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ただいま表示中:2013年2月5日(火)広がる“秘密録音”社会P1/P1
No.33052013年2月5日(火)放送
広がる“秘密録音”社会

広がる“秘密録音”社会

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“秘密録音”が暴く退職強要の瞬間

秘密録音をしたことで自分の身を守ったという男性です。
男性は勤めていた企業の幹部から執ように退職を迫られ、秘密録音に踏み切りました。

秘密録音した男性
「せっぱ詰まっていた。
自分の生活、これからの人生もかかっていたので。」

男性は2年前、営業職としてあるメーカーに転職。
入社後、研修もなく、すぐに現場に出され高いノルマを課されます。
成果を出せない中、毎週のように、幹部に退職を迫られるようになりました。
半年以上続いた退職の強要。
ストレスから精神的なバランスを崩し適応障害と診断されました。
妻と子どもを養っている男性。
会社が一方的に、解雇を迫っていることを証明したいと1か月にわたって、秘密録音をしたのです。

会社
「もういいよ来なくて、君は。
来なくていいですよ。
こっちがいらないっていうのにさ、自分だけが働こうと言っても誰も受け入れないでしょ。」

男性
「いや、それは会社の都合でしょ。
労働基準法を守って下さいよ。
私はそれだけですよ。」

会社
「いらないんだよ、本当に。
いい加減にしろよ!」

男性
「ルールを守って下さいよ。
労働基準法を。」

最後は、合意しないまま退職させられた男性。
解雇無効を主張し、裁判所へ申し立てました。
このとき秘密録音を証拠として提出。
労働審判で下された決定は退職の撤回。
男性の主張を認めたのです。
男性は、この会社で働き続けるのは難しいと感じ、解決金を受け取り再出発を果たしています。

秘密録音した男性
「証拠がなければ裁判の場にも立てないでしょうし、無理やり辞めてる方が大勢いると思う。
証拠がなければ会社側の主張が裁判官に通っていたかもしれない。
考えたら怖いですね。」

なぜ広がる“秘密録音”

都内にある探偵事務所です。
数年前から、秘密録音に関する相談が急増しています。
相手に気付かれずに録音するためのさまざまな機材を依頼者に貸し出しています。


探偵会社 阿部泰尚代表
「時計型のこの部分がマイクになっています。
音がとれる。」

録音機は、お菓子のケースなどにも仕込みます。
日常風景に溶け込むように改造し、見破られたことはありません。

探偵会社 阿部泰尚代表
「こういうものがすべて秘密録音でとられたものです。」

職場のパワハラやセクハラ学校でのいじめ、詐欺、脅迫など相談は、1か月で50件にも上ります。

探偵会社 阿部泰尚代表
「いじめはそうですし、最近だと虐待の問題で子ども自身が録音するケースもある。」



「あのー、どうするぅ?」

トラブルの解決にも大きな力を発揮しています。
これは、暴力団が背後にいるとにおわせて金銭を要求する電話です。

「向こうとしては1本くれと言ってるわけ。」

「1本っていくらですか?」

「1,000万。」

「1,000万なんて払えないですよ。」

「払わなかったら多分、強硬手段に出てくるでしょ、彼ら(暴力団)は。」

「どんな感じになっちゃうんですか?」

「ギャーギャー騒ぐんじゃないの?
そこに街宣車が来たりしてさぁ。」

この録音を脅迫の証拠として相手に突きつけ、すでに奪い取られていた数百万円を取り戻すことができたのです。
こうした秘密録音に違法性はないのか。
法律には秘密録音についての規定はなく、多くの裁判で証拠能力が認められていると専門家は言います。

生田康介弁護士
「録音すること自体が違法とは考えられていなくて、弱い立場の人は自分の身を守るために秘密録音という方法を使うことはあり得る話。」

客との会話も全て“秘密録音”

秘密録音は今、ビジネスの世界でも活用され始めています。

「はい、ありがとうございます。」

福岡県にあるコールセンター業務を請け負う会社です。
1年半前から客に通知することなく通話の内容をすべて録音しています。
このコールセンターは7つの企業から業務を外注されています。
客が企業に電話をかけると、このコールセンターにつながります。
さらに、企業の商品の売り込みも行います。
客との間で起きる契約内容を巡るトラブルを回避するため、1か月で4万件にも及ぶ通話をすべて録音しサーバーに蓄積しているのです。
この日、ある企業から客との契約内容を確認したいと連絡が入りました。

