糞虫文学

ページ名:糞虫文学

タイトル「真空に灯る炎」

●帝国南方委任統治区域 壕州
 第一級指定都市キドニーから沿岸を南下した場所に、帝国臣民女子の健全な育成を目的とした女子専門学校がある。
 全寮制のこの学園では、というよりこの学園のために出来た街では、警備兵から清掃業者まですべて女性であり、男性は肉親でも立ち入り禁止であった。
 この閉じられた世界の中で、学生達は絶対的な地位にいた。
 先日も学生が暇潰しに街の奴隷階級の民を嬲り殺しにしたが、当然のごとく罪に問われることは無かった。
 総じて彼女たちは究極的に自由であった。
 そしてそれは世相を反映しているのだろうか、過去の道徳であったり常識であったりを破壊し尽くした自由であった。

 先の世界大戦終結から5年後に設立された壕州校は40回目の卒業式を目前に控えていた

●古武家貴子(こぶけ たかこ)
の本名はタカコ・ケマケザといった。
 南方の出身で帝国南方財界の大物であるポリネシアンの父と、イギリス人と日本人のハーフの母を持ち2歳離れた弟が一人いる。
 母親似の目鼻立ちが整った美人で金髪ストレートのロングヘアーとメガネの奥の燃えるような赤茶の瞳が出会った者に強い印象を与える。
 褐色の肌はスレンダーな身体をさらに引き締めて見せており、その見た目の通り運動神経は中学入学以来6年間常に学年の上位であった。
 学業に関してもその負けず嫌いの性格から常に学年上位を保持した。卒業後の帝国大学進学が決定しており、内地への渡航の準備は先日終わった。 

●長戸部翔子(しなとべ しょうこ)
は小学校の頃から親元を離れこの学園で12年過ごした。
 父親が近衛師団幹部ということもあり卒業後は内地に戻り近衛師団学校習志野に入学する予定である。母と二人いる兄の記憶はほとんど無い。
 黒髪の長めのショートヘアーは日の光の加減でしばしば蒼く映る。切れ長の涼しげな瞳は幼少の頃から変わらない意志の強さを宿している。
 肌の色は透き通るように白い。肌は極力見せない信条から黒いタイツを好んで着用し、それはいつしか彼女のトレードマークとなっていた。
 その凛々しい容姿から、長く学生達のアイドル的な存在であり、また本人にもその自覚があった故、特定の女子との付き合いは無かったという。

●ユニ・バルクホルン(Juni Barkhorn)
といえば、それまでの獨国国家社会主義労働者党少女団からの交換留学生の硬いイメージを払拭する為に選ばれたとしか思えないほど陽気で明るかった。
 ユニの父親と翔子の父親の間に友好関係があることから、最初の頃の世話役を翔子が志願すると、以後3年間翔子の相棒的な存在として名を広めた。
 両親と兄二人姉二人弟三人の家族の中で彼女はいつしか妹の存在に対して憧れを持つ。実際彼女は後輩達の面倒見が良く、従って人気も高かった。
 翔子に匹敵する程の透き通るような白い肌を持ち、金髪をオールバックのポニーテールにしていた。おデコちゃんとあだ名を付けられ親しまれていた。
 一方で学園指定制服である黒いセーラー服を着ずに少女団の軍服を制服にするパフォーマンスが許される、そんなカリスマ的な留学生でもあった。

 この物語は古武家貴子が高等部の3年間級友だった長戸部翔子に愛の告白をしたところから始まる。

 ユニと翔子は学業運動共に好敵手同士であり、学園のベストカップルと呼ばれており、これは同盟関係良化のプロパガンダにも一役買った。
 貴子にしてみれば想い人を中心としたフレームの片隅にいつもいた人物だが、不思議と嫉妬心は無かった。
 学園内で同性愛は半ば公認されており、そして貴子はその中で人気が高かったが、貴子自身はどこかそんな恋愛騒ぎに白けていた。
 翔子やユニもそれ以上にアイドル的な存在ではあったが、やはりどこか醒めていて、そういった部分を含めて貴子は翔子に好感を持っていた。
 翔子に対して抱いた愛情も、またユニに対して抱いた感情も、自分自身と似ているというところが源泉だったのだろう。
 貴子が貴子自身が努力家を演じたように、翔子とユニもまた、それぞれ期待されている役どころを演じていたのだろう。

「デコスケといえば……」
 思い出すことが幾つもあるのは、翔子と比較的仲が良かった貴子が必然的にユニと絡むことも多かったからだ。
 学園の風潮としてスキンシップが激しく何かあるごとに抱あったり触れ合ったりするのが当たり前の中で貴子はその固い性格からか浮いていた。
 そんな中でユニだけは貴子によくじゃれ付いてきた、嫌ではなかったが、気を使わせているようで貴子のノリはいまひとつ悪かった。
 貴子の思い出の中に翔子がいる、貴子の思い出の中にユニがいる、彼女たちの思い出の中に自分はどういるのかなと考え始めた所で、目的の教室に到着した。

 こちらはひとり、あちらはふたり、なにか面倒なことが起こりそう、その頃には貴子は慣れない事はするものでは無いなと後悔すらしていた。


●夜の教室
には月明かりに照らし出された人影が二つ、翔子とユニだった。
「お待たせしたね」
二つの影がこちらを向く
「夜桜は充分見れたか?」
翔子は椅子から立ち上がって尋ねる。ユニは机の上に片立膝で座ったままだ。
「ま、今夜はあなたを見れれば満足よ、翔子、なんか煩わせちゃって悪かったかね」
貴子はおどける風に言いながら窓際の二人の方へ近づいた。
「?」
翔子のリアクションもおかしいが、ユニのそれはさらに違和感があった、何か身構えているようだ。
翔子が何か言おうとしたのを遮りユニが口を開いた。普段は流暢に話す日本語がどこかたどたどしかった。
「あのさタカコ、ユニね」
机の上から降りるユニ。
「好きなの」
今度は貴子が身構える、そしてもしやと思う。
「あなたのこと、を」
緊張していたユニは少し微笑んだ。目には涙が溜まっているように見えた。遠くで花見をしている学生達の拍手やわっという短い歓声が聞こえる。
「そっ……れは、光栄だけど、なんだか―――」
ややこしいことになったね、と言いかけて貴子は、喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。
「―――ブンダバーなことになったな」
と苦笑いの貴子。
「本当、ブンダバー過ぎてややこしい」
と苦笑いのユニ。翔子はだまったまま二人を見ていた。

「わたしは……」
翔子が沈黙を破る。
「二人とも好きだ」
右手でユニの、左手で貴子の手を握った。
「貴子はユニのことを好きになれるか?」
その瞳はいつもの様に真っ直ぐだった。
「私は勿論ユニのことが好きだし、そういう意味でも好きになれる、あと―――」
貴子はユニの手をとった。
「気付かなくて、ゴメン、フェアツァイウング(失礼しました)」
貴子がユニに照れ臭そうに微笑みかけると、感極まったのか笑顔のユニの瞳から大粒の涙がこぼれた。
「こんな落とし所があったとはね」
貴子はユニの涙をユニの手を握っている方のひとさし指で受け止めつつ独り言のように続けた。
「じゃあさ、キスをしようよ、三人で」
三つの人影はおおむね一つの塊の影になった。

