議では委任状を集めるのが大変】
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総会に参加する方法としては本人が出席する場合と、委任状(マンションによっては議決権行使書)を提出する場合の2通りあります。
議案書を発送する際に出欠確認の用紙も同封し、これを事前に提出してもらう事で出席状況を事前に把握するのですが、この用紙が委任状(議決権行使書)も兼ねており、欠席で提出した場合は自動的に「書面による出席」という扱いになります。
総会を成立させるためには組合員総数の過半数が出席する必要がありますが、総会に出席するほど管理組合活動に熱心な方はそれほど多くはないので、どうしても委任状をかき集めなければならなくなります。
本人出席と委任状で過半数を集めるのはそれ程難しくないのですが、大変だったのは区分所有者総数の4分の3以上の出席と議決権総数4分の3以上の賛成が必要な特別決議を上程している時です。
管理員から出席票(委任状)の集まり具合を日々連絡してもらい、未提出者のポストにカラー刷りの督促書面を投函するなどして総会前日までには所定の数を何とか確保していました。
【議長のために台本を作成する】
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総会の議長は理事長が務める定めとなっています。
しかし、議事録においては理事長が議長であったような形態をとりながら、実際にはフロントが司会者のような形で議事を進行させるというマンションも多いようです。
筆者の勤務していた会社では基本的に議事進行は理事長にお願いしていました。
そのため開会から閉会までの全てを網羅した、これをただ読みさえすれば誰でも議長が務まるというような精密な台本を作成し、事前に理事長と監事(途中1回だけ出番がある)に渡していました。
【出席者数の集計は腕の見せどころ】
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管理組合総会はどんな場合であってもまず出席状況を確認し、総会が成立していることを議長が宣言することから始まります。
本人出席、委任状による出席、議決権行使書による出席等の最終的な数字は開会時間になってみないとわからないものですが、ここでオタオタしていては第一印象が悪くなります。
そのため最終の集計作業はできるだけ手際良く行い、会議の冒頭で見た目にもスマートに議長に報告できるよう事前の準備を徹底していました。
【議事の録音をしなかった理由】
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総会議事録について書いた際にもお話しましたが、筆者は会議の模様は録音せず、その代わり細かくメモをとってそれに基づいて議事録を作成していました。
特に会社からの指示があったわけではありませんが、他のフロントを見てもおおむね同じような対応でした。
テープ起こしには大変な時間がかかるという事もありますが、筆者の場合は「終わった総会の音声など聞きたくもない」というのが最大の理由です。
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何事もなくスムーズに終了する総会もありますが、出席者からフルボッコにされて、終了後もしばらく立ち上がれなかったような総会もありました。
たとえそのような場合であっても質疑の要旨を記録した議事録を作成しなければならないのですが、メモを見ながらの作業でも辛いものであるのに、それを音声で聴き直すというのは拷問でしかありません。
総会にまつわる建前と本音
【できるだけ参加しやすい日程で開催する】
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総会日程の設定においては、できるだけ出席者が多くなるように最大限に配慮します。
当然のことながら土日祝といった休日に設定しますが、3連休の中日は避けるようにしましたし、休日のお出かけもしやすいように昼間は避け、午前中か夜間のどちらかに設定するようにしていました。
一方で弁護士事務所ばかり入居しているワンルームマンションでは、平日の夕方に開催したこともあります。
【出席者は少ない方がいいというのがフロントの本音】
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日程の設定では出席しやすさに最大限配慮し、開催案内においては「ご多忙中とは存じますが、万障お繰り合わせの上、ご出席ください」とできるだけ大勢の組合員が出席するよう求めていますが、これはあくまで建前にすぎません。
議事の中でやり玉に挙げられることの多いフロントとしては出席者は少ない方がいいというのが偽らざる本音で、特に各マンションに数名必ずいる「うるさ型」の人の動向には常に細心の注意を払っていました。
そういった人から「欠席」に丸の付いた出席票が出されたときには、もうそれだけで総会が終わったような気分になったりするものです。
管理組合総会は、正直もう二度とやりたくない
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何事もなく30分かからずに終了した総会もあれば、議事が紛糾して何時間も延々と続いた総会もあります。
総会は当日の出席者次第で何が起こるか分からないものがあり、当日は朝から極限の緊張状態にあるのが常で、これには最後まで慣れるという事がありませんでした。
プロ野球で先発予定の投手が試合前に感じる緊張感に似ているのではないかと思います。
この記事を書きながら過去の様々な総会のことを思い返していましたが、あんなことはもう2度とやりたくないというのが現在の率直な心境です。