トルコと伊藤忠
トルコの原発事業からの伊藤忠の撤退のニュースには、単に商社が手を引いたという以上の意味を感じる。というのはトルコでは伊藤忠は普通の商社ではないからである。この会社は、トルコ政界のトップと深い関係を持っていたからである。そのトップとは、トゥルグト・オザルである。1983年から89年まで首相を務め、さらに1989年から93年まで大統領を務めた人物である。
このオザルと伊藤忠の関係は、まだオザルが民間人であった時期にさかのぼる。コンサルタントであったオザルと伊藤忠は関係を築いた。そのオザルがトルコ政界のトップに立った結果、伊藤忠はトルコを良く知る企業として知られるようになった。これが偶然なのか、あるいはオザルという人物の将来を見通した長期戦略の勝利なのかは、筆者は知らない。
いずれにしろ、このオザルとの関係を伊藤忠はビジネス以外の場面にも活用した。1980年にイランとイラクの間に戦争が始まり、イランの首都テヘランに日本人が取り残される事件があった。この日本人の救出のための救援機を出したのは日本政府でもなければ日本の航空会社でもなかった。トルコ航空がであった。このトルコの日本人のための決断に裏には伊藤忠のオザルへの働きかけがあった。
この事件に象徴されるように、伊藤忠ほどトルコを知る企業を知らない。その伊藤忠がトルコへの原発輸出事業から手を引こうというのである。この事業の将来を漆黒の闇で覆うような報道である。
伊藤忠、トルコの原発計画から離脱 建設費高騰で
三菱重工業や伊藤忠商事など日本の官民がトルコで進めていた原子力発電所の建設計画から伊藤忠が離脱することが明らかになった。事業化調査(FS)の過程で、安全対策費の大幅な増加によって総事業費が当初の2倍
日本経済新聞 電子版
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