本日(2018/04/27)、ロシアW杯本戦まで残りわずか2ヵ月というタイミングで電撃的に解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ前日本代表監督の来日記者会見が行われます。
このような時期、形での代表監督の解任は世界的に見ても前例に乏しいうえ、成功例は絶無に等しいといえます。確かに、ハリルホジッチ前監督のサッカー、指導については在任時から賛否両論が飛び交っていました。
とはいえ、最終的な評価は、「結果」によってのみくだされるべきであり、直前の解任劇によってそれも適わなくなったことで、ハリルホジッチ就任後の3年間がほとんど無駄となる状況が生まれています。
西野監督による新体制によってもし結果が出たとしても、それは継続的な強化のプロセスをリセットした状態のものであり、後につながる知見を得づらいものになるでしょう。日本サッカー協会の判断は、二重三重に「愚行」のそしりを免れないのではないかと思われます。
本稿では、ハリルホジッチの主な事績を4点に絞り検討することで、ハリルホジッチ前監督が日本サッカーにもたらすことを期待されていたもの、もたらしたもの、もたらそうとしていたものを浮き彫りにしてみたいと思います。
■ハリルホジッチの事績
(1)戦略・作戦・戦術・個々のプレーを密接に結びつける事例を残した
(2)相手のやり方に対応してプレーする柔軟な戦略・戦術を実践してみせた
(3)フィジカルコンタクトから逃げるな、というメッセージと強化の実践
(4)満足なスケジュールが取れない代表強化における合理的なプロジェクト遂行
これらは、日本代表・日本サッカーが、その発展過程において追求してきた数々の課題と、正面から向き合ったものであり、具体的なソリューションを示した事績と言えます。
(1)「戦略・作戦・戦術・個々のプレーを密接に結びつける」は、組織と個、戦術と個を高いレベルで結びつけようという試みでした。従来、日本サッカーでは「組織」か「個」かといった不毛な二項対立の議論が往々にして起こってきました。
ハリルホジッチは、そこに試合展開上、至るところで生じるボールの争奪戦、目の前の相手を出し抜くための攻守両面での駆け引き、肉弾戦……すなわち「デュエル」(1対1)の力を高めよというメッセージ、世界サッカーの最前線とも結びついた根拠を持ち込んで議論を明確化する足場を築きました。
そして、W杯出場を決めたホームでのオーストラリア代表戦をはじめとして、最終予選の強敵相手にモデルケースとなるような試合を演じ、戦術(組織)と個(1対1)が緊密に結びついた具体的な事例を残しました。