“なぜ、会長にしても西野さんにしても、「ハリル、問題があるぞ」と一度として言ってくれなかったのか”
ロシアW杯開幕を2カ月後に控えた2018年4月9日、日本代表監督解任が突如発表されたヴァイッド・ハリルホジッチ氏。異例とも言える日本サッカー協会の決断に対しては賛否両論、議論の渦が巻き起こったが、当事者であるハリルホジッチ氏は何を想うのか。4月27日に日本記者クラブで開かれ1時間半に及んだ会見の全文を公開する。
お集まりのみなさま、こんにちは。今日はみなさまお越しいただきまして、どうもありがとうございます。今回初めて、4月7日以来、私の口からお話をさせていただく機会を得ました。
やはり、ここ日本で3年間仕事をしてきましたので、この地でお話をさせていただきたいと思いました。この日本という素晴らしいお国で私自身いろんな体験をしてまいりました。
そして、この私どもが家族とともに大好きな日本というお国でございますけども、やはりそこには伝統、歴史、文化、さまざまな習慣、そして、それに加えましていろいろな仕事のやり方があり、大いに評価しています。そして敬いながらやる、こうした日本というお国。そして私自身は、この日本という大変素晴らしいお国に参りましたのは、観光客、物見遊山で来たわけではなく、私のこの手でこの日本というお国のサッカーに何かをもたらせるのではないか、という気持ちだったわけであります。
私自身もこの素晴らしい日本というお国をこんなふうな形で去ることになるなどとは考えたこともありませんでした。今まで考えつく限りの最悪の悪夢の中でも、こんなことを考えたことは一度としてなかったわけです。私の志としましては、この日本というお国において、しっかりとした形で仕事を私のチームとともに終えたいと考えていましたので、日本のサポーターの方々、日本の国民の方々、日本チームが素晴らしいヒーローという形で終わってほしいと思っていたわけです。
4月7日以来、私の人生において一番つらいと言ってもいい時期を過ごしてまいりました。人として深く失望したわけです。このサッカーというものから考えると、なんて残念なのだろうと。私は日本という地にW杯の準備のためにやってきたわけで、我が代表チームをしっかりと予選通過させたわけであります。
そしてまた、このトップの方から言い渡されたことですが、日本のサッカーというものを考えた時に、何かそこに欠けていたものがあると思いました。
私自身はサッカーの世界で45年間仕事をしてきて、それもハイレベルなサッカーの世界で45年間、監督の職業というのは儚いものでありまして、どんな時であろうと、何が起こるかわからない。私自身が物事を知らなかったという点があったのかもしれない。でも私自身はそんなことをですね、今回はしていません。というのは、日本に来てやっていたこと、それはしっかりと仕事をして、我がチームが成功するためにやってきた仕事ばかりだったからであります。
そういった私に対して通告されたこと(解任)に対して私は大変失望したわけですが、私に対するリスペクトというものがなかったように思いました。
私自身この3年間にわたって、日本代表チームのためにいろいろな仕事をしてきました。3年間については私自身、しっかりと誇りを持って仕事をしてきたと思っています。そして、責任を果たしてきたと考えているわけです。
まず私が最初の日に日本サッカー協会、JFAハウスにうかがった時に、こう聞いたんです。「私のオフィスはどこにあるんですか」「いや、あなたのオフィスなんてありませんよ」。それで、すぐにお願いしたんです。「私のためにオフィスをしつらえてもらえないですか。それからまた、私のアシスタントたちにもオフィスをなんとかしつらえてください」とお願いしました。
どうやらこれは、日本のサッカーの歴史で初めてだったようです。代表監督が自分たちに対してオフィスをしつらえてくれというようなお願いを出すのは。
こうやって私どもは毎日オフィスへと出勤したわけであります。代表チームをセレクションするだけでなくて、例えばメディカルスタッフも毎日JFAハウスにやって来ました。そういったことはみなさんには馴染みがなかったみたいです。その後、みんなどういう仕事の割り振りをして、どういう仕事をやっていくか、組織立てをやっていきました。監督として、コーチとして、メディカルスタッフとして何をやるのか。毎日ミーティングをしたり、テクニカルスタッフとともに実際に選手の試合の視察にも行きました。選手一人ひとりについての報告書、レポートを作っていく。メディカルスタッフもどの選手がどう故障しているのか、そういった細かいデータを報告していくわけです。
