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中国科学院研究員、「Microsoftは故意に中国人に海賊版Windowsを使わせた」

 中国科学院計算技術研究所 研究員の倪光南氏は25日(現地時間)、中国国内のCPUやOSの現状について、現地メディアの取材に答えた。この様子は、中国メディア「瞭望全媒」がビデオ(前後編)を公開している。

 倪氏は1939年生まれ。1961年に南京工学院(現東南大学)を卒業し、1980年代に中国の漢字入力システムで初のサジェスト機能を開発したことで知られている。中科院に入る前はLenovoでチーフエンジニアを務めたこともある人物だ。

中国が自主的にCPUやOSを開発する必要性

 前編では中国が自主的なCPUやOSを開発する必然性について語られている。倪氏は「CPUやOSの開発は自主的に行なう必要がある。誰かの助けが来るのを期待してはならないし、“買えば良い”というものではない」とした。

 神威太湖之光といったスーパーコンピュータでは、中国製CPUやOSは一定の成果を収めている。しかしインターネットに接続するコンシューマのシステム(平たくいえばスマートフォンのような製品)は、CPUとOSの開発期間が長く、投資も多くなりがちで、多くの会社が放棄している。

 とはいえ、「核心のシステムが作れなくとも、バックアップのシステムを作らなければならない」とも指摘。「この点、Huaweiは良い仕事をしている」とし、先日米国商務省がZTEに対して製品を輸出禁止にする措置を実施したことを挙げ、「ZTEは今回のことを教訓に、核心のシステムも開発すべきだ」と助言した。

 加えて、先日ウクライナで大規模停電が発生したのは、サイバー犯罪による原因だったことも挙げ、「革新技術を掌握しなければ、システムと情報の安全面で首を絞められる可能性がある」とした。

 中国がCPUを開発するためには、設計のみならず、半導体の製造を行なう必要もある。とくに今は製造面で大きく遅れており、数千億元以上の投資が必要だろうとする。ところがその製造装置もいまのところは海外製で、シリコンの材料の供給やパッケージングなども問題になる。エコシステムは巨大で、2025年頃をめどに構築を目指すとした。

海賊版Windowsは“Microsoftの策略”

 中国では長らく海賊版Windowsが問題だったが、倪氏はこれを「厳格的に言えばこれは海賊版ではなく、Microsoftの策略だ」と批判。「海賊版のWindowsはXPの時代から同一のプロダクトIDで、Microsoftはこの使用を黙認してきた。誰が海賊版を使っているのか、Microsoftは把握できたはずだ。それなのに使用を封じずに故意に中国人に使わせたのは、中国が独自OSを開発する機会を阻害する策略があるからだ」とした。

 一方で中国国内のテクノロジ企業については「技術開発についてはすばらしい働きをしているが、パートナーシップの面が欠けている。これは“鶏の頭になっても鳳凰の尾になりたくない”という中国人の伝統的な文化が影響してきているからだ。それによって多くのビジネスチャンスを失っているのは否めない」と語っている。

 現在、中国製CPUやOSの現状については「いまは“2.0”の段階で、“非可用的”から“実用的”になったというだけ。しかし本格普及を遂げるのは“実用的”だけでなく、使いやすくならなければならない。Windowsにたとえるなら“3.0”や“3.1”に進化する必要がある」と語った。

 「現段階では、一部用途がかぎられているシステムにおいては、国産のCPUとOSでまかなえるが、設計や開発、デザインなどの大型アプリケーションが動作するにいたっていない。また、コストパフォーマンスも改善しなければならい」と指摘した。

 このためには、「中国国内にリソースが分散している複数の開発リソースを1つにまとめる必要がある。8万人規模の大企業が、市場全体をリードしていく必要がある。2005年を1.0、いまを2.0とするならば、3.0が実現するまでにもう少し時間がかかる」とした。

 また、中国がCPUやOSといった核心技術を開発している現状について「国はわれわれに十分な資金を与えた。しかしわれわれが行なってきたことについては反省しなければならない面も多々ある。たとえば一部企業は自主開発ではなく、Wintel連合を支持した(兆芯やSpreadtrumなどを指す)。中国は、AI専用チップについては国際レベルと並んでいるが、これは市場が白紙だからだ。一方でWintel連合はすでに飽和しており、ここに切り込んでいくのは非常に困難だ」と述べた。

 ただ、WintelではないCPUとOSの開発は、CPUのみならず、ミドルウェアやその上で走るソフトウェアが重要であり、良好なエコシステムを構築しなければならないとした。そのためには、初心に返って元の計画を踏襲すべきだと語った。

 なお、このビデオには多くの批判的なコメントも寄せられている。