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時間がなくても受かる? 効率的な「資格勉強法」を、東大卒弁護士に聞いた

時間がなくても受かる? 効率的な「資格勉強法」を、東大卒弁護士に聞いた
Photo: 三浦一紀

ビジネスパーソンが資格や検定を取得しようと思ったとき、一番のネックとなるのが「時間」ではないでしょうか。

毎日仕事をしながら、資格勉強の時間を捻出できるのか? そう考えただけで「無理ムリむり…」と諦めてしまう人もいるでしょう。

そこで今回は、弁護士であり、資格試験のオンライン学習サービス・資格スクエアを運営する鬼頭政人さんに、ビジネスパーソンのための効率的な資格取得勉強法についてお話を伺いました。押さえておきたいポイントは9つあります。

鬼頭政人(きとう・まさと)

弁護士。株式会社サイトビジット代表取締役。1981年東京都生まれ。開成高校(特別優等)、東京大学法学部卒。慶應義塾大学法科大学院に進学した後、在学中に司法試験に一発合格。2007年石井法律事務所に入所。企業間紛争、民事再生、相続、離婚案件を取り扱う。2010年より株式会社産業革新機構に参画。投資チームにおいて、大型企業再編、ベンチャー投資、中小企業投資に携わる。2013年12月、株式会社サイトビジットを創業。オンライン資格試験サービス「資格スクエア」を運営し、自身の知見をはじめとし、IT技術+脳科学による「最短合格勉強法」を提供している。著書に、『資格試験に「忙しくても受かる人」と「いつも落ちる人」の勉強法』『東大合格者が実践している 絶対飽きない勉強法』がある。

1. 試験までの期間を最短に設定して自分を追い込む

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Photo: 三浦一紀

もし、あなたが資格試験を受けようと思い立ったとき、どのくらいの期間を勉強に充てようと思いますか? 1年や2年? 試験までの期間が長ければ長いほど、じっくりと試験勉強ができる。そう思うのは当然です。

しかし、鬼頭さんは「できるだけ最短の期間での受験」を勧めています。なぜでしょうか?

「基本的に、人間の集中力は2年ももちません。もってせいぜい半年くらいです。2年後の試験を目指して勉強を始めた人のほとんどは、1年目は何もしません」

つまり、「試験は2年先だからゆっくりやろう」と思い、ついつい勉強開始を先延ばしにしてしまうのです。人間とは、そういう生き物なのでしょう。

たとえば、簿記の試験は年に3回実施されます。ほとんどの人が2〜3回後の試験を目指そうとしますが、鬼頭さんは直近の試験を受験するのがいいと話します。

「簿記1級は難しいと思いますが、2級や3級なら1カ月集中して勉強すれば受かります。要は、試験日を直近に設定して自分を追い込んでいくこと。仮に落ちたとしても、その勉強は次の試験に必ず役に立ちます」

1年、2年といった長期計画で勉強をするのではなく、短期で効率よく勉強する。それが資格試験のコツです。

資格勉強法その1

試験までの勉強期間は長くても半年に設定しよう。

2. 1カ月単位ではなく1日単位で勉強のスケジュールを立てる

取得する資格の試験日が決まったら、それに向けて勉強を始めます。勉強に長い時間を充てられる学生等と比べ、ビジネスパーソンはかなり効率よく勉強する必要があります。どのような勉強計画を立てるのがいいのでしょうか。

鬼頭さんによれば、「ゴールから逆算する」「細分化する」という2つのポイントがあるのだそうです。

1つめの「ゴールから逆算する」というのは、いたって普通のこと。試験日までの6カ月で100ページの参考書をやるという目標を立てたら、1カ月で16ページ進めるという計算になります。それをできるだけ守って勉強を進めていけばいいのです。

しかし、忙しいビジネスパーソンは、その計画がなかなか守れないということもあります。それをリカバリーしやすくするのが2つめの「細分化する」ということなのです。

「ビジネスにおける事業計画のようなもので、目標と現時点での勉強の進み具合の“ズレ”を明確にしなければいけません。ざっくりとした計画では、そのズレがわかりにくいので、挽回しづらくなります」

簡単な例で言えば、1カ月で本を1冊読むという目標を立てるのではなく、1日10ページ読むという目標を立てるということ。1日8ページしか読めなかった場合、2ページ遅れているというズレが明確になるので、次の日12ページ読んで挽回するということがしやすくなるのです。