それからまた、スタッフとともにコミュニケーションを取り、毎日毎日いろいろな作業をしました。
ですから、オフィスにいて仕事をする時もあれば、現場に行って試合の視察をすることもある。それは国内組の試合も、海外組の試合も同じです。
そして毎週月曜になりますと、全員のスタッフとミーティングをしました。そして、実際にテクニカルスタッフとともに50人ほどの選手についての一人ひとりの報告書を作っていって、プラスアルファとしてGK5、6人についての報告書を作っていました。
例えば、メディカルレポートだと、故障した選手がいるならば、すぐ連絡を取ってどういう状況なのか聞いたり、いろいろと広報・コミュニケーションのスタッフとも、何か問題があれば管理部のスタッフとも連絡を取り合いました。そしてまた代表チームのための遠征というものもしました。
そうなりますと、例えば、いつ合宿をスケジューリングするのか、どういう形で合宿をやっていくのか、スタッフの数にして50人ほどいたわけです。スタッフ一人ひとりに自分の仕事があって、それをやってきた。たくさんの方々に私からもこういう形で仕事をしてきてくれて、ありがとうとお礼を申し上げたいと思います。3年の間。
ありとあらゆる遠征、練習におきまして、ほぼ完璧という形ですべてがうまくいきました。例えば、こうした練習というものをしっかり準備して、どういったプランニングでやるのか。公式試合、親善試合の準備・調整。私の人生において、こんなにやる気で、みんながこんなに規律正しくやれるところがあるのかと、今までの人生で見たことがありませんでした。
そしてまた、練習の中身、選手の集中度、質の高さにつきまして本当に素晴らしく、ビッグなブラボー、ビッグなメルシーを申し上げたいと思います。3年前から、私は誰ともなんの問題もなかった。特に選手との問題はございませんでした。
常にコンスタントに選手たちと連絡を取り合っていました。海外組だろうと、国内組だろうと。海外組の選手と何度電話で話したことでしょう。国内組もそうです。コミュニケーションをコンスタントに取り続けてきたんです。それぞれが誰とどういう話をするのかも、ちゃんと決めていました。どのコーチが、誰とどういう話をして、どういうメッセージを伝えないといけないのか、きっちりとやってきました。
私は代表チームと一緒に合宿をやっている時も、公式試合をやっている時も、必ず私はオフィスをしつらえてもらって、選手たちに来てもらっていろいろと話し合いができる場を作っていました。私だけではありません。私のアシスタント、みんなが選手と話をして調整・準備ができるようにしていました。
GKコーチはGKの選手たちと、アシスタントコーチは誰々と連絡を取ると決まっていて、私はちょっと違った形で彼らとコミュニケーションを取っていました。
この3年間、みなさまがそれにつきましては証人になっていただけると思いますけど、人前で誰か一人の選手を批判したことは一度してございません。
悪いのは私。「批判するんだったら、ハリルを批判してくれ」と言っていました。実際に例えばピッチにおきまして選手たちと1対1で話す時には、またちょっと違っていた。私が何かを言いたいなと思う時は、ちゃんと面と向かって言うようにしていました。
選手によっては、ストレートな物言いに慣れていない選手もいたかもしれません。でも、私にしてみれば、この選手たち、このチームに対する思い入れが強かったんです。
みなさん、ご存知の通り、23人呼んでチームを編成しても23人全員が試合に出られるわけではなく、試合に出る選手、それから出られない選手たちがいる。それは日本だけではなく、どこでもそうです。
それでうれしかったり、うれしくなかったりもするわけですが、まさに歴史的な勝利でオーストラリアに勝って、W杯予選を通過したあの試合の後ですら、2人の選手ががっかりしていた。それは試合に出られなかったということで。でも、その前何度も試合に出ていた彼らががっかりしている事自体、悲しく思いました。
