太平洋に浮かぶ1100以上の島々からなるマーシャル諸島共和国にとって、気候変動は遠い未来の危機ではない。島々の多くを占める海抜の低い環礁は、すでに大きな被害を受けている。
4月25日付けの学術誌「Science Advances」に発表された研究によって、気候変動が今世紀の半ばごろまでに、この国の水源に致命的な打撃を及ぼすことが明らかになった。島の周囲の海水面が上昇すると、大きい波が打ち寄せたときに、これまでより島の奥深くまで海水が到達するようになる。こうした波が連続して打ち寄せれば、島の淡水源は機能しなくなってしまう。(参考記事:「沈みゆくキリバスに生きる」)
2016年に米国国防総省が想定した海面上昇シナリオでも、海水面が40センチ上昇すると、マーシャル諸島の環礁の1つ(と、おそらくほかの数千の島々)が居住不可能になると予想している。40センチの海面上昇は、今世紀半ばにも現実になる可能性がある。(参考記事:「2017年の海水温は観測史上最高、研究発表」)
「環礁を復旧したり、海面上昇の影響を緩和したり、あるいは、移住の計画を立てたりする際には、政府や管理責任者がこれらの予想を考慮してくれるよう願っています。そうすれば、より少ない費用で効果的に、人々の生命を救えるでしょう」と米国地質調査所の科学者で、論文の筆頭著者のカート・ストーラッツィ氏は言う。
外部の研究者は、最悪の場合はこの論文のシナリオの通りだろうと言い、モデル化の手法の巧みさと、警告の重さを高く評価した。
「この研究から、海岸地域の洪水に対して、波が重要な役割を果たしていることがわかります」。都市で頻発する洪水に及ぼしている気候変動の影響を研究する気象学者のクリスティーナ・ダール氏はそう語る。「海面上昇しか考えないなら、今回調べられた島々は今世紀末まで居住できます。けれども、波の作用も考慮すると、居住可能な期間は大幅に短縮されるのです」