「無料と言われたと。」

客が商品は無料だと聞いたと注文のキャンセルを申し入れてきたのです。
すぐさま、サーバーへアクセス。
3か月前の通話でしたが数分で録音データを呼び出すことができます。

オペレーター
「2袋ですので、2,754円でお届けしますが、よろしいでしょうか?」

価格を告げるオペレーターの声。
それに対し、客が代金を支払う意思があったかどうか確認します。

「代引き(代金引換)でもいいよ。」

支払い方法を指定する客のことばが残されており、契約内容に問題がないと判断することができました。
この録音システムを導入してから、言った言わないのトラブルがなくなったといいます。

コールセンター会社 井野銀志朗部長
「通話の録音があることによって、お客様に納得していただけるし、お客様もそうですし、クライアントの安心感は全然変わってくると思います。」

“データ改ざん”悪用される秘密録音

今、秘密録音が悪用される事態が起きています。
裁判で証拠として提出されるデータが、改ざんされるケースがあるのです。

都内で音声の分析を専門に行う会社です。
ここには、改ざんの疑いがある録音データの分析依頼が相次いでいます。

音響の分析・鑑定会社 鈴木創代表
「録音が編集されているということですか?」

この日、分析したのは商品の納期を巡るトラブルを電話で秘密録音したもの。
依頼者は、自分の記憶にある相手とのやり取りが録音からなくなっているというのです。

「だから、間に合ってないって…ああ。」

会話の間にある間に注目して詳しく分析すると、新たな事実が浮かび上がってきました。


音響の分析・鑑定会社 鈴木創代表
「これを周波数分析してみます。
そうなりますと、この時点でくっきりと、ここまでとここまでが変わってきます。
これは、音を聞いてみますと、明らかにバックノイズが変化しています。
もう一度、お聞きいただきます。
ここに、緑の横線があります。
これが車のエンジン音なんですが車のエンジンが、ふかしていて急になくなると。
こっち以降はないので、ここで車のエンジン音がする環境としない環境をつなぎ合わせているということになります。」

この音声データは、違う環境で録音した通話をつなぎ合わせたものだと鑑定しました。
裁判の証拠にも使われる秘密録音。
この2年間で、改ざんの鑑定依頼は1割以上増えています。

音響の分析・鑑定会社 鈴木創代表
「裁判所までもだますことになりますので、使う側の。
法整備は難しいとは思うんですが、本当にモラルの問題になってきてます。」

崩れる人間関係“秘密録音”の果てに

さらに、秘密録音は人と人との信頼関係に大きな亀裂を入れることもあります。
都内で中小企業を経営する60代の男性です。
会社内で秘密録音が行われた形跡が見つかり、社内の人間関係が大きく崩れてしまったといいます。

社長
「何でそういうことをするのか。
こんな社員と社長の関係なんて考えてもみなかったし。」

事の発端は、1年前。
社長の指示に従わず、何度も訓告処分を受けてきた2人の社員が会社に時間外手当を請求する裁判を起こしたのです。
裁判所から社長のもとに届いたのは、過去の社長の発言が一言一句、詳細に書かれていたものでした。

「わざわざここに空間を置いてるってことは、何かを聞きながら書いたということかなと。
『いや』『あの』とかやはり何か録音をして、テープ起こしをしていると、我々は捉えますけれども。」

裁判を起こした2人の社員は秘密録音を否定しました。
しかし、裁判からしばらくして社内をあるうわさが駆け巡ります。

「社長だけでなく、社員の発言も秘密録音されている。」

この会社の男性社員です。
日課にしていることがあります。

「これは何ですか?」

男性社員
「盗聴器の発見器ですね。」

秘密録音にとどまらず、盗聴も行われているのではないか。
自分のことばが、いつ裁判などでの攻撃材料に使われるか分からないと人間不信に陥っているといいます。

男性社員
「自分の会話が法に触れてるか触れてないかとか、人のことを悪く言っていないかとか、ずっと気にしながら1日過ごすのは無理ですし、本当に精神的にまいってしまいます。」

社内からは、雑談や世間話をする声が消えました。
秘密録音の騒動が起きてから5人の社員が会社を去りました。

社長
「お葬式のような、お通夜のような感じですよ。
人を信頼できなくなるとか、疑り深くなる怖さというのは、比較になるものがないくらい怖い部分はありますよ。」

社会に広がる“秘密録音”

ゲスト牧野二郎さん(弁護士)