すごく練習したんです。例えば、私は個人的にも2カ月、休みを1日たりとも取らずずっと働いていました。もちろん、休みを取ろうと思えば、いつでも取れる立場にあるんですけど、私が日本に来たのは、このチームを育てるためでしたから。日本に来て、人々が私に頼んだのはW杯の予選を通過することであって、それが終わったら、いろいろやりましょうという話をしていたんです。
さあ、それで予選を通過した。それも首位で通過したわけです。我われのいたグループは大変なグループでした。みなさんの中には、いや、当たり前じゃないか、日本はいつも予選を通過してきたんだから、と言う方もいらっしゃる方もいるかもしれませんが、そんな簡単ではありませんでした。
守備も攻撃もベストでした。それも歴史に残るような試合をしたんです。それも、初めてだったんですよね。初戦を落として、予選を通過できたのは。オーストラリアに勝ったんですから。全員がパニクっていましたよ。特に「ハリル、若い選手を起用するじゃないか」と言った時のみなさんのパニクりぶり。それにもかかわらず素晴らしい勝利を勝ち取ったわけです。
そして、彼らで大丈夫かなと思っていた選手たちが抜きん出た力を発揮してくれたんです。「こんな若い選手を呼んでおいていいのか」ということで納得していない方もいらっしゃいました。
そしてUAEに日本代表がアウェイで初めて勝った。また、もう一つ歴史的な勝利として、ブルガリアに7-2で勝った。ヨーロッパのチームにそれほどまでの差で勝つのは今までなかったことなんです。いろんな意味で成功してきた3年間でした。
それでも、みんな満足できない。でも、私自身は満足以上のものがありました。本当に難しい時だっただけに、私はこれだけできたということで満足したのです。
このチーム、そしてまたチームを率いる人々にしましても、数年間の間、パフォーマンスという意味では、なかなか厳しいものがあった。だからこそ私自身は「今までやってきたあの選手に誰か代わる選手はいないのかな」と探していた。そこに競争というものを取り入れたんです。ベテランのお尻を叩いて、もう少し今まで以上に頑張ってくれるようにもしました。でも、そういった意味で、いろいろと満足しないことがあった。
でも、この3年間でしっかりと成功を手にして、誰もが満足した。そして今度は第3ステージに入るわけでして、それがW杯。私はなんといってもW杯があるからこそ就任したわけで、そこで海外遠征を2回行いました。そこでは世界における最高峰のチームとの試合をセットしたわけです。
まずはこの間の11月の海外遠征。そして今年3月の海外遠征。ですから私の頭の中では代表チームにとって、W杯に向けての調整だと思っていたんです。
特に中盤、FWについて、何か解決策はないかなと探していました。ですからW杯が要求してくるもの、W杯でしっかりとパフォーマンスが出せる者を求めていたんです。ですから、今まで以上に選手がもっと幅広い力を持ってプレーできるように、と考えました。
結果はあまり頭になかったんです。ブラジルといったら世界一のチームじゃありませんか。それに対して、良い結果を出せるとは思わなかった。あくまでも試合によって経験を積ませることができると思ったわけです。
ブラジル戦、ベルギー戦、マリ戦、ウクライナ戦と結果は、満足のいくものではないかもしれないけど、たくさんの教訓を引き出すことができた。例えば、ブラジル戦、1-2でしたが、後半に2回ゴールのシーンがあったわけです。ここ数年間のいろいろな試合を見てください。ブラジルに対して2つゴールを入れることができたチームはないじゃないですか。
特に前半の最初の20分は酷い状態だったんです。ハーフタイムにロッカーでハイレベルなチームに対して、どうすればいいかと話をしました。あの試合の後は選手たちを大いに褒めました。
ベルギー戦は、ほぼ完璧と言える試合でした、負けたといってもドローにも、もしかしたら勝てたかもしれない試合だったと思います。
私としては、うちの代表チームにはしっかりと組織力があって、自分たちのプレーでしっかりと支配していたという点で満足していたんです。
ですから、サッカーという意味で、ベルギーにおける遠征はそんなに良くなかったかもしれない。でも、そこでいろいろなデータ・情報を引き出すことができた。それも、本当だったら、いつもレギュラーでいる選手の7、8人があの時には代表チームに入っていなかった。そんな状況でもあったんです。
