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法華狼の日記

2018-04-28

[]文在寅氏と金正恩氏が軍事境界線を超える姿はパフォーマンスということはAdd Star

その情景をつくりだしたのは権力者個人の思惑によるものではないと考えるべきで、それはすなわち文氏を選んで支えた韓国市民の成果といっていいだろう。

「平壌から苦労して冷麺を持ってきました」 金正恩氏:朝日新聞デジタル

今件が象徴する外交がどのような結末にいたろうとも、文氏と金氏がどのような明日をむかえようとも、ここまで勝ちとったという歴史が、新たに刻まれたわけだ。

http://japanese.korea.net/Government/Current-Affairs/National-Affairs/list?affairId=657&subId=646

2000年6月13日午前10時27分の平壌順安空港。専用機から降りた金大中大統領を、タラップのすぐ下で待っていた金正日国防委員長が両手で握手して歓迎しました。「お目にかかれてうれしいです、お会いしたかったです」。金大統領の挨拶は簡潔明瞭でした。こうして分断後初めて南北の首脳が会いました。

http://japanese.korea.net/Government/Current-Affairs/National-Affairs/list?affairId=657&subId=647

2007年10月2日、全世界が見守る中で盧武鉉大統領が軍事境界線を越えました。一つの土地を二つの国に分ける一本の線。分断のシンボルであり、越えることが許されなかった軍事境界線を大韓民国大統領としては初めて歩いて越えました。

[]『JSAAdd Star

朝鮮半島を分断する共同警備区域、略称JSAで北側の兵士が射殺された。なぜか軍事境界線上の橋にいた南側の兵士が容疑者となる。

そして中立国監視委員会から韓国系スイス人が派遣され、矛盾する証言をつきあわせて真相をさぐろうとするが……


後の復讐三部作で知られるパク・チャヌク監督が脚本をつとめた、2000年の韓国映画。舞台となる板門店は巨大オープンセットで再現された*1

JSA(字幕版)

JSA(字幕版)

誰ひとり足をふみいれることができない場所で死体が発見されるのではなく、現場の兵士が勝手に動いていたことは早々にわかって、証言をてらしあわせながら動機を深掘りしていく。

もっと特殊状況ミステリのような厳密な推理が楽しめるかと思いきや、どちらかといえば黒澤明羅生門』に近いジャンルとして謎解きが展開されていく。プロットだけでなく、「門」の巨大オープンセットが作品を象徴するところも通じている。

羅生門 デジタル完全版

羅生門 デジタル完全版

そして『羅生門』では関係者の欲望自尊心のために事態が混迷化していったが、『JSA』では関係者の娯楽と利他心のために事態が混迷化していく。どちらも病んだ社会の生みだした結果だが、前者はドライで普遍性俯瞰から見つめたドラマとして、後者はウェットで固有性に注目したドラマとして完成した。

『JSA』は、境界線を超えた人間関係が、どれほど弛緩して見えても、はりつめた緊張感の上に成立していることを描きつづける。だからこそ、その交歓のかけがえのなさが実感できる。


全体としても、南北が分断された社会でしか成立しえないシチュエーションで、強圧的な国家に対する視点はユーモラスで、短いながら激しい銃撃戦は迫真のアクション……まだ発展途上だった韓国映画のもっていた強みが全面的に発揮されていた。

また、両国首脳が境界線を超えてみせた今こそ、より楽しめる映画でもあるだろう。もちろん娯楽映画としての誇張や改変も少なくないが、軍事境界線のポイントとなる情景を再現して、韓国視点から描いた分断国家の葛藤を体感できるはずだ。

*1:こちらの個人ページが実物との相違などがくわしい。共同警備区域JSA