ところが、これを「1カ月1冊」という目標にすると、ゴールが見えにくいので、25日すぎになって全然進んでいないことに気づく、という自体にもなりかねません。

計画にズレが生じた場合は、通勤の電車の中やお風呂、昼休みなどを利用することで、リカバリーができます。

小学校の夏休みの宿題を、最後の2日間くらいで泣きながらやっていた人ならば、その感覚がわかるはず。そうならないためにも、なるべく細かい勉強計画を立てる必要があるのです。

資格勉強法その2

勉強のスケジュールは逆算で立て、なるべく細分化しよう。

3. 「行動予測」で実現可能なスケジュールを組む

資格勉強のスケジュールを立てる場合、自分がどのくらいのペースで勉強を進められるのかということを把握しておく必要があります。鬼頭さんはそれを「行動予測」と呼んでいます。

「たとえばマラソンの場合、1kmを2分で走るという計画を立てても非現実的ですよね。自分は1kmを何分で走れるのかというのを把握しなければ、計画が立てられません。仮に1km6分かかるとしたら、それを元にペース配分を考え、徐々に縮めていくような練習をしていけばいいわけです」

そのためには、自分がどれくらいのペースで勉強を進められるのかを計測する必要があります。ストップウォッチで計る…までする必要はないですが、参考書を読んでいるときに「30分で20ページ読めたな」くらいざっくりと把握はしておきましょう。

まずは自分のペースを把握すること。そうすることで実現可能なスケジュールを立てることができ、効率の良い勉強につながるのです。

資格勉強法その3

自分の勉強のペースを把握してからスケジュールを立てよう。

4. 参考書は読み込むな! 過去問重視で資格に最適な勉強法を身につける

鬼頭さんは、「参考書を読んでから過去問を解きまくる」という勉強法を推奨しています。

ただし、参考書はあくまでもその資格勉強の全体像を把握するためのもの。じっくり読む必要はないと言います。

「参考書を読むときは、わからないところは流しましょう。重要なのは、どこにどの範囲があって、全体の量がどのくらいあるのかを把握することです。日本地図で言えば、北海道、本州、四国、九州があって、本州が一番大きいんだな、ということを把握するレベルですね」

いきなり各都道府県の面積や人口などを覚えていくような勉強法では、いつまでたっても終わらないということは想像できるでしょう。資格勉強でも同じこと。まずは大局を理解して、それから細かい部分を勉強していきます。

しかし、参考書を何度も読む必要はないとのこと。1回読んだら、すぐ過去問に取りかかります。鬼頭さんは「過去問は参考書を立体化するもの」と位置づけています。

「実際の試験で論文形式なのか選択形式なのか。それによっても勉強の仕方は変わります。なので、まずは参考書でだいたいのことを理解して、過去問でより具体的な勉強法を身につけたほうが絶対早いんですよ」

過去問を解くようになったら、参考書はわからない部分を確認するときに読む程度で十分です。

資格勉強法その4

参考書はあくまでも参考程度。過去問を解いてその資格にあった勉強法を見つけよう。

5. 資格勉強中の人付き合いは必要最低限にする

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Photo: 三浦一紀

ビジネスパーソンにつきものなのが、仕事終わりの飲み会などの「人付き合い」。資格勉強中のときの人付き合いは、どのようにしたらいいのでしょうか。

「僕の場合は、会わなくてもいい人とは会いません。たとえば、親とか長年の友だちとか、会わなくても関係性が崩れない人たちとは、資格勉強の期間は会わないようにします。逆に仕事関係で、会わないとデメリットがあるという場合は行きます」

また、会社内の飲み会なども必要最低限にとどめる努力をしたほうがいいとのこと。自分が上の立場であれば飲み会を欠席することも可能でしょうが、新人の場合は断りにくいもの。そんなときは、お酒に弱い振りをするなどして、早く切り上げるようにします。

とはいえ、鬼頭さん曰く「仕事関係のことはできるだけ付き合ったほうがいい」とのこと。資格試験は、自分が今後よりよいキャリアを歩んでいくためのものなので、仕事関係のことをないがしろにしてまで資格勉強をするのは本末転倒ということです。仮に転職を前提とした資格取得を目指している場合でも、現在の仕事の経験や人脈を活かしたほうが有利になります。