でも、パフォーマンスの良くない選手もいるなっていうことを私は見て取りました。だから、私の頭の中では、どうしたらいいかと考えていました。11月の最初の合宿には18人の選手を呼んで、2回目の遠征合宿には選手22人プラスGK2人、ですから選手たちを試していたわけです。ご覧いただいたように中島を呼んだ。覚えていらっしゃいますよね。みなさんにしてみれば、心配だったかもしれないけれど、とても良い選手でした。
つまりはW杯のための調整であって、自分が何を求めているか、私自身はちゃんわかっていた。
私自身もいろいろと満足していたし、選手についての情報・データもゲットしていた。
その次に来るのが一番重要な23人の選手を選抜するということになります。そこで、こういった問題が始まっていったわけです。
いろいろな情報が私の耳にも入ってきていたものの、私はあくまでも自分の仕事だけに専念していました。ただ、その時に「やるべき試合、プレーになっていなかった」ということを言う人もいた。ですから、こうした合宿をして、1カ月調整して、なんでこんなにも問題が出てこなければいけないのか。
なぜ、会長にしても西野さんにしても、「ハリル、問題があるぞ」と一度として言ってくれなかったのか。本当に一度として。何かあっても誰も何も言わなかった。
西野さんは何か私に言おうとしていた。マリ戦の後、私はパリに行って、フランス対コロンビアを見ました。その後、ベルギーのリエージュに戻ったのが午前4、5時というものすごい遅い時間でした。
そして、そこで話が来たわけです、「一人の選手があまりいい状態ではない」と。私は「わかっています。そのことについては、あとで解決できますから」と言ったんです。残念ながら、そこでいろんなことが起こって、会長がたくさんの選手やコーチと連絡を取った。そして私とともにいたのがジャッキーとか、シリルとか、GKコーチとか……何が起こったのかということはジャッキーというコーチにも説明がなかった。
私にとってもそれはびっくりしたことでもあり、また、コーチたちにとってもびっくりすることだった。
4月7日のことですが、会長からパリにお呼び出しがかかって、私はなんのことかわからず、ホテルに出向きました。「こんにちは」「こんにちは」。そのあと腰かけて、「ハリルさん、これでお別れすることとなりました」という話があったんです。
最初はジョークだろって私は思ったんです。会長に「なぜかおっしゃっていただけますか」と伺いました。そうしたら、つまりはコミュニケーション不足だと。それによって私はそこで、もっと怒りというものが沸き立ったのです。
そこで「どの選手と?」と聞いたら「全般的に」というお答えで。その部屋から5分経って出ました。私は動転して、何が起こったのかわからなかった。
それで私と一緒にやってくれているコーチたちに電話したんです。一人はイングランドにいましたし、もう一人はドイツにいて、うちの選手の視察をしていたんです。
それで言ったんです。「うちに帰りなよ、終わったからな」と。みなさん、このコーチたちの反応がどうだったかということはご想像ください。
このように会長から、その話をそういう形でされました。そしてまた、ありとあらゆる3年間やってきたことに対しても、監督をしている人間に対してのリスペクトがないのではないかと。私と一緒にやってきてくれたコーチ仲間に対しても同じ思いです。
「韓国戦の後に解任ということも考えた」という話も聞きました。それだったら、私だって少しは理解できます。W杯よりも日韓戦の方がいかに重要か私もわかっているからです。だから私自身の方からこうやってすべてお話したいと思ったわけでありまして、やはり監督というのはいろいろと難しい思いをすることがあります。
1回そういった経験をしているんですよ、私自身。24試合目で(初めて)負けて、その後で解任ということがありましたから。その時は会長が決めたことではなくて、大統領が決定をしたという話を聞きました。
まだまだまだまだいっぱい申し上げたいことがあるので、みなさまの方から質問をいただきまして、それにお答えする形にしたいと思います。
質疑応答
――今の話をうかがう限りでは、23人の本番のメンバー選考に関して、監督解任の問題が起きたという認識を持たれていると思うんですが、具体的に協会がどういう思惑を持って、ハリルさんの考えと合わなくて解任されたとお考えですか?
