■シン・ウォンシク元合同作戦本部長
「南北関係改善が非核化を呑み込む」
板門店宣言文を見て、ひどいと思った。「主客転倒」のおそれが現実になった。今回の南北首脳会談のメーンメニューは非核化だった。南北関係改善はデザートだった。ところが南北関係改善が、中心議題たる非核化を呑み込んでしまった。金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長は宣言文発表の際、「非核化」に言及もしなかった。北朝鮮が「全ての核兵器を廃棄する」とした2005年の9・19共同声明よりもはるかに劣る。
宣言文では「南北は韓半島非核化のためそれぞれ自己の責任と役割を果たす」となっている。北朝鮮が考える非核化は依然として、米国の「核の傘」廃棄を含む「朝鮮半島の非核地帯化」だと見られる。
宣言文には、きちんとした非核化の文言がなく、南北協力事業など韓国が北朝鮮に与えるものばかりで一杯だ。6・15共同行事、文化交流行事などは、北朝鮮制裁をめぐる問題を再び生むだろう。今年8月に予定されている韓米乙支フリーダム・ガーディアン演習(UFG)は縮小される可能性が高い。北朝鮮が今後、米軍の戦術核兵器撤収、韓米連合司令部解体、在韓米軍撤収を要求することもあり得る。
米朝は、北朝鮮の米国本土攻撃能力を凍結するラインで合意する可能性がある。そうなった場合、北朝鮮の核の脅威は韓国がそっくりそのまま抱え込むことになる。民族の協調を、強力な韓米同盟の「代替物」と錯覚した瞬間、備えなき危機に直面することになる。