三人の互いの顔が急接近し、そして唇が触れ合っ―――
「っと、ゴメン」
貴子は眼鏡を外し再度二人に顔を近づける。

唇の柔らかさ、頬の滑らかさ、吐息の甘さ、間近に見て改めて思う二人のまつげの長さ、貴子はこの瞬間を脳に刻む作業に没頭していた。
ユニはもどかしそうに舌を突き出す、三人の中で一番大きい胸を二人の胸ですり潰している、握り返してくる手は汗ばみ力が込もっている。
二人に同時に舌に吸い付かれた翔子は息を詰まらせたような悲鳴のような声を、きゅう、とあげてその場にへたりこんだ。
「ちょっと大丈夫かよ、しっかりしろよ!」
ユニが怒ったように声をかけ、翔子の手首を握り引っ張り上げようとするが上手くいかない。
翔子は虚ろな目をし、半開きの唇の端によだれを光らせながらブルブルと震えていた。軽く絶頂を迎えたのだろうか。

翔子が感じやすいらしいという噂は聞いていたが、まさかこれ程とは貴子は想像がつかなかった。
貴子は翔子を想い始めてから自慰の際には彼女が感じやすいというシチュエーションであれこれストーリーを創り愉しんだものだが、これはその想像を軽く超えていた。
これから起こり得ること総てが貴子の予想外であることを改めて認識した瞬間であった。
貴子は翔子を立たせる為に手を離しへたり込んでいる翔子の後ろに回りこんだ。
両の脇の下から腕を通し、腰に手をまわして立たせてみると、翔子は貴子が今まで見たことも無いような弱々しい表情をみせてくれた。

ユニは場の流れに敏感であったからこそ、例えば内地人の上級生と喧嘩をするような、大胆な学園生活を送ってこれたと言える。
そんなユニだからこそ貴子の中に芽生えた翔子に対する加虐心を素早く見つけ出していた。
確かに、今の翔子は普段からは想像がつかない程弱々しく可愛らしかった。そしてそれはこの3年間一度としてユニの見たことの無い表情だった。
そのギャップの大きさはユニにとっても大変魅力的なご馳走であった。
ユニは絶頂の連続をもって翔子の見たことの無い、恐らく誰にも見せたことの無い表情を強く見てみたいという自らの欲望に気付いた。
「ね、ユニ、まずは二人で翔子を、さ……」
貴子はこの瞬間の連続を見落とすまいとしているのであろう、眼鏡をかけ直していた。そしてその奥の瞳はどこか生臭く危険な類の光を放っていた。
「ヤー メインシュッセルはタカコ、この子は前菜ってトコかな?」
貴子とユニは軽いキスをして少し笑った。
貴子に後ろから抱きかかえられている翔子はうつろな瞳で口元だけでかすかに笑っていた。
恐らくこれから押し寄せるであろう快感を想像し、一足先にその快楽に浸っているのだろう。

結論から言ってしまうとこの夜の三人はあらゆる想像をことごとく良い意味で裏切られることになる。

●翔子
の右の耳を後ろから貴子の舌が執拗に這い回る。教室の椅子に座っている貴子の膝の上で、翔子は後ろからまるで逃がさんばかりに抱きしめられていた。
正面には隣の椅子を寄せて座るユニが身を翔子の胸に向かって乗り出している。
ユニは翔子の左耳に舌を執拗に這わせ、制服の上から翔子の胸をやや乱暴にまさぐっていた。
翔子は両耳から脳に唾液をたらされているかのような、ぴちゃぴちゃ、という音に支配され、自分自身の大きく甘い喘ぎ声に気付くことは無かった。
時間にしてたっぷり3分ほどこの態勢が続いたところで、翔子はいよいよしびれを切らした。
「―――ッ、はあああぁぁぁ!!!」
翔子はそう大きく喘ぐと両手で制服の上から自らの股間をまさぐろうとした。しかし―――
ガッ
その右手は後ろから貴子に、左手は前からユニに押さえられてしまった。
はぁはぁと息を切らし、恨めしそうなそれでいて脅えたような眼差しの翔子に貴子とユニは静かに言い聞かせるように告げた。
「イク時は三人一緒に、だよな?」
貴子のサディスティックな赤茶に燃える瞳は翔子の脅える瞳の奥を見つめている。ユニもそれに続く。
「独りよがりはダメだぞ、ショーコ」
二人の悪戯心は翔子にとっては正気を打ち砕かんばかりの悪意であった。荒い息のままそれは出来ないといわんばかりにイヤイヤと首を横に振る。
貴子の膝の上で出口を失った快感に身体をよじる翔子。その度に触れてもいないのに翔子の股間から、くちゅんくちゅん、と水音がした。
「翔子、イキたい?」
貴子は悪戯っぽくたずねる。すぐさま泣き出しそうな表情でコクンと頷く翔子。
ユニはそんな翔子が余りに可愛らしくて思わず笑ってしまいそうになるが、次の貴子の言葉にハッとなり笑いは消える。
「じゃあさ、立ってさ、パンツ脱いでオマンコ見せてよ、スカートめくり上げて」

この学園で少女同士の性行為は基本的に暗闇の中で行われるものである。
これは女性は肌、特に秘部などもってのほか、を他人に晒すことは大変恥ずべきことであるという内地の習慣に基いている。
また胸には直接触れ、場合によっては暗闇の中ならば晒し、口付けをすることはあっても、女性器に関してこれらの行為は絶対的に禁忌であった。
女性器に触れる際には下着の上からが秘め事のお約束であったし、また女性器同士を擦り合せる際は下着をつけてというのが暗黙の了解であった。
特に翔子のような内地出身者は上記の習慣が強く根付いており、極端に長いスカートを着用する傾向があった。
さらにその中でも翔子のような性格の者はさらにパンティストッキングを着用し極力地肌を晒すことを避けた。
その翔子に対してこの貴子の要求は翔子の尊厳を自ら捨てろと言っているようなものであった。

「そしたらクリトリスとマンコ!!直接!!……責めてイかせてやるよ?」
翔子はゆっくり立ち上がると貴子の方を向き頭を下げたかと思うとスカートの中に両手を入れた。相変わらずどんな状況でも決断が早い。
ふらふらと危なっかしい動きだったのでユニは後ろから翔子の腰の辺りに手をそえてサポートする。
翔子は一瞬動きを完全に止めた後で意を決したように恐らくパンティーとパンストを腿の真ん中辺りまで下ろし、そしてスカートをめくり上げた。
なぜパンティーを下ろしたのが解ったかというと、その際に、ぶちぶちぐちゅん、と大きな水音が教室中に響き渡ったからだ。
「顔を上げて見せてよ、あとそれじゃよくマンコ!!が見えないよ?腰をこっちに突き出せよ!!さあ!!」
翔子は顔を上げた。翔子は腰を突き出した。ユニは後ろから翔子の腰を押し出した。ユニはその時翔子が鼻をすする音を聞いた。
「!?(泣いているのか!?)」
後ろに位置しているユニからは翔子の表情は見えない。だが椅子に座ったまま翔子を見上げる貴子の表情は見える。
「!!??(なんて表情をしているんだ!!タカコは!!)」
それはまるでテレビのドキュメンタリー番組で観た満州の阿片中毒者のような、そしてまた扇動宗教家が神を説く時のような表情であった。
おお、見えた!!窓際の席に座る貴子のすぐ後ろの窓ガラスに翔子の顔が映っている!!涙でぐしゃぐしゃになりながらも快感に笑っている!!
「おお……(まったくなんという表情だ!!ショーコはもう、ひとつの芸術品だ!!ハイル・ショーコ!!ハイル・ヤマトナデシコ!!)」

