政府が「漫画村」など海賊版3サイトについて、ISPに自主的なブロッキングを促す緊急対策を決めたことが、波紋を呼んでいる。「ブロッキングという法的根拠のない手段を取る前に、出版社はどこまで対策したのか」「出版社は、漫画村を刑事告訴していないのでは」など、疑問の声も上がっている。
講談社によると、漫画村への刑事告訴の手続きは完了しているという。漫画村に近いとみられる人物の名前が昨年夏時点で個人ブログに掲載されたり、NHKが今年4月、関係者に取材するなど、個人やメディアが漫画村の“正体”に迫っているが、捜査に当たっている警察は、現時点で摘発できていないようだ。
講談社は漫画村に対して、刑事告訴だけでなく、削除要請などさまざまな対策を採ってきたという。同社広報室長の乾智之さんに、詳細を聞いた。
――「漫画村」に対して、これまでどのような対策を採ってきたのか。
数え切れないほどのテイクダウン要請・削除要請を行ってきた。「漫画村」のサイト本体や、サイトをホスティングしているサーバ、CDNのCloudflare、サイバーロッカー(漫画コンテンツなどを保存しているストレージサービス)への削除要請は、国内外を問わず行ってきた。だが、すべて無視されている。
漫画村に限らずだが、著作権侵害コンテンツのパトロールとテイクダウン要請は、講談社だけで月に1万数千件、年間17万件出している。
DMCA(米デジタルミレニアム著作権法)に基づき、Googleに対して、検索結果から削除するよう要請も行っている。Googleはいったんは削除に応じるが、すぐに戻ってしまい、「漫画村 作品名」で検索すると、検索結果に表示される状態がずっと続いていた。Googleが戻していたのか、漫画村がすぐURL変えるなど対応していたのか分からないが。
漫画村に限らず、海賊版サイトについては、発信者情報開示請求や閉鎖の仮処分申請も行ってきたが、成功していない。司法手続きに時間がかかり、判決が出る頃にはサイトのURLが変わったり、閉鎖したりしているためだ。海賊版サイトはいったん閉鎖されても、そのデータを持って別のサイトに移行しているようだ。2~3大勢力があるとみている。
――漫画村について、刑事告訴は行ったのか。
国内では刑事告訴の手続きを完了している。捜査の都合上、時期は明らかにできないが。
海賊版サイトは200~300あると言われる。すべてのサイトを刑事告訴するのは難しいが、目立つものについては常に、都道府県警と連携し、刑事告訴を含む捜査協力を行っている。
海外でも、海賊版サイトの刑事告訴を含む捜査協力を行ってきた。漫画村については十分な材料がなかったため、海外での刑事告訴は行えていないが。
――漫画村のコンテンツを配信しているCDN「Cloudflare」に対する訴訟はどうか。
検討はした。訴訟の前に、Cloudflareのどのサーバに当社コンテンツが保存されているかなどの確認を、Cloudflareの協力を得て行う必要があるが、協力が得られるとも思えず、刑事告訴なり民事訴訟に持って行くには、最低半年かかる。当社も、割ける人手や予算に限りがあり、年17万件のテイクダウン要請で精一杯という現状がある。
――漫画村は、日本国内にあるEQUINIXのデータセンターの中に置かれたCloudflareの機材から配信されているとと推測されている。EQUINIXを訴えることもできるのでは。
当社では、EQUINIXだと突き止められていなかった。
――海賊版サイトに広告を出稿する広告主や広告代理店に対して出稿停止依頼を行ったり、訴訟を行うなど、収入源を断つ対策はどうか。
広告主に対しては、雑談レベルで内々に配信停止を要請するぐらいしかできておらず、実質何もできていなかったと反省している。今後本格的に、広告主や代理店に対して、掲載の自粛要請や、法的手続きも含む対応を、きちんと行っていきたいと思う。
――漫画の読者、ユーザーに、海賊版サイトを利用しないよう呼び掛けることも重要ではないか。
検討している。テレビCMやラジオ、紙媒体など、さまざま手段を検討しており、近いうちに啓蒙活動を始めたいと思っている。
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