会長から言われたことは、「まず選手、およびコーチたちとのコミュニケーションと信頼が薄まったこと」でした。なぜか最後の遠征で弱まったようです。3年間なんの問題もなかったと認識しております。
私が思っているのは、誰とのコミュニケーションだったのでしょうか。選手からたくさんの励ましのメッセージをいただきました。全部読みたいところですが、槙野。
「JFAの決定について非常に落胆しています。びっくりもしましたし。ヴァイッド監督となんのコミュニケーションの問題もなかったと私は思っています。このチーム内の一選手として申し上げたい。私たちのコミュニケーションをさらに良くすることは必要かもしれませんが、正直に申し上げます。もう一度言います。私の認識ではそういった問題は存在しなかったと思っています。
個人的には監督のおかげで私はずいぶん進歩ができたと思います。すごく厳しい監督でした。非常に厳しい指摘を受けました。そのおかげで今の私があると、感謝したいと思います。厳しい時間、苦しい時間はありましたし、うれしい時間もあったと思います。ハリルホジッチ監督のW杯がぜひ見たかった」
こういうメッセージをもらいました。時間があまりないので多くのメッセージを読めませんが、ベテランから若い選手まで多くの選手からいただきました。トレーナー、メディカルスタッフからのメッセージもあります。
「ヴァイッド監督、本当に厳しかったですね。それを苦ともせず3年間ともに戦ってまいりました。おかげで私は成長することができました。私たちの父のような存在でした。親しみを込めて叱ってくれたんじゃないかと思います。この3年間、本当に心から感謝しています。私たちを一人の男としてここまで成長させてくれたのは、ヴァイッド監督、あなたのおかげです。心よりの友情を」
テクニカルコーチからも励ましの言葉をもらっています。
「いったいどうしたんでしょうか。どうなったか私もわかりません。本当に信じられません。本当に残念に思います」
彼はテクニカルメンバーの一人で、私と一緒に3年間過ごしてきた人です。
もう一人お見せしたいものがあります。選手です。Bチームで1回だけ起用しました(編注:実際には2回起用されている)。丹羽大輝です。広島の選手です。広島からわざわざ飛行機に乗って、私を訪ねて来てくれました。ありがとうとわざわざ言いに来てくれました。1回だけの起用だったんです。
私が申し上げてきたことと現実、何がどうなっているのでしょうか、よくわかりません。
質問にきちっと答えられているかわかりませんが、もうひと言言いたい。非常に家族的なスピリット、家族的なチーム、スタッフ全員が大きな家族という形で私たちは仕事をしてまいりました。外人は外人、日本人は日本人ではなく、混ぜて、全員で一緒にディナーを食べようという機会を何度も設けました。奢るのは僕ですけどね。タダ飯だと思うと、みんなすごく食べるんです。
W杯出場権を手に入れました。本当は言わない方がいいんですけど、一人ひとりにちょっとしたプレゼントなんですけれど、お礼の気持を込めてプレゼントしました。ヴァイッドは見た目ほど憎たらしいやつじゃないと、どこかで思ってくれたんじゃないでしょうか。ピッチでは非常に厳しいかもしれませんが、いつも、いつも厳しいわけではありません。
――サポーターとして1つ質問させてください。ヴァイッドさん、僕らサポーターにとっても最悪の悪夢です。あなたとともにW杯の本戦を戦いたかったです。日本サッカー界がこんなひどい状態に陥った際に、僕らサポーターはどう振る舞えばいいのか、アドバイスがほしいです。今まで3年間ともに戦ってきた何十万人、何百万人という日本代表サポーターに向けてメッセージをお願いします。
ありがとうございます。私のように傷ついている方が多くいるというのを聞いて、このように励まし、サポートのメッセージをいただいたことは、これまでありませんでした。
今まで日本だけでなく、こういったことはありませんでしたし、本当に深く傷つきました。なぜなんだろうという想いで、もう一度日本に参りました。ぜひ一緒に東京の街を練り歩いてください。