ユニは動きが止まっている貴子に次のアクションをうながす。貴子の右手をとり翔子の股間にもっていく。
同時に自分の右手を後ろから翔子の股間にもっていく。貴子の手とユニの手がほぼ同時に翔子の秘部に、直に、触れる。くちゅん。
「あっはあああぁぁぁ!!」
たぱっ たぱぱっ
二人が触れたと同時に小便を漏らしたかのような盛大な潮吹きを見せる翔子であった。愛液は内股を伝い編み上げのブーツにまで達していた。
「あはっ、何これ、何これ!!何なんだよ、これはよぉ!!」
貴子の中で何かが弾けたのだろうか?貴子は右手で翔子の股間を激しく乱暴に弄り、左手のひとさし指と中指は翔子の口の中で舌を蹂躙していた。
ユニも貴子につられる様に左手で後ろから激しく乱暴に翔子の股間を弄った、また右手は支えるように翔子の左腿を抱えた。翔子の内股は吸い付くような手触りでどこまでも甘美的であった。
「うぐ、ぎぎぎ……」
たぱぱっ たぱぱっ たぱぱっ たぱっ
翔子はまた絶頂を迎えたようだ。と同時に口の中の貴子の指を強く噛んだようだ。
教室の床には翔子の愛液だけでなく貴子の指から流れる血も落ちていた。
「あっ……」
うつろな瞳の翔子が半開きの口から血を流しながら不安そうに血まみれの指を舐めている貴子を見つめている。
「これは……キツいお仕置きが、必要みたいだね?」
そう言うと血まみれの指を翔子とユニに貴子は見せ付ける。その指の傷の深さは甘噛といったものでは到底無く、鮮血が勢いよく滴り落ちていた。
「はあ……ったく、ちょっと待ってろよ!?」
ユニは翔子の身体を貴子に預け、ポケットからハンカチを取り出し貴子の指にあてがった。そして各教室に備え付けの救急箱へ急いだ。
貴子は再び膝の上に帰ってきた翔子と熱い接吻をしていた。二人とも口の周りを血まみれにしながら離れ難い接吻をしていた。

「タカコ、あたしにも……」
「うん」
ユニはさし出された貴子の指の血をねぶった。そして手際良く消毒を行い包帯を巻いた。
「はいよ、一丁上がり」
「ダンケシェーン」
二人は軽く舌を絡ませるキスをまるでお互いを落ち着かせるかのようにした。
その二人を見つめる者に二人の視線が向けられた。
「じゃあお仕置き開始だな」
「ヤー」
机の上には貴子の治療の間、屈辱的な格好をさせられていた翔子の惨めな姿があった。

●尻の穴
まで晒す態勢では勿論秘所も丸見えであったが、それをさらに自らの指で開くように貴子とユニに翔子は命令されていた。
ユニが救急箱を持って帰ってくると、その魅力的な数々のアイテムで貴子は治療より先に翔子のお仕置きの仕込みを開始した。
スカートは脱がされ、パンティーは救急箱のハサミで切り裂かれた。
ノーパンの状態で翔子のトレードマークでもあった黒い、今は愛液でさらに黒々とした、パンストを履かされ、股の部分を引き千切られた。
そして上品に生え揃っていた翔子のやや薄めの陰毛は救急箱の剃刀ですべて剃り落とされた。
机の上に仰向けに寝かされ、息を荒げる翔子。指で開かれた割れ目と尻穴を際立たせるように月の光が無慈悲に照らしている。
翔子のその非日常的な姿は幻想的な芸術オブジェのようであった。

「お待たせえ~♪」
貴子は救急箱に入っていたゴム製の手袋をしながら、おどけて翔子に語りかける。
「ああ、まだ結構あるよ、もう一個予備があったよ、ワセリン」
ユニは貴子に応答しながら、顔は翔子に向けプラスチック製の容器をちらちらと翔子に見せつけていた。

「あああ……許して、お願い……それだけはイヤぁ……」
貴子とユニにマッサージをするかの如く肛門にワセリンをたっぷりまぶされながら翔子が泣く。
もっともこの状況にあってはそんな翔子の哀願の涙など貴子とユニの加虐心の火に注ぐ油でしかなかった。
「お姉さま、にも……見せたことも触られたことも、無い、のに……」
貴子はしばしば思ったものだった、翔子は『天然なのか狙っ天然なのか』解らないと。
そして貴子は今思う、ユニの過去の三角関係で翔子を取り合った相手の名前が今出てくるのは、翔子が狙っ天然だからだと。
カキンッ!!
「……ショーコ?私は見たり触ったりするだけじゃ、ないよ?―――」
貴子と翔子はユニから何らかのスイッチが入る音が聞こえてきた気がした。
「―――ッ挿れたりほじくったりっ!!めくり上げたり壊したりっ!!ぶっ壊したりするんだよっ!?ぶっ壊したりするんだよっ!!あははあ!!さあさあアイーンスゥ!!」
翔子の肛門にはユニの右手の中指と薬指があてがわれていた。なんだかやけに興奮していてブルブルと震えているユニの指が。
「ツヴァーイ!!」
涙目の翔子がすがるような瞳で貴子を見上げる、が、貴子は目を閉じて首を横に少し振るだけだった。
「やっめ……」
翔子は両手でユニの手を止めようとするが見るからに力が入っていなかった。
「ドラーイ、へへへっ」
まるで惨劇に目を覆うかのように青い月に雲がかかった。

ズッッッずっぷうううっ メリッメリメリメリ……
「ひぎぃぃぃ!!ぐううう、うぐううう、ぐぬぬ……」

「ほーら、ガーンバーレ!!ガーンバーレ!!」
「ひぎぃ!!ひぎぃ!!」
その美しいオデコに珠のような汗を浮かべ、目を爛々と輝かせたユニが翔子を責め立てる。
貴子はひとしきり翔子の肛門を弄んだ後、机の上に仰向けに寝ているいる翔子の右手側に椅子を寄せ、ゴム手袋を捨て翔子の手を握った。
貴子は間近で翔子の苦痛に歪む表情をその目に焼き付けていた。それは決して美しいと呼べるものではなかった。
白目を剥いて痙攣する翔子。歯を食いしばり目をきつく閉じる翔子。涙を流し、鼻水をたらし、意味不明の言葉をつぶやく翔子。
しかし、私はこんな翔子を見たかったんだ。貴子は思った。私はこんなショーコを見たかったのだ。ユニは思った。

「ショーコは今、ケツアナからマンコいじられてまーす!!」
ユニは人差し指を追加し合計三本の指で執拗に責め立てていた。腸の中で指を変な風に曲げているようでこれが翔子に効いているようだった。
「んはーっ!!んはーっ!!んはーっ!!んはーっ!!」
貴子は教室備え付けの缶入りの水を口移しで翔子に飲ませてあげていたが、どうやら翔子に限界が近づいているように感じ始めた。
「んーっ!!はーっ!!んーっ!!はーっ!!……んーっ!!……はーっ!!……んはっ!!」
ビンッ!! グリン!! ブクブクブク…… ッッッ シトトトトポチャポチャポチャ フッ……
「これはっ!?」
「ショーコッ!!」
翔子は身体全体をありえない位反らし、白目を剥き、泡を吹いて、絶頂の絶頂を迎え、失禁し、失神した。

●ユニ
は二人きりになるや早速貴子のことをきつく抱きしめた。机を並べた特性ベッドの上で翔子は寝息を立てている。
「変な質問かも知れないけどさ、あたしのどこが好きになったの?」
貴子は椅子に座っているユニの膝の上に座り、身体を深くユニに預けた状態でたずねた。
「一言で言うのは難しいんだけど、最初は理想の妹って感じでタカコのこと好きになったな、可愛いなって思ってさ」
ユニは貴子の右の首筋やら頬のあたりに後ろから鼻を押し付けて、ふんふん、と匂いを嗅ぎながら答えた。
「こんな妹がいいのか?それにそんなに可愛くないぞ?」
貴子は少し照れ臭く恥ずかしかった。自分自身の評価として自分は可愛げの無い女子と考えていたからだ。
「そういうところが可愛いよ、逆に可愛い可愛いしてる子は、なんかね、好きになれないよ」
「ふうん」
気のないようなリアクションだったが、今のやり取りは貴子の心の、普段人に見せない部分にそっと触れた。