そのためにも、今の職場の人間関係は大事にしたほうがいいと鬼頭さんは考えているようです。

資格勉強法その5

親や親友など信頼関係のある人とは会わなくてもOK。仕事関係の付き合いは必要最低限にしよう。

6. 家族や恋人などの近しい人には「資格勉強宣言」をする

資格勉強を始めたときに、周囲の人たちへ宣言をするかどうかも迷うところです。今の仕事と関係ない、転職前提の資格取得を目指している場合、職場では言いづらいでしょう。

しかし、親やパートナー、子どもなど、家族には資格勉強をしていることを宣言したほうがいいと、鬼頭さんは考えています。

「資格勉強は周囲へも負担がかかるんです。帰宅時間が遅くなったり、休日も勉強時間に充てるため、家族と過ごす時間が減ったり。恋人と会う時間が減ることもあるでしょう。だから、あらかじめ宣言して理解してもらうのがいいと思っています。また、自分にプレッシャーをかけるという側面もあります」

ただし、資格スクエアの会員でも宣言していない人は多いとのこと。それはなぜなのでしょうか。

「失敗してしまったときに恥ずかしいからではないかと思います。僕はそれを“ひそべん”って呼んでいます(笑)」

ただ“ひそべん”の場合、途中で資格取得を諦めてしまう人も多いとのこと。勉強を辞めても誰もわからないから、という気持ちがはたらくことが大きな要因のようです。

資格勉強法その6

資格勉強で迷惑をかける可能性のある人には、あらかじめ宣言をしておこう。

7. 資格取得は独学がオススメ。その理由は?

資格取得を目指す場合、独学のほかに予備校などに通うという選択肢もあります。ビジネスパーソン向けに、土日を中心とした資格予備校も多く存在します。独学と予備校、どちらを選んだらいいのか悩みどころです。鬼頭さんはどう思っているのでしょうか。

「強制されないとやらないという人は、予備校に通うことを好む傾向があります。ただ、僕は強制されないとやらないような資格をなぜ受験するの?とは思いますね。資格試験は任意なので、自分が受けたいから受けるもの。なのになぜ誰かに強制されて勉強するのか。僕は独学を勧めているのですが、それは資格を取ってから強制してくれる人はいないからです。人に言われないとできない人は、資格を取っても後で苦労します。自学自習する力、僕は“独学力”と呼んでいますが、その力をいかに資格の勉強を通じて身につけるか。それが重要だと思っています 予備校は使ってもいいと思うのですが、あくまで「使う」ものであって「依存する」ものではありません。独学力を身につけて、予備校を使うのは効果的です」

資格取得後、誰かが「じゃあこれをやって」と指示をくれるわけではありません。資格を取ることがゴールではなく、そこからがスタート。あとは自分で道を切り開いていかなかければなりません。そのためにも、自分で勉強していく「独学力」を身につける必要があるため、鬼頭さんは予備校に通学するよりも独学を勧めているのです。

ただし、勉強の仕方がわからない、または勉強のペースをつかみたいという理由でオンラインの予備校を使ったりするのは効果的とのこと。

資格勉強法その7

資格取得後の“独学力”を鍛えるためにも独学で資格勉強をしよう。

8. 資格取得への第一歩は「とりあえず行動」

前項と矛盾するようですが、独学の場合、やはりモチベーションの維持は最重要項目と言ってもいいかもしれません。時間は捻出できても、モチベーションが上がらなければ勉強の効率は下がるばかりです。

モチベーションを上げる、または維持するのにいい方法はあるのでしょうか。鬼頭さんは「楽しいと感じること」と言います。

「一番強いのは、楽しいと思うこと。僕は、法律の勉強をしているとき楽しいと思っていたので、勉強が全然苦にならなかったんです。そもそも、楽しいからモチベーションを維持しようなんて考えないですから」

確かに、楽しいことをしているときは自然とモチベーションが上がっているので、いつまでもそれを続けることができます。しかし、まず最初の一歩がなかなか踏み出せないという人も多いでしょう。そんな人がやる気を出すにはどうしたらいいのでしょうか。