「ハリルさんだ」って、多くの方々に道端でも声援を送っていただけるんです。すごくうれしいです。でも、「何が起こったんですか」とみんな質問してきます。
私の方から直接、会長にも質問したいと思っているんです。私の得意分野である最後のツメという仕事をさせてもらえなかったんですね。
W杯ブラジル大会でも、かなりいい監督だったと自負しております。W杯出場権を得て、日本でもいい仕事をしたと思っているんです。日本代表と仕事をしてきたにもかかわらず、この続きができない。ここからだという時に仕事ができなくなっちゃうわけです。やはり非常に傷ついています。
みなさん、サポーターの方々と同じように、私も深い傷を負っていますけど、答えはないです。でも、本当にサポートしてくださってありがとうございます。心より感謝します。このように私をサポートしてくださる方がこんなに大勢いるのは、今までわからなかったことかもしれません。
まだ全部を語り切っていないのかもしれませんが、一番素晴らしい試合、それはサポーターとの試合かもしれません。サポーターの心を得られたという勝利を収めたのだったら、すごくうれしいです。ありがとうございます。
――監督自身、今回真実を探しに来日したというふうにおっしゃっていましたけど、解任された真実というのは具体的になんだったのでしょうか? もう一つ、監督自身悔しい思いをしていますが、W杯で日本代表を応援しますか?
残念ながら真実を探しに来たと言ったものの、まだ真実は見つかっておりません。何人かの選手が不満を漏らしているということは聞いております。会長とやり取りをされているようですが、テクニカルスタッフ何人かともコンタクトを取っていたようです。
西野現監督がその中で、どういった役割を果たしたのかは私にはわかりませんが、私がまだ代表だった時に、彼がちょっと注意した方がいいかもしれない、選手が何か不満を漏らしているということを言いかけていたので。本当に何か問題があったのだとしたら、本当だったら、会長が事前に「こういう問題が起こっている、どうするんだ、ハリル」と言ってくれれば良かった。西野さんも私にそういったことを事前に警笛を鳴らすなり、インフォメーションをくれれば良かったのに。
会長は、あるスタッフとは話したけれど、なぜ私の方のスタッフ、ジャッキー・ボヌベーですとか、シリル・モワンヌ、GKコーチとは話をなさらなかったのでしょうか。
その選手、2名いるのでしょうか。不満をもらしている選手は2名でしょうか。私の方には感謝している、ありがとう、残念だという選手が15人くらいメッセージを直接送ってきてくれているんです。
本当に会長から前もって「ヴァイッド、問題があるみたいだぞ」と教えてほしかったです。解雇権を持っていますから、解雇することについては問題ではないと思うんですね。何か問題があったなら、その原因がなんなのか監督に会長が聞いてきてほしかったです。
会長の決断はもちろん正しいですし、今の現状で、私がすごくショックを受けているのは前もってなんの相談も、問題だよとも、誰も何も教えてくれなかったことです。そして会長自らパリまで来てくださったわけですけれども、突然の解雇なわけです。
わからないんです。コミュニケーションと信頼関係が薄れているということに。ずっと申し上げてきたように、日々の練習とか月曜日の全体会議とか、コミュニケーションを取っていたつもりなんです。たくさんの仕事を私一人ではなく、私のスタッフ全員で構築してきました。なので、それに対して、どういうことなのか、本当にどうしてなのか、答えが知りたいと思います。
2番目のご質問ですけれども、私は日本の永遠のサポーターです。いろんなことを混ぜることができない、まっすぐな性格なので、今まで関わってきたチームそれぞれと私は常に親密な関係を築きたいし、ずっといつも日本チームおよび多くの選手たち、スタッフたちとまだ心が通っていると信じていますし、みんな、どのような事態でこういうことになったのかわからないままです。
日本、ずっとこれからも頑張ってください。これは本当に心からの言葉です。リップサービスではありません。私のことについて、好きなだけ、いろんなことを言ってください。ただ、私のまっすぐな、正直な気持ちは心からのものですし、揺るぎないものだと思います。