貴子がひた隠しに隠してきた否定し難い感情が2つあった。
ひとつは誰かに可愛がられたい。
もうひとつは誰かに甘えたい。
どちらももう既に諦めていた空想話でしかなかったのだが、高校生活の最後の最後でダークホースが現れた。
「そっか、ユニがいたか……」
貴子がユニに向き直るとユニは照れ臭そうに笑っていた。
「どうした?ユニ」
「うーん、タカコのこと結構本気で好きになっちゃったんだよな」
「うんうん、嬉しいこと言ってくれるじゃないの」
「大事にしたいとか関係を壊したくないとかあってさ」
「うんうん」
「あんまりセックスのシミレートしてないんだよねえ、正直なとこさ」
「あらら……」
そしてふたりは、うふふふと笑った。くすぐったかった。それはさっきまでと違う種類の甘い痛みだった。

「でもさ、ユニは私のことでオナニーしたりしてくれなかったの?」
「タカコの妄想でオナニーは散々やったよ、だけどシミレーションとは違うなあ、いろいろ勝手やったし、あ、気を悪くしたらゴメンな」
「ううん全然、ね、それを教えてよ、私どんな風にしたらいいかな?」
真顔になるユニ。貴子は努めて表情をかえないように微笑んだままでユニの回答を待った。
「……いいのか、タカコ」
貴子は静かに頷いた。今となってはユニの記憶の中に少しでも残りたいという気持ちが何よりも強かった。
「いいよ、ユニだったら」

教室の後ろ側の壁は全面白板になっており、通常年間のスケジュールや連絡事項等がごちゃごちゃと書き込まれている。
今は真っ白のその白板を横にスライドさせると主に家庭科授業で使うための大鏡が現れる。
今その鏡に二人の抱き合っている少女達が夜の青い教室と共に映し出されている。
貴子はユニの服を脱がせながらチラリチラリと鏡を見つつ呟く。
「こうやって鏡に映ってる自分たち見るとさ、凄くイヤらしい事してるって感じするね」
「イヤだったら止めてもいいぞ、その、タカコに嫌われたくな―――」
貴子は人差し指をユニ唇に押し当てて言葉を遮ると今度は自分の服をさっさと脱ぎ始めた。
「嫌になったら教えるよ、それまではユニに話してもらったシナリオで行きましょ?」
セーラー服の上下を脱いでブラを外せば残りはもう絹のパンティーと絹のハイソックスと編み上げブーツだけだった。
ユニも制服を脱ぎ去り黒いパンティーと黒いハイソックスと黒いブーツだけの姿になっていた。
「ふふふ、ちょっと緊張するな」
そう照れ隠しの様におどけていうと貴子は両膝をつき、目の前のユニの黒い厚手のパンティーを下ろした。
「では、頂きます」
その声は笑顔とは裏腹に震えていた。貴子は目を閉じるとそっとユニの濡れそぼった秘所に口付けをした。

鏡に映し出される性行為はどこまでもいやらしく相乗効果的に貴子とユニを淫らにしてゆく。
「ふぅん、いいよぉタカコ、こっちを見てぇ」
ユニが甘えた声を出す。どうやら自分の性器を舐める貴子の上目遣いに高い性的興奮を得ているようだ。
貴子は鏡に映し出されている自分の屈辱的ともいえる姿、そして淫らな表情をうつろな目で横目に見る。
ふと思い立った貴子はユニの両手をとり、自分の頭にもってくる。
「どこが気持ちいいのか手でガイドしてよ」
しかしその姿はまるでユニが貴子の頭を押さえつけて自分の性器を無理やり舐めさせているかのようであった。
「タ、カコっ、ユニもう……っ、ユニッ、もうっ!!」
ユニの絶頂が近いようだ、貴子の頭を押さえつける手に力が入る。
そしてまるで貴子の顔に自分の濡れそぼった性器を押し付け、汚すことに興奮しているようでもあった。
貴子はそれを受け入れ、そしてその屈服することで得られる快感を受け入れた。
今貴子の身体の芯は体験したことの無いおだやかな温かい快感がじんわり広がっていた。
「タカコ!!タカコッ!!タッ!!カッ!!ッアアアァァァッ!!―――」
その時貴子はなんだか愛というものを少し理解出来たような気がした。

●貝合わせ
というネーミングセンスにはいささか異議を唱えたくもなる貴子であったが、ユニのリクエストだし野暮な突っ込みは避けることにした。
学園の女の子のカップルがとても仲良くなると女性器同士を擦り合せることで快感を得る、それが俗に言われている貝合わせだ。
「で、それを私たちは直に生で行う訳ね?」
今夜ここまでどれだけの禁忌に触れてきただろうか。貴子にはもう戸惑いは無かった。
しかし、ユニに対して、他人に対して、股を開く、という行為を行う際には若干の躊躇があった。
教室の真ん中に机を集めて作った舞台の上で横たわる二人の時間が瞬間止まる。
貴子が股を開きユニを受け入れ、ユニが覆い被されば出来上がりなのだが、貴子は股をぴっちりと閉じたままだった。
ユニは優しく微笑みかけると貴子の顔中にキスをし始めた。首筋、胸、肩から腕、指先は念入りにキスされた。
指先を舌でベロリと舐められた時は頭の中と背筋に小さな火花が散ったような感覚があった。
ユニの唇はメインのシュッセルを楽しみにとっておくかのように秘所を避け、貴子の身体はひっくり返された。
貴子の引き締まった尻の肉にユニが吸い付いているのが解る、恐らくキスマークがついたであろう。
その次はまたひっくり返され、ユニの唇はいよいよ貴子の、産毛のような柔らかな金髪の毛が濡れそぼっている秘所に近づく。
ぴっちりと閉じているその割れ目を指で押し広げて優しく口付けをするユニ。口付けしながら何か呟いているようだ。
「……イッヒ リーベ ディッヒ」
貴子はそこで静かにユニに身体を開いた。ユニの唇は今貴子の唇と熱く重なっている。
二人の秘所はもうお互いにとって秘所ではなくなっていた。強く強くすり合せられていた。
激しく動きお互い汗をかいた。靴下と履物以外は身につけていない二人。お互いの汗、唾液、愛液が混ざり合い二人の間を埋める。
「……!!」
ユニが何かを言っているが貴子には聞こえていない。
「……!!」
貴子が何かを言っているがユニには聞こえていない。
それなのに二人は何を言っているのかは理解していた。
二人は笑った。二人は泣いた。そして二人はお互いの愛を確認し、絶頂を迎えた。

二人の息が整い始めた頃、のそのそと翔子が起きてふたりの間に混ざってきた。
くすんくすんと鼻をすすっている、貴子とユニに取り残された気持ちになっているのであろう。
「今度は三人で今みたいなのをやってみない?」
その結論はある意味必然だった。

●夜の校庭
ではこれまで見たことが無いような異様な光景が繰り広げられている。
夜桜祭りの期間は校庭の真ん中に焚き火が置かれることになっている。
校庭を取り囲むように桜が咲いており通常はその桜の下で生徒達は焚き火の灯りをもとにお酒を飲んだり愛し合ったりする。
だが今年は違った。
それは夜半近くに卒業予定の最上級学年の超有名生徒三人がなんと全裸で現れたところから始まる。
その中の内地人がこう高らかに宣言した。
「諸君らの胸に真実の炎を灯して差し上げよう!!」
どうやら事前に指示を受けていた下級生達が頬を朱に染め体育館からマット、寄宿舎からシーツを持ってきて焚き火のまわりにセットアップを始めた。
その後は、そう、その炎を囲んで全校生徒の大乱交パーティが始まった。
それがこれまで見たことが無いような異様な光景であり、確実に今後も見ることは無い光景であると言える。

