メルケル独首相が訪米 貿易とイラン核合意でトランプ大統領を説得
訪米したアンゲラ・メルケル独首相は27日、ドナルド・トランプ米大統領と会談した。トランプ氏が破棄を示唆しているイランとの核合意について、引き続きトランプ氏と接触を図っていくと述べた。
メルケル氏は2015年の核合意は、イランの核開発を阻止する「最初の一歩」だと説明した。トランプ氏はイランに核兵器を持たせないと明言したものの、軍事措置に踏み切るかには言及しなかった。
メルケル氏はこのほか、他のEU加盟国首脳と協力し、欧州の鉄・アルミに対する適用除外を求めている。
メルケル氏の「実務訪問」は、先に国賓として訪米したエマニュエル・マクロン仏大統領に対する儀式的な待遇とは対照的なものだった。マクロン氏は3日間滞在したが、メルケル氏の訪米は3時間だった。
27日の共同記者会見では、米独首脳の貿易に関する相違が明らかになった。
トランプ大統領は3月初め、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税が課す大統領令に署名した。その後、欧州連合(EU)加盟国と韓国など6カ国に対しては5月1日まで関税賦課を留保する方針を発表。完全除外を勝ち取るには、代替策を提示する必要がある。
メルケル氏は他のEU加盟国首脳と協力し、欧州の鉄・アルミに対する適用除外を求めている。
トランプ氏から確約を得られたかという記者の質問に、メルケル首相は「大統領は近く決断を下すだろう。それは確かだ」とコメントした。
「我々は意見を交わした。決めるのは大統領だ」
これに対しトランプ大統領は、ドイツやEU各国と「互恵的な」貿易関係を望んでいると話した。
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メルケル首相にとってもうひとつの締め切りは5月12日。この日に、トランプ大統領はイランへの制裁措置に踏み切るかどうかを明らかにする。
制裁が決まれば、世界各国がイランの核兵器開発阻止に不可欠だとみなしている2015年の核合意が破棄される可能性が高まる。
ドイツは米仏英、そしてロシアと共に核合意の締結に尽力した。メルケル首相は、トランプ大統領がこの合意を無力化しないよう求めている。
トランプ大統領は、友好国のイスラエルが警戒するイランの弾道ミサイルプログラムと中東における勢力範囲を縮小しするため、合意を抜本的に変更する必要があると主張している。
オバマ政権が推進したこの合意についてメルケル首相は「(イランの)この特定の方面の活動に歯止めをかけた最初の一歩」と話した。
イラン核合意については、マクロン仏大統領もトランプ氏を説得した。
訪米中、2人の様子は「ブロマンス」として報じられていたが、マクロン氏はトランプ氏が「自国の利益」のために核合意から退こうとしていると疑っていると述べている。
一方トランプ大統領はメルケル首相に対し、国防費を北大西洋条約機構(NATO)が求める対GDP比2%まで引き上げるよう求めた。
メルケル首相によると、国防費は現在GDPの1.3%を占めており、わずかながら拡大した。
昨年のメルケル首相の訪米では、トランプ大統領がメルケル氏の握手の催促を聞きそこない、気まずい雰囲気が流れていた。
しかし今回、トランプ氏はあいさつのキスと共に握手に応じた。
メルケル首相を執務室に招き、トランプ氏は2人が「とても素晴らしい関係」にあると述べると、メルケル氏は笑ってうなずいた。