今回、この事態のことを、私はなんと申し上げたらいいんでしょうか。非常に心残りです。
もう一つお願いがあります。個人的なメッセージになります。お許し下さい。チームに関わったすべての人たち、サポーターにも先ほど感謝の言葉を申し上げたと思いますが、熊本県にも個人的に感謝したいと思っています。
特別なメッセージを直々に熊本県からもいただきました。W杯前に熊本に足を運ぶと約束したので、熊本にも行きたいと思っています。こういう状況なので、変わってしまったのですが。熊本県と約束したのは試合ごとに熊本のバッチをつけるということでした。次回は私は観光客として熊本に足を運ぶことでしょう。
友だちから聞かれます。君は日本に行くのかい?と。もちろん、絶対に自信を持って次も日本に来られます。今までやってきたこと、仕事にしろ、一個人としても、自分でも誇りに思っています。
私も、私の家族も、日本が大好きです。素晴らしいところ、観光で見物させてもいただきました。北には足が運べていないのが残念ですが、まだ生きていますから、またお目にかかりましょう。
――コミュニケーション不足というのが解任理由ですが、これまでいろいろな海外のチームを指導してきて、同じような理由で解任されたことはあるのでしょうか こういった理由に関して、どのようにお考えでしょうか?
初めてです。今まで聞いたことがありません。フットボールのすべてを覚えていませんが、コミュニケーションってあまりにも広い意味過ぎて、具体的に誰とか、どういうことっていうのを教えていただきたいと思います。
また再来日、滞在5、6日目でしょうか。多くの人が見えて、話をしていました。よく私には事情のわからないことが、私の知らないところで行われているような気もします。
W杯日本代表23人を選ぶというのは、日本においてだけでなく、どこの国においても、たくさんの軋轢(あつれき)が起こる問題であります。監督および選手にとってW杯出場という意味はどういうものでしょうか。選手や監督にとって素晴らしいプロモーション、名誉なことではないでしょうか。すべての試合に負けたとしても、W杯に出たということは非常にポジティブなイメージではないでしょうか。
本当に傷ついている理由は、W杯に出れる、すべてが整い始めていたところなんですね。これから千葉、オーストリア、ロシアでも遠征が控えています。すべての準備を今後、事務局側と整えていこうとしていたんです。細かいディテールまで詳細を詰めていくところだったんです。どれだけ大変な仕事量か。ここ2カ月、10回くらいは見たと思います。日本対コロンビアのビデオを。
言い忘れていたことがありました。2月なんですけど、海外組、長谷部、(川島)永嗣、吉田、長友に会いにいって、そういったベテラン選手と最近、どうしているのかというような実地調査をしてきましたし、その時、特にコミュニケーションの問題は起きておらず、選手たちは非常にモチベーションが高かったんですね。
なぜか1カ月後には、コミュニケーションが薄らいでいる。どなたとのコミュニケーションの話をされているのかわかりません。準備はすべて整ったところで、次の監督にというような形になりましたが、その監督にとっても非常に大きなチャレンジになると思います。これから4週間ともに働けると、ワクワクしていたところだったんです。
どこまで行けるのかわかっていたんですけれども、会長が来て、「では、さようなら」。突然の出来事ですし、事前に何も知らされていなかったので、なんで、なんでしょうね、逆に私が知りたいです。教えてください、みなさん。
他の歴代監督にも話を聞きましたけれど、わからない、と。どうぞ、真実を私だけじゃなく、サポーターや多くのみなさん、なんだったんでしょう。おまけにこの時期にですよ、どうしてなんですかね。
やはり、こういった時期に、こういった結果は本当にこれでいいのでしょうか。準備はしたと言っても、舞台はW杯です。今の私がどんな心持ちかわかってもらえるでしょうか。
私が街で出会うサポーターの人たちは私にどういった声をかけてくれるか、ご覧になったらわかってもらえるのではないでしょうか。