「君は変わってるな」
「君も変わってるな」
「ここまで付き合ってくれた君もそうとう変わってるよ」
「ははははははは」

あの三人だから出来たこととして後々までこの日のことは語り継がれることになる。
それは真空状態のこの都市で瞬間灯った奇妙にして華麗な炎達の物語であった。

END

 

タイトル「素敵な卒業式」

「沢渡先輩、『特別好き』な人がこんなダメダメのビッチで幻滅しましたか?」
 長らくの沈黙が悪意ある一言で破られた。

 卒業式を目前に控えた学園生活の匂いが消えた女子高等部三年生の教室、雲が厚く薄暗い夕暮れ時。
 机を挟み向かい合う私の右手の指を咥えて、その形の良い唇から淫らに唾液を滴らしながらしゃぶっているのは、私が密かに憧れていた級友朝霧涼子。
 彼女を椅子に座った自分の膝の上に乗せ後ろから逃げださせないかのように左手で腰を抱きかかえ、右手でなにやら乱暴に彼女の下腹部をまさぐっている後輩二宮晃子は私に問いかけてきた。

 すると涼子は両手で私の右手を包み込み、唾液にまみれ糸を引く指を舌を絡ませながら引き抜き、彼女の柔らかな頬に押し当てて言った。
「私、沢渡さん……悠子さんに好意を持ってもらっ、てっ、くうぅ」
 切なげに美しい顔が歪む。
「嬉しかっ、たっ……けどっ!!」
 涼子の涙は私の右手に温かく、触発される様に私も涙で視界が歪んだ。
「んダメ、なの」
「なぜ!?なんで!?なにが!?」
 私の頬を涙がぼろぼろと零れ落ちた。
 私は眼鏡を外すともうすぐ用済みになるセーラー服の袖で涙を拭い、二宮晃子を真っ直ぐに睨みつけた。
「ほら、ちゃんと言っておあげなさい、ふふっ」

「私は……涼子はっ、晃子様におま○こっ調教、されたっ」
 そんな汚い言葉を口にしないで―――激情がのどまで吐しゃ物と共にせりあがって来た。
「ド淫乱のぉ、メスッ、ブタッだからっはぁあっ」
 私はなぜか無我夢中で首を横に振って否定を表現したが、それを見た二宮は声を出して笑って、いた。
「だか……らっ悠子さ、んと」
 嗚咽が痛々しい、私の胸に突き刺さる。
「これからは、お付き合い出来ませっ、んんんん!!」
「あはは、言った言った!!おら、ケツアナにご褒美やるから派手にイクとこ魅せてやんなっ!!そらっ!!」
「んぎいぃぃいい、イッてッ、よろしいでしょ、うかあ、も―――」
「よし!!イケ!!イケッ!!ははは!!イッちまえブタ涼子っ!!」
 ……もう私のことは眼に入って……無いみたいだな。
「ああぁぁいっくうぅぅぅぅ」
 涼子は立ち上がり背筋を反らして曇り空に喘いだ。

 彼女はどうやら絶頂に達したと同時に失禁したらしくパシャパシャと水音を足元でたてていた。
 いつの間に机の上から落ちたのだろう、その水滴は、私が彼女に贈ったラブレターの上に降り注いでいた。
『変に思うかもしれないけど、私は涼子さんのこと特別好きなんだ』
『どうしても、この想いだけは伝えておきたくってさ』
『迷惑だったかな、自分勝手でごめんね』
『でも、もし涼子さんが良かったら卒業した後も、仲良くして欲しいです 悠子』
 

タイトル「赤い月」

「ほら、目ぇ閉じてんなよ、開けよ!!」
「またキツイのかまされたいのぉ!?今度はお顔にいっちゃうよぉ!?」
「そうそう、初めてのひとの顔をよーく記憶に刻み付けておけよ」
「ははっ初めての『ひと』かぁ?」
「ほら頭上げてディープキスしろよ、ヨダレ飲めよ」
「あと結合部分もよーく見ておいてねん」
「ビデオこっち回れよ、この表情(かお)最高」
「お、射精してるよ、あふれてる!!」
「……これって赤ちゃん出来る?」
「出来るわけねー」
「よーし、そろそろ時間だ、撤収、撤収、はじめての『ひと』鎖につないどいて」
 ━━━渡辺華子の初体験の相手は犬だった

「華子ちゃん、二人っきりの時は、お姉さま、って呼んでくれないかな」
 生徒会長である山崎梨花は照れたように言った。二人きりの生徒会室、華子は手伝いの手を止めた。
「あ……う、嬉しいです」
「ふふっ、ね、呼んで」
「ぉ……」
「ほら」
「お姉……さま」
 二人は顔を近づけて笑った。
『ふふふっ』
 華子は憧れのひとである梨花といるために、生徒会に入会し、放課後のほとんどは生徒会室で過ごした。
 他の役員が気を利かせているのか、大概はふたりが最後まで残っていた。
 華子は梨花の長い髪をブラッシングするのが好きだった。じゃれるように梨花に抱きついたり、時には見つめ合ったりする度に、憧れ以上の感情、恋心に胸が甘く疼いた。

「午前零時に誰にも内緒でここにきて」
 ある日梨花の署名で地図付きの手紙が届いていた、そこには学園敷地内の倉庫、もっぱら寮生の逢引き場所として有名、が記してあった。
 華子と梨花は同じ寮で生活していたので時にはお互いの部屋の行き来はあったが、深夜のお誘いは初めてだった。華子は一年の入浴時間を目一杯使って身体を念入りに洗った。
 月の赤い夜だった。
 新緑の季節だがまだ少し肌寒さが残っており、華子はパジャマにガウンを羽織って約束の場所に早めに着いた。緊張で心臓の音が全身を揺らしているようだった。
 倉庫の扉が開き入ってきた、複数の人影は全員仮面を着けていた。
「パーティーが始まるよ」
 影の連れている犬は、何を興奮しているのか息が荒かった。華子は恐怖感で吐き気がした。

「……こんなの、うそ、しんじない」
 華子は今、打ちひしがれて全裸で倉庫に横たわっている。
「チクったら、このビデオと写真ばら撒くってさ」
 華子は目線だけを向ける。
「なぜ、こんな」
「知らないよ、あたしら頼まれただけだから」
「だ、だれに……」
 仮面が全員、入り口の方に顔を向けた。
 髪の長い少女が赤い月を背負って入り口の扉のところに立っている そしてゆっくりと仮面を脱ぎ捨てた。
「わ・た・し、私よ華子ちゃん」
「う……そ……」
「まぁー、って訳だから、怨むんなら生徒会長怨みなよ、じゃ」
 廃倉庫には2人だけになった。

 梨花はうっとりとした目で華子を見下していた。これほどまで淫靡でサディスティックな表情、もはや別人の顔だった。
「なんで、こんなひどいこと、を……」
「ふふっ、可愛くて仕方ないから、かなぁ」
「私のこと好きじゃなかったんですか」
「愛してるわ」
「だったら」
「だからよ」
 華子は気が遠くなった。
「それがいいんじゃない」
 どうやら梨花は傷ついた華子を感じて自慰に耽っているようだった。華子は薄れ行く意識の中で梨花の絶頂の喘ぎ声を聞いた。それは何か大切なものの消滅の合図に思えた。
 その後、ノイローゼになり自殺未遂を繰り返した華子であったが、ある日、目の前に差し出された手を受け入れ復活、もしくは生まれ変わった。
 それは悪魔の手だった

