はじめに
自信があるという言葉の解釈は一様ではない。そして、自己評価が高いということもまた一筋縄ではいかない話だ。というのも、自信、そしてその源泉となる自己評価というものには、2つの種類があるからだ。
2つの自己評価
一つは自分にとっての自分の価値(を自分がどう見るか)。これは自分の価値基準において、自分という存在、その行動、そのありかたを積極的に肯定して生きていけるかということになるだろう。自分にとっての生の価値もこの評価に重なってくるような気がする。これを生の中での自己評価としよう。
もう一つは他者や社会にとっての自分の価値(を自分がどう見るか)。これは様々なレベルでの社会で一般的とされる価値基準において、自分が貴重なor必要な存在として認識されているかという軸での自己評価のことになる。これを社会の中での自己評価としよう。
たとえば世間的には高学歴高収入とされ羨望の的になるような職業で日々働いているような人は、少なくとも社会の中での自己評価は高いだろうが、もしなりたい自分とのギャップに悩んでいたり、自殺してしまいたいような気分でいっぱいであれば、生の中での自己評価はきっと低いものになる。
あるいはニートとして日々遊び呆けてくらしているような、明らかに社会に対してはお荷物になっている人は社会の中での自己評価は低いはずだろうが、親を苦しめ将来をも考えずに日々の喜びの中に生きることであっても、そこに価値を見出し肯定できているのであれば、生の中での自己評価が高いということにはある。
むろん、この2つは相反するものというわけではなく、社会の中での自己評価を高めることによって生の中での自己評価を持ち上げることはできるだろうし、生の中での自己評価が高い人間がその価値観を社会に広められれば、社会の中での自己評価も高まることになるかもしれない。
生活水準や承認欲求と自己評価の関係
社会の中での自己評価を生の中での自己評価のもとにするということはわりかしよくある話だ。
たとえば承認欲求。承認欲求とは、自分のありかたを(たとえそれが何かの模倣であっても!)SNSなどに投稿し、好意的反応を集めたがることだ。そこでは「羨ましがられるような」「キラキラした」投稿が用いられ、少なくともそこの社会の価値基準で間違いなく「良し」とされる生活を体現することで、まさに社会の中での自己評価を高めることによって生の中での自己評価を持ち上げることができる。
自らの収入に見合わないほどの生活水準(いわゆる「ちょっといい暮らし」である)で生活しようとすること、目的意識もなくいい大学に入ってそれを喧伝すること、皆が知る大企業で働くことを自分のステータスとして大切にすること......。
あらゆる社会的ステータス性への信仰や周囲への見栄やプライド、こうしたものの根底にこのメカニズムが働いてるような気がしてならない。もっとも、社会一般の価値基準を完全に自らの生の価値基準と同一化させてしまっているケースがほとんどなのかもしれないが......。
本当にそれで良いのか:自分の軸で生きよう
生の中での自己評価とは、自らの生を、生そのものの価値基準に基づいて肯定できるかということである。それなのに、社会の価値基準(自己評価)を生の価値基準(自己評価)にそのまま据えてしまうケースや、社会の中での自己評価を高めることによって生の中での自己評価が持ち上がると考えているケースが多いのではないかと思う。社会よりも自分の生そのもののありかたのほうが重要で本質的なのだから、これは安直で、場合によっては危険なのではないかとすら考えてしまう。
実際、社会が我々に提示してくる価値基準は多くが上下の軸を伴う。収入の多寡、学歴の良さ悪さ、世間的な人気、子供の数、結婚独身、頭の良さ悪さ、家の大きさなどなど、いずれにしても上か下かが割とはっきり決まっている。これを踏まえれば、社会の中での自己評価と生の中での自己評価がリンクしてしまう世界では誰もが最高度に自己肯定するということは不可能になってしまう。相対的ながらわかりやすい優劣の基準を鵜呑みにしていては、誰かが幸せになるたびに少しずつ不幸せになってしまうかもしれない。いわば幸せになるための競争である。誰かより給料が多いから、誰かよりいい暮らししてるから、それって本当に幸せなんだろうか?そのステータスがなくなったり、社会がそれを認めてくれなかったり、その競争で今度は負けてしまったりしたら、どんな気分で生きていくんだろう。
社会の価値基準に縛られすぎずに生そのものにおける価値基準を設定することはそういう意味において有用であり、さらにそれは本来当然あるべきかたちなのではないか、と思う。
(もっとも、極端に走って、社会の価値基準に逆らうあまりにかえって自分の価値基準を見失ったり、生活水準や社会的評価をありえないレベルにまで下げて社会生活に支障をきたしたりしてまで生の中の自己評価を高めはじめたりしている人がいたら止めたほうがいいと思うが。)
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生きる力になればと思います。
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