この段階で、協会はかなり大きなリスクを負ってしまったのではないか、と思います。
フランスでは、日本でそんなことが起こるの?って言われました。日本というのはお互いに尊重し合う国だと聞いておりましたし、いかがですか、みなさまに問いかけたいと思います。代表監督に、こういったことをするのはいかがなものでしょうか。
私がきっと理解しやすかったのは、ウクライナに負けたでしょう、とかリザルトをぶつけてくださったら理解できたと思います。
会長にベルギーに来てもらおうと思ったんですね。「ちょっと別件が入っている」と言われてしまったんです。「W杯まであと一直線、頑張らないといけない、いろいろ準備しないといけないから、ぜひ来てください」と申し上げたんですけど。
会長の記者会見にも出ていましたし、みなさんからの質問がないので、私からこれを申し上げないといけませんが、会長の記者会見の時に、テクニカルコミティ(技術委員会)がたくさんの修復をしようと試みたと。テクニカルコミティの存在すら私は知りませんでしたし、どなたも私のところに見えてお話をしたことがないので、私の方では存じ上げません。私のオフィスに来てもらった時に、挨拶、握手をしたのかもしれませんが、西野さんもいらっしゃいましたね。西野さん、あとから加わったわけですけども、テクニカルディレクター、技術委員長の役務を初めてこなされるようでした。
確かに彼とのコミュニケーションは非常に少なかったかもしれません。挨拶はもちろんしましたが、すべてのトレーニング、会議、常に一緒にいました。選手、このリストで行こうかという提案をした時、現地のローカルの選手も起用したりしましたので、彼に意見を求めたりもしました。
あまり多くを語らない人でした。試合中ですが、GKの第2コーチとともに選手たちの観察をしてくれ、とお願いしましたが、ハーフタイムの前に彼らは観察から降りてきて、いろいろ情報をくれるんですね。そうすると、ハーフタイムの準備、ロッカールームで話ができます。
すべてのトレーニング、練習に彼は参加していました。いつも「いや、良かった」と言ってくれたんです。一度だけ西野さんに聞かれたのは「フランスでの技術委員長はどういった仕事をされるのですか」ということです。
私の知らないところで、どういったやり取りがあったのかは不明です。あえて聞いたりはしていないんですけど、他のメディカルスタッフが話をすることがありましたし、会長から私が望めば会うということをしてくださったようです。
そして、技術委員長からベルギーで「ちょっと選手が1人、不平不満を言っているんじゃないか」というようなことを聞きましたが、非常に友好的な関係を築けていたような気が私はしていました。問題はどこにあったのか、みなさんからもぜひ聞いてもらいたいと思います。
しゃべり過ぎたか。
最後に私はみなさまにひと言申し上げたいと思います。メディアの方々、記者の方々、本当に心より御礼申し上げます。心より正直に申し上げます。私に入って来る情報量は非常に少ないです。批判もあると聞いています。日本の記者の方々はそれでも私には優しい人々だったと思います。
このタイミング、この時期というのは非常に特殊なタイミングでしょうか。何が起こっているのか本当にわからないです。
どうか記事を書くみなさま方、客観的に記事を書いてください。私のことをどう言っても構いませんが、どうぞ日本代表は今、すごく窮地に陥っていると思います。これから頑張って準備をしていくことでしょう。フットボール、サッカーの世界ではW杯はこれ以上にない試合になると思います。危険性をはらんだ素晴らしいW杯。お願いです。どうか彼らに準備の時間を与えてあげてください。日本代表にはどうかいい試合をしてほしいと思います。
最後ですが、記者の方々から今まで全員ではないですけど、会見が終わるごとに拍手をいただいてきました。その拍手に本当に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
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