 そして後に学園に華子一派の粛清の嵐が吹き荒れた頃、二人は再び向かい合った。華子は初代風紀委員の委員長になっていた。主に生徒会の不正を浄化するのが役割だった。
「お姉さま、美しいですわ」
 学園乗馬クラブの厩舎、立った姿勢で全裸で拘束されている梨花は後ろから馬に犯されていた。
「ゆる…し、おねが」
 華子は微笑んで注射器を取り出した。
「愛しているから破壊するのだとあなたは言った……」
「やめ……」
 針を梨花の腕に突き立てる、致死量限界の催淫剤で確実に精神が崩壊する分量。
「今なら私にも、それが、わかる」
 それから華子は、梨花の精神が崩壊していく様を眺めながら自慰に没頭し、夜明けまでに無限の絶頂を覚えた。
 そういえばこの夜の月も、血のように真っ赤な色をしていた。
 

タイトル「サバサバした彼女たち」

 都心の御寿司屋さんの開店直後。
 特に目立つ美しい女性と可愛らしい女性がカウンター席につく。
 最近はいわゆる「おひとりさま」の女性客も増えたが、同時に「おひとりさま」が2人入店してきたのは、これが初めてだった。
 席はひとつ空けて隣同士になった。
「飲み物なんしやしょう」
「ビール、エビスはある?」
「あ、私は日本酒、冷で下さい」
「かしこまりやしたあ、で、まずはなんか造りましょうか、それともお寿司から始めやしょうか」
「お寿司から始めるわ」
「私も、お寿司からお願いします」
「へえ、じゃまず何から握りやしょうかね」

「サバ」「サバ」

 顔を見合わせるふたり、しばらく見つめ合う。
 寿司屋のおやっさんはつるっぱげの額を叩いて嬉しそうに言った。
「ははっしょっぱなからヒカリモンなんて、お嬢さん方ぁなかなか良いトコ突いてるねェ」
 可愛らしい方の女性がにっこりと微笑み返すとビジネススーツの美人はてれた様にはにかんで会釈した。
(年下かな?可愛い顔してるのに雰囲気あるなあ)
「ヘイ!!お待ち、サバサバ」
「ん」
(美味しい、あ、彼女も幸せそうに食べてる、可愛いかも)
 二人は同時に飲み物に手をつけた、ビールを口にしながら横目でお隣さんの様子をうかがう。
(可愛いのに艶がある柔らかそうな唇だな)
「…キスしたい…」
「へい!?」
「あっ!!」
「!?…ふふっ」
 願望が思わず口に出てしまったようだ。

「えっと、あのー『キス』お願いします」
「じゃあ私も…」
 そこで確かに可愛いのだがどこか小悪魔的な微笑を浮かべ、隣で戸惑う彼女の切れ長の瞳を見据え、囁きかけるように宣言した。
「キス」
「…あっ」
 普段は勝気なその切れ長の瞳を潤ませ、彼女は軽くイッた。

 それから二人は意気投合し、店が込み始めたこともあり、隣同士仲良くお寿司をつまんだ。
 小悪魔な彼女はおやっさんや周りの目を盗み、隣の席の彼女の形の良い乳房の突起やクリトリスもつまんだ。
 おやっさんはただならぬ雰囲気に妙なハイテンションで仕事を進める。
「ハヒッ!!ハヒッ!!お待てぃー!!」
 男勝りの女弁護士の仮面は完全に剥され、彼女は次第に、可愛い小悪魔の大きな掌の上で、まるでシャリのようにネタを乗っけられ、握られている錯覚に陥った。
(ああ、握らな…転がさな、いで…私、お寿司になっちゃうッッッ!!)
「イッ!!」
(ああっダメダメダメ!!ダ…)
「イクぅー!!」
 店内に響き渡る絶叫と共に絶頂を迎えた。
 静まり返る店内の静寂を小悪魔が破る。
「ああ…良いわね、じゃあ『イクラ』よろしくお願いしますね」

「お会計お願いします…一緒で」
「ヘイ!!おあいそぉ!!」
 ぐったりとした彼女の腰を一回り小柄な彼女が支える。
「飲み過ぎみたいね、ふふっ」
 二人は淫靡な雰囲気を振り撒きながらハイヤーに乗り込んだ

「…おやっさん」
「俺もまだまだ修行が足りねぇな」
 おやっさんはいろんな意味で果てていた。

 高速をゆくハイヤーの中。
「ねえ、あなた、これからウチにこない?」
 手掴みでお寿司を食べていた彼女の指を、彼女の虜になった子猫が舐めて綺麗にさせられていた。
 タイトスカートは膝まで下ろされ、もう一方の手で下腹部を弄られているのだ。
「美味しい『あわび』をご馳走して上げるわ」
「お、オチがっ、オッサンくさ…イッ、イクぅー!!」
「オッサンじゃなくてオネエサマ、ね」
 彼女たちの夜は、まだ始まったばかりである。

 

タイトル「わぁいでひぎぃ」

としあきは眠りについた

すると夢の中に見知らぬ美少年が現れ、無邪気にこう言った
「さ、お兄ちゃんを『開発』させてもらうよっ!!」
(中略)
と「ひぎぃ!!た、たすけ…ぎぃっ!!」
少年「ほーら、がーんばーれ、がーんばーれ!!」
(中略)
もうこの少年無しにには生きていけない、
そんな風に考えていたある日のこと…

「ねぇ、とっしー、何ぼーっとしてんのよ」
「あ?」
「あ、じゃないよー、早く行こうよ、観覧車乗れないよ」
文字通り夢の中で繰り返される秘密のデート
その夢のような時間を通じて私はあることを確信し始めていた
デートで訪れる場所、少年の振る舞いや仕草、夢の中の空気の色
これら全ては遠い昔に経験し見ているものばかりだった
2人を乗せた観覧車は最上部に差し掛かり、そこで停止した
少年は私を見て困ったように微笑んでいた
夕日の中の少年は相変わらず美しく幻想的な風景に溶けこんでいた
少年「…うん、キスしてよ、お別れの」

私は少年をそっと抱きしめて唇に触れるだけのキスをした
と「お別れってことは、俺も、もう御終いってことか?」
少年「気付いてくれたから、辛いこと話さないで済んで良かったよ、
ありがとう、最後まで優しいんだね、とっしー」

この少年は俗に言われるところの死神なんだと思う
幼い頃親戚の葬式で何度か見かけたことがあった
そしてデートの風景は消え去ったものばかり、
この遊園地にしても私が小学校の頃閉鎖されている
と「ん?どうした?楽しい時間を過ごせて満足だったよ?」
少年の様子が少しいつもと違うのが気になった

少年はその美しい顔をクシャリと歪め、堰を切った様に泣き始めた
少年「ボッ、ボクさっ、本当はっ…本当はこんな仕事っ、したくないんだ!!」
私は何時しかもらい泣きをしていたようだった、私は彼を強く抱きしめた
少年「だけどっ、なんか昔に悪いことしちゃったみたいでっ」
私の胸に顔を埋め泣き叫んでいるこの少年の苦悩を取り除くために私が出来ることを考えていた
少年「好きになっちゃう人が死ぬところばっかり、ばっかりもうずっと見させられてっ!!」
私はあることを思いついた

と「なあ、俺さ、これからどうなるんだ?」
少年「?…魂は天国に行く事になってるよ?」
観覧車のドアが開いた、そこから天に向かって階段が伸びていた
と「これを拒否すると地獄行きって訳か」
少年「!?だっダメだよ?そんな…」
私は少年を抱きしめたまま観覧車のドアを出て、階段を上る代わりに地面目がけて頭から飛び落ちた
と「こんなロマンスも、良いかなあって」
少年「とっしーのバカバカ!!大好き!!」