「とりあえず行動するということですね。自分がやりやすいこと、たとえばマンガで解説されている資格勉強の本を読むとかでもいいと思います。とりあえず机に座るだけでもしてみるといい、という人もいます」

どんなことも、まず最初に何か行動を起こさないと始まりません。頭で考えて何もしないよりは、とにかく手や体を動かしてみる。それがやる気を掘り起こし、モチベーションとなっていく第一歩となるのです。

資格勉強法その8

やる気を起こすにはまず行動を。「楽しい」と思うことがモチベーション維持につながる。

9. 数分単位のスキマ時間を有効活用するのがポイント

資格勉強のためにまとまった時間を確保するのは意外と難しいもの。そこで重要になるのが、スキマ時間の活用方法です。

机にじっくり向かうときと、前述のスキマ時間では、適した勉強内容が異なるとのこと。鬼頭さんはそれを「勉強の強度」という言い方をしています。もっとも強度の高い勉強は、ゼロから思考してなにかを書く、というようなもの。そういう勉強は、机に座ってじっくりと取り組んだほうがいいようです。

一方、暗記物は強度が低い勉強。これらは反復がメインとなるため、長時間やると飽きてしまいます。これを時間をかけてじっくりやると辛くなってしまうので、そういうものはスキマ時間に適しているのです。

そのほか、鬼頭さんは朝の時間帯に勉強することを勧めています。その理由は「予定が入りづらいから」。

「朝に飲み会が入ることはないですよね。朝食ミーティングなども普通はないでしょう。逆に夜は自分で予定をコントロールしにくいので、朝に集中して勉強したほうが効率的です」

加えて、お昼休みも効果的に活用したほうがいいとのこと。あらかじめお昼に何を食べるか決めておき、10分程度で食事を済ませたら、残りの50分を勉強に充てることができます。

資格勉強法その9

数分単位のスキマ時間や、朝と昼の時間を有効活用しよう。

これからオススメの資格は「日本の未来に必要なもの」

資格を取りたいけれど、どの資格を取っていいかわからない」という人も、いることでしょう。今後の自分のキャリアに、どんな資格が有効なのか。最後に「資格選び」のポイントを鬼頭さんにお聞きしました。

「重要なのは、今後の社会がどうなっていくのかを考えること。これからの日本で必要となる分野の資格は、需要が高まっていくはずです。たとえば、年金関連の社労士年金アドバイザー日本ディープラーニング協会が昨年から実施しているAI検定などは、これから価値が上がっていくかもしれません」

「また、最近Facebookの個人情報流出問題がありましたが、情報セキュリティマネージメントという資格も一昨年から始まっています。さらに上のランクの情報処理安全確保支援士という資格もでき、これからますます盛り上がっていきそうな分野です」

逆に、今後あまり必要とされなくなるだろう分野の資格は、取得しても意味がないかもしれません。その辺りの見極めというのも、資格取得の際にはしっかり行いたいところです。

資格取得は自分のため。強い覚悟が鍵を握る!

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Photo: 三浦一紀

資格というものは、誰かのために取るものではありません。自分が自分のために取得するものです。勉強を始めるのも自由なら、辞めるのも自由。でも、せっかく資格勉強を始めたなら、なんとしてでも資格を取得したいですよね。

鬼頭さん曰く資格取得に一番重要なことは「覚悟」だそう。

「なんとなく儲かりそうだから、なんとなく道が開けそうだから、という程度の理由で資格を目指すと人が多いんです。しかし、それではすぐ挫けてしまう。僕の知り合いで、子どものころに刑事事件に巻き込まれて辛い思いをした人が、絶対検事になりたいと思って勉強をして、3回目で司法試験に受かりました。そういう人は強いですね」

そこまでの強い覚悟を持っている人は少ないかも知れませんが、多かれ少なかれ、その資格を目指す動機というのは誰もが持っているもの。

一度、自分がどうしてその資格を取りたいのか、その資格を取ってどうしたいのかということを考え、自分のなかで強い覚悟を持つというプロセスを経るといいかもしれません。

今回の鬼頭さんのお話から、「時間がなくても、工夫すれば資格は取れる」ということがわかったと思います。あとはあなたの覚悟次第。ぜひ、資格取得という目標に向かってまっすぐ突き進んでください。

Photo: 三浦一紀

三浦一紀

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