●いつ誰がどこで自分の声を録音しているか分からない

今、起きていることというのは、どうも今までのコンセンサスというか、職場における信頼関係っていうのが、急速に崩れてきていて、それに対する新しいあり方というのが、見えなくて、模索をしているような状況に見えるんですね。
ですから、きちっとした方向を見ないと、持たないと、負のスパイラルがもっと強くなっている危険があるだろう。
だから十分注意して進むべき時代だと思いますね。

●どう向き合う“秘密録音”社会

まず本来、信頼関係が確立すべき職場のようなところでは、やはり隠れて録音するというようなことは、これは規制すべきだと、禁止すべきだと思いますね。
それは法律ではなくて会社のルール、会社の合意としてコンセンサスとして、この会社ではこんなことするのはやめよう、安心していいよというようなことを作らなければならない。
それに対して、例えば対立軸が出てきてセクハラがある、パワハラがあるということだと、きちっとテープレコーダーを目の前に置いて会社側と労働者の方がきちっと話し合いをすると。
そのテープをきちっと保管して、確保していくというのが多くの社会を目指していく、そういう必要性が出てくるだろうと思いますね。

●どうしても秘密録音せざるをえない立場

ですからそういうときは、正々堂々と動かぬ証拠を両方が持ちながら話し合いをしましょうという場を拒否するようなそういう会社側の動きがあったときには、それは自己を守る必要がありますからそうすると正当防衛として録音していると。
ただ、何もかにも録音ではなくて、ちゃんと専門家に相談をしてそれがきちっと証拠になるように改ざんができないようなそういうきちっとしたもので録音していく、こういうことが必要だと思います。

●証拠をきちっと見極める信ぴょう性

前々から裁判所に偽造のテープが持ち込まれる事件はあったんです。
裁判所はそれをきちっと判断してくれています。
その意味では持ち込んだ人間、あるいはそれを見た当事者、あるいは弁護士がきちっと鑑定を申請をする。
そして鑑定してもらうと。
そういう鑑定技術ありますから、そういったもので解析すれば事実は大体明らかになるわけですね。
そういう緊張感があれば間違いないと思うんですが、多くの弁護士が疑わないということになってくると、とんでもない証拠が出てくると。
そうするとやっぱり、偽造できない仕組みというのを導入していくということも必要になってくると思いますね。
例えば、録音するときにタイムスタンプをずっと打ち続けていくとか、あるいは出来たデータに刻印されていくわけですね。
もし切れば、切ったことがすぐ分かるというようなタイムスタンプであるとか、あるいは電子署名というのがあります。
全体を常に電子署名で確認していくという方法がもう出来ていますので、そういったものであれば、非常に評価が高い。
裁判所に持っていったら裁判官が、それを自動的に取ってくれるというような社会を今、作っていかなければいけないと思いますね。

●企業側が改ざんできないようにする制度

まず、技術があります。
ビッグデータに対しても、タイムスタンプとかあるいはハッシュをとってそれを確保すると。
すると偽造検出というのができますので、そうするとどんどん大きなデータでも偽造したら、1か所でも偽造したらすぐ分かるような仕組みがあります。
これを企業に導入させる。
コストがかかりますので、企業はまだやっていません。
ですからこれは法律で、ある意味では適マークのようなものを作って、あるいは税制を優遇するといったような手段を取りながら、すべてのサーバーに、あるいはビッグデータを扱うサーバーには、きちっとしたそういった処置を取っていく、法律で要求していくということが必要かなと思いますね。

●音声データが簡単に安く蓄積できる社会

もう違法手段でもなんでもいいから、とったもん勝ちですよというのはやはり間違いだと思います。
私たちには新しいフェーズ、新しいコンセンサスを作るというところに向かっていかなければいけない。
まさに健全なコミュニティーが確立できるかどうか、そのために私たちは何をすべきかを考えなければいけない。
そうすると、例えば職場とかそれから学校とか家庭とかいろいろなコミュニティーがありますね。
そこできちっとした前に向いて楽しくできるようなその中で、不信感を払拭できるようなルールを作る。
けんか対立するときは、きちっとテープを置いて改ざんできないというのを両者が確認しながらデータを持つというような、そういうルールを作り上げていくっていうことが必要なんだろうと。
それを各地でやらなければいけない。
これをすることによって、新しい方向性が確実に見えてくると。
私たち自身がそういうルールを作る、今、そういう時代に来ているんだと、新しいコンセンサスを作りましょうというのが、私たちに課せられた課題というふうに今、考えていますね。

●透明性を高められる可能性

ですから、権力の腐敗とか、あるいは不正というのを暴く意味では、ものすごくいいツールです。
これを上手に使わなければいけない。
負のスパイラルのほうに使ってはいけないというふうに思いますね。

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