私の当初の目論見では、天国行きを拒否し、
少年と死神をやることになるかなと思っていたが…

気付いたら朝だった
と「生きて…地獄を味わえってか?」
隣には少年の姿があった
少年「なんか、とっしーのせいで、地獄追い出された、面倒みてよ」
この子と一緒なら何でも出来るそんな気がした
退屈そうな天国よりもこちらの選択の方が、
どこまでもE&Eな感じだし、としあき好みだと私は思うのだった

END
もう一人の少年「あなた方のせいで、天国を追い出されました、面倒みて頂けますよね?」
と「マジか!!」
少年「なんというオチのような展開!!」

 

タイトル「声がきこえる」

起 留学先から帰ってくると母国は、
黒一色に白文字の警告文が至るところで踊っている奇妙な国になっていた
街中には黒地のポスターが溢れ、テレビでは一定時間ごとに画面に、
黒い背景に白文字を映し男の声がその警告文を読み上げた

承 警告文の内容は国民の危機感を煽るようなものばかりであった
慣れていない自分には強迫観念が強過ぎて不快感が湧いたが、家族に聞いてみるとすぐに慣れるとのこと
しかし時々街中で見かける引き千切られたポスター、慣れない、むしろ反発している人もいるようだ
俺は反発している人々に共感したが、それを口にすることはまわりから異端視されてしまうので避ける風潮に流された

転 危機感が煽られ過ぎた結果、国民は危機感に慣れてしまい、いつしか危機感を持たなくなっていた
危機感を持たなくなったという危機に関しては黒地のポスターは沈黙していた
そしていつしか街中からポスターが、テレビから男の声が、国民の危機感と共に消えていった
「連中」が現れたのはそれと同じ時期だった

結 ある日水平線の彼方から怪物の集団がやってきた
ビル程も有る大きさの巨人 翼を持った人型
泳いで上陸したと同時に変態を遂げ陸上を高速移動するものetcetc...
それらの怪物は実はあまり強くないことが自分の経験からわかった
しかしそれより何より人間は抵抗することをしなかったので、「連中」はほぼ一日で国内を制圧した
危機感の無くなった人々は薄笑いを浮かべ、怪物に犯され喰われていった、街も文化も国の尊厳もすべて破壊された

END 俺は今も地下に潜伏し絶望的な抵抗活動を続けている 地上に響くあの男の声
今でこそ解る 人間の本能が認識するその声 悪魔の声だと

 

タイトル「新生」

「やるか…痴漢を」
俺はこの不審者むき出しの台詞を、こともあろうか満員電車の中で、思わず口に出してしまった。それも結構なボリュームで…マズイ。
「…痴漢、とかやるなんて何考えてるんですかねぇ、まったく、ハハハ」
ひとりフォローを入れてみたが、もう遅い、いや、それ以前にまったくフォローになっていなかった。
「いや、実は今書いている小説の主人公が痴漢をですね…」
誰に話しかける訳でもなく独り言を続ける俺。
「書いていると言っても自分が書いている訳じゃなくて、自分は朗読をですね…」
ますます支離滅裂になってゆく、俺は右手の人差し指を話相手に見立てて独り言を続ける。
いわるゆるキングの小説、シャイニングのトニーレッドラム状態だ。しかし今の俺の精神状態及び挙動は映画版の終盤のジャックそのものだった。つまりダルボーイ。
それにしてもなんというピエロ!!なんという悲笑路(ピエロ)!!
俺は余りに切羽詰った状態にいる自分が滑稽に思えて、いつしか声を上げて大笑いしていた、次の駅で降りよう、仕事は遅刻止む無しだろ、これ。
俺は高らかに笑いながら電車を降りたがその目からは、なぜだろう、涙がこぼれ落ちていた。
一応断っておくがこの話はフイクションだ―――
―――解ってるよ、これが無駄なフォローだってことは。

ことの発端はネットラジオだった。
俺は人生のささやかな楽しみとしてネットラジオの配信を行っていた。
経験者には言うまでもないことだが、ネットラジオの配信は楽しい。
中毒性があるという意味でドラッグと似ている、またしばしば毒薬となるところも似ていると言える。
ネットラジオの禁断症状で手が震えた人も多いと聞く、ソースは俺。
前回の配信でとある小説作品の朗読を行った、「新生」という作品だ。
当日体調が優れなかったこともあるが、俺はその小説を上手く朗読することが出来なかったと思う。
朗読の技術的なことは勿論だが主人公の独白的な文体を読上げるにあたって俺には足りなかったのだ、主人公の歪んだ性癖、痴漢をするという経験が。
そしてまたその小説は主人公が痴漢を行った相手に屈服させられることで新しい自分を発見するところが山場なのだが、俺の朗読は経験不足からその山場を登り切るどころか転がり落ちてしまった。
山場というよりはヤマンバ状態だった。そういえば最近見かけないな…。
小説を書いた人に思いがあるように、自分にもラジオに思いがある。
上手く行かないこともあるだろうが、それを次に活かさなくては意味が無い。その為には修行あるのみ、大袈裟かもしれないが芸を磨かなくてはならない。
一度この状態になってしまうと寝ても覚めてもその反省のことばかり考えてしまう、勿論通勤電車の中でもだ。
そこで不意に出てきたのが先の不審者むき出しの台詞。
独り言が多いYOUたちは注意が必要だね、俺?俺にはトニーがいるから…。

痴漢という名の修行をすべく本日も同じ時刻の電車へGO。
しかしやはり女性に対する卑劣な行為は例え修行とはいえ自分の生きかたに反する、マターオブポリシー。
そこで俺は同性である男性のかつ車内マナーのなってないDQNを痴漢のターゲットにすることにした。
「新生」では主人公が痴漢をした女子学生、格闘技経験者、にボコボコに殴られる場面があるが、DQN相手ならこの場面の修行も出来きてしまうので一石二鳥だ。
もっとも学生時代に俺しょっちゅうボコられてたから修行はもうイナフな気もするが、車内マナー違反を注意出来るから、まあよし、何が?
さて、獲物を物色する…いた。もう物色とかいうレベルじゃなく、よりどりみどり深緑五月みどり、きのみ気のまま木の実ナナ。
これむしろ車内マナー守ってる人の方が少なくね?ま、俺にしてもその禁をこれから破る訳だがね―――
満員の車内で俺は携帯電話で陽気に通話中のオスDQNの背後に静かに移動した。車内で通話とかいう以前に、会話内容の要点の得て無さが俺の神経を逆なでする。というかこの人これで大丈夫なのかな、いろいろ。
えーっとまずは確か「尻へ這わせた手を、ゆっくりと動かす。まるで虫が蠢くかのように。」だったっけ、よし、行くゼ!!
このDQNさんは身体鍛えてるみたいだね、尻が固いや、さわさわ。
「おう!?」という奇声と共にDQNの愉快な騒音が途切れた、恐れ、じゃないな、怒りかな?車内に静寂が訪れた。
「…悪りぃ、駅降りたらまたかけ直すわ…」だって、最初からそうしろよと思いつつ修行を続けることにする。次は「他者が立ち入ることを決して許されない空間へと無断で侵入していく」だな、よしよし。
そうこうしているうちに停車駅が近づいてきた、シメは離れ際に耳元で「またな」だったな、などと考えているとDQNは少しだけ顔を横に向けると真後ろにいる俺に「次の駅で降りっぞ」と言ってきた。
服装や髪型髪色、何よりも言動が若々しかったので20代前半かなと思っていたけど、どう見ても30代半ばの顔だった。なんだか急に申し訳なく思えてきたと同時に人生って厳しいなと思った。これってかなり世界残酷物語ですよね、ヤコペッティもビックリだ。
俺は外人がするように、腕を広げて見せ、さも心外なことを言われたという風を装う小芝居をしていたがDQNを含め誰も見てくれてはいなかった、返せよ俺の小芝居返せよ。電車は運命の駅に到着した。

