コラム
» 2018年04月29日 11時00分 公開

視聴率調査に協力している人を全く見掛けない理由

絶対どこかにいるはずなのに、どうして?

[マッハ・キショ松ねとらぼ]
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 各局がしのぎを削るテレビ番組の視聴率。週刊誌やネットニュースにもよく登場し、その数字をもとに「あの番組が好調/不調」「視聴者のライフスタイルの変化が~」といった考察が行われています。

 ですが、意外と知られていないのは「視聴率はどのように調査されているのか」という点。今回はよくある疑問4つをテーマに解説します。

視聴率調査に協力している人を見たことがないのは、どうして?

 視聴率とは、テレビ番組やCMがどれくらい見られているかを示す指標。その調査は、ビデオリサーチが一般人を対象に行っています。それなのに、「視聴率調査をやったことがある」という人は全くといっていいほど見掛けません。

 視聴率の調査世帯数はエリアごとに決まっており、例えば、一都六県からなる「関東地区」は900世帯。毎月約40世帯ずつ交代し、2年間で全世帯が入れ替わります。


調査世帯数は地域によって異なり、関東地区が最大(視聴率ハンドブックより)

 ビデオリサーチは、自家用テレビを所有する関東地区の総世帯数を1800万超と推定(2017年10月時点)。「現在の調査世帯は約2万世帯に1世帯、全体の0.00005%以下という計算になります。過去の経験者も含めれば人数はもっと増えますが、調査協力者数が限られており、そもそも出会う確率自体が低いと思われます。

 また、普段の視聴実態を把握するために、同社は「対象世帯や視聴率測定機(※)に関わることは徹底的な管理のもとで行っている」を取っているとのこと。協力者側も、調査に関わっていることについて公言してはいけないことになっているそうです。つまり、たまたま知り合いに調査協力者がいたとしても、そのことに気付かないはずなのです。

※ 調査には、テレビに接続して視聴しているチャンネルを測定する機器「チャンネルセンサー」などが使用されている。

視聴率ってどれくらい信用できるの?

 視聴率は統計学的に算出されており、調査対象となる世帯はざっくり言うと以下のような方法で無作為抽出されています。

  • 国勢調査のデータから総世帯数を求め、各世帯に番号を割り振る
  • 乱数表を使ってランダムな数字を作る(※)
  • その数字と番号が合致する世帯に協力依頼を行う(協力が難しい場合は、世帯特性に基づいて「代替世帯」に依頼)

※ 無作為抽出には「系統抽出法」を使用。例えば、乱数表で「5」という数字が出たら、5番目の世帯、1005番目、2005番目、3005番目……といった具合に選んでいく。


視聴率ハンドブックによる視聴率調査のサンプリングの手法解説。ここで用いられている「系統抽出法」のより詳しい解説は、同資料に掲載されています

 例えば、関東地区のように標本数900で、「リアルタイム(録画視聴などではない)での世帯視聴率」を測定した場合、視聴率5%なら±1.5%、10%なら±2.0%、20%なら±2.7%の誤差を考慮する必要があるとのこと(信頼度95%)。

「視聴率1%」は、どれくらいの人が見ていることになる?

 調査エリアの総世帯数にもよりますが、関東地区の場合、「世帯視聴率1%」は約18万6000世帯、「個人視聴率1%」は約40万人が、該当のチャンネルに回していたと推定されます。


自家用テレビを持つ推定総世帯数÷100=1%あたりの視聴率(視聴率ハンドブックより)

 ちなみに、視聴率にはいくつか分類があり、単に「視聴率」という場合は、リアルタイムでの世帯視聴率のことを指します。その中でも、関東地区のそれは特に目にする機会が多いはず。記事を見ると、よく「視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)」などとカッコ書きされています。

テレビを持っていない人、録画やワンセグ利用者は視聴率にどう影響?

 調査世帯を選抜する際、「病院、事務所、寮、テレビ非所有世帯、そしてマスコミ関係者のいる世帯などは除きます」とされており、テレビを持っていない世帯は調査対象外とされています。

 ビデオリサーチは現在、「自宅“内”視聴」には対応していますが、「自宅“外”視聴」は未対応とのこと。パソコンテレビによる視聴は測定していますが、携帯端末でのワンセグ放送は対象外になっています。

 録画視聴に関しては「タイムシフト視聴率(録画から1週間以内に視聴)」という分類が設けられており、関東地区では2016年から調査を実施。今年2018年には関西地区、名古屋地区でも導入されます。


視聴スタイルの多様化への対応として、2016年から自宅内でのタイムシフト視聴率の調査をスタート(視聴率ハンドブックより)


 報道などを“正しく読み取る”ために必要なこととして、「データを正確に理解すること」が挙げられることがあります。身近に見掛ける数字ではありますが、テレビ番組の評価に使われる視聴率もデータの1つです。

 ビデオリサーチは視聴率調査に関する資料「視聴率ハンドブック」をWeb上に公開し、具体的な測定の仕方から視聴率の計算方法まで掲載。分かりやすくまとめられているので、興味のある方は一読してみてはいかがでしょうか。

マッハ・キショ松

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