「またな」と俺、「逃がさねえぞ」とDQN。
あれ、おかしいな、もう一度。
「だから、またな」「だから、逃がさねえっつってんだろ!!」
俺は俺が痴漢をしたDQNに首根っこを掴まれ、電車を引きずり下ろされ、今、駅のトイレにいる。
「こっちはなあ、超大切なモーニングをサボっておめえに付きあってんだよお!!」DQNはモーニングのあたりで右手の親指を3回振った、どうやらパチスロのようだ、そうですか超大切ですか。
しかし、どうしよう…痴漢をする主人公の役をものにする為に、修行の為にやってみた痴漢がこんなことになるなんて…いや、予測はしてたけどね、やっぱり凄い緊張感だ、喉が渇く。
今回の行動の元になっている小説「新生」では主人公は痴漢した相手にボコボコにされ、肉体的精神的に屈服させられた後で新しい自分に目覚める。
俺も目覚めちゃうのか…怖いな…いや!!これも修行、いい加減腹をくくれ俺、明日の為に―――「か、かかってっ、こいやあ!!」俺はDQNを挑発する。
DQNはそんな俺を見て頭の上に「?」マークを浮かべ不思議そうな顔をしている、程なくしてそのハテナマークは豆電球に変わり弱々しい光を放った、これって脳の大きさに比例するものなのか?
「おめえ…初めてでビビってる、とか?」「はっ、初めてだよっ!!痴漢なん…」俺の言葉を遮り歓喜の雄叫びを上げるDQN、その瞳は少年の瞳になっていた「マジで!?初物ゲット!?」
するとDQNは俺を力強く抱きしめると「優しくする」とか「若い子はいいなあ」とか訳の解らぬことを言いながら俺の顔の横でウンウン頷き始めた。
突然、抱きしめられていた両腕が開放される。あれっ、と思うのも束の間のこと、DQNの唇が俺の唇に重なった。あまりの衝撃に胸が詰まり、息を吸うことも吐くこともできない。目じりに涙が滲む。
否定したかった、そんなシナリオは嫌だ、などともう言ってはいられない。現実として俺は「ガチホモ」をツモってしまったのだ。
マズい、マズい、マズい、マズい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、パンツは新しかったっけ、いやそんなことはどうでもいい、爪切ったっけ、とにかくヤバい!!
俺は精一杯の拒絶の意志を突き飛ばす手に込めた。「ヤ、ヤメロォ!!」ビックリする位情けない叫びと共に。
一瞬驚いた表情を浮かべたDQNだったが、すぐに優しい目になり、照れ臭そうに朱に染めた頬を人差し指でコリコリとかきながら「そーゆうプレイ、俺もやったみたかったんだ、へへっ」と、小声で呟いた。

中学校の頃、近所のコンビニにヤンキーがたむろしていた。俺は関わりたくないので出来るだけそちらを見ないようにして通り過ぎようとした。すると「なにシカトこいてんだ、コラァ!!」と言うやいなや全員、10人位?で俺のことを追って走ってきた。
俺は世の中の理不尽に追い掛け回されながら、人間には理解出来ないことがあると知ったのだった。
なぜだかその時の記憶が鮮明に思い出されていた―――駅のトイレの個室の中で。
あの後俺は後ろ手に縛られ「こういうプレイなら荒々しくするのが優しさってもんよ」とか「いきなりマックスだぜ!!ウィズラブ」とか言われながら「アニキって呼んでくれよ」さんに可愛がられた。
一発目の衝撃も引ききらないうちに、二発目が、間断なく三発目が俺の中にぶち込まれる。
痛い。とてつもなく尻が痛い。だがそれ以上に、頭がぐらぐらと揺れて、例えようもないほど気分が悪い。
「欲しくなったらいつでも来いよ。俺いつも駅前のパチンコ屋にいるから、まぁ」
四発目、五発目、いつもいるんですかそうですか。
「電車の中の痴漢プレイも歓迎だぜ?」
六発目、七発目、プレイだったんですかそうですか。
「ていうか、もう聞こえてない? ホントだらしないヤツだな。ハードなプレイを望む割にはさ」
八発目、九発目、十発目。このあたりでもう、数えることができなくなった。つうかどんだけ絶倫なんだよこのアニキ。
どれほど時間が経ったのだろう。プレイが終わると、ハイライトの消えた目でトイレの洋式便座に座らされた俺の耳元でアニキは「またな」と小さくささやいた。ひとり残された俺は閉まりゆくドアに向かって老人のような声を絞り出す「それは…俺が言うはずの台詞…だ」
そして今、俺は中学校の頃の記憶の中にいた。そうだ、あの時は運良く逃げ切れたのだ。今回逃げ切れなかったのは痴漢をしたから、自業自得だったからだろう。そう考えると理不尽だとか理解出来ないこともなんとなく理が通っているような気もした。駅のトイレの個室で俺は宇宙の意志を感じていた。

次の日の朝もまた―――修行をすべく同じ時刻の電車へGO。
結論から言って、俺は「新生」を得た。俺が昨晩とった行動は元の小説「新生」の主人公のそれとほぼ同じだったと言えば解ってもらえるだろうか。
痴漢だとか殴られるだとかの表面の経験だけでなく、俺は主題に到達したのだ。今の俺なら「新生」を上手に朗読出来るはずだ!!主人公を演じきれるはずだ!!これこそが正に芸を磨くということではないのだろうか!!
「…まったく、芸の道は奥が深いぜ」そう呟くと俺は、自宅からの最寄駅に向けて、ゲイの道を静かに歩き始めた。

GAME OVER

 

Who is King of ふたラジ!?お題「怖いもの見たさ」

【あらすじ】
とある海外の田舎町
大学留学生のシナトベ トシアキは学業の重圧に折れそうな心に鞭を打ち暗澹とした生活を送っている
彼が煩わしく思っているものが2つある
ひとつは彼のアパートの前にある小学校の子供たちが五月蝿いこと
もうひとつは彼のアパートの屋上に突然大騒ぎをするカラスがいること
子供たちはこのカラスを、そして暗に主人公のことを「キチガイカラス」と呼んでいた

物語は主人公が高校時代のバンド仲間に手紙を書くことで進んでゆく
そこには精神の病気が進行していく様が綴られている、帰国を促す友人たち
ある日、小学生たちに捕らえられたカラスが虐待を受けている場面を目撃する
カラスをかばう主人公、しかしその時の行動で彼は地域に危険人物の烙印を押される

バンド時代はギター兼ボーカルだった主人公、歌うのは愛と平和の曲ばかりだった
主人公はギターを弾きながらそれらの曲をひとしきり歌い、ギターをライフルに持ち替える
主人公は幻覚の中にいた、巨人化した小学生たちに襲われた、もしくはカラス視点で虐待を受けた
主人公は窓を開け、登校中の小学生の列に向けてライフルを乱射し始める

主人公が歌う愛と平和の歌にあわせて次々と倒れてゆく小学生たち
ほどなく警官隊が主人公のアパートを包囲した、いよいよ最後と悟った主人公はライフルを咥える
引き金を引き脳髄が飛び散った瞬間、主人公とカラスがシンクロし、カラスが突然大騒ぎを始める
主人公は自分こそがあのカラスだったのだと悟った、ラスト、カラスが絶叫しながら小学生の列に突入する場面で終わる

【キャラ紹介】
シナトベ トシアキ
キチガイの目 カラスのような黒い髪

【山場】
発狂し幻覚相手にライフル乱射をするところ

【オチ】
自殺とカラスシンクロの輪廻

 

 

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