金正恩氏「平和と繁栄の新たな歴史」始まる-南北首脳会談
アンディ・シャープ、Kanga Kong-
南北首脳は2007年以来約11年ぶりの首脳会談開催
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会談では非核化と持続的平和達成策が最大の議題となる見通し
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は27日、板門店の韓国側施設での韓国の文在寅大統領との首脳会談の冒頭、同会談が「平和と繁栄の新たな歴史」の出発点となるとの認識を示した。金委員長は約70年前の南北分断以来、北朝鮮指導者として初めて韓国の地を踏んだ。
午前9時半頃、笑みをたたえた黒い人民服姿の金委員長は、板門店で文大統領に出迎えられた後、軍事境界線のコンクリートブロックを越えて韓国側に入った。その後文大統領は自然に思われる身ぶりで、一緒に軍事境界線の北側に入ろうという金委員長の誘いを受け入れ北側に入った後、南側に戻った。
朝鮮戦争以来3回目で、2007年以来約11年ぶりとなる今回の首脳会談は米朝首脳会談の先行きを大きく左右する見通し。金委員長が北朝鮮以外のテレビで生中継されたのは初めて。韓国の市民らはテレビの前に集まり、金委員長が文大統領と共に、南北双方で親しまれる民謡「アリラン」を演奏する儀仗(ぎじょう)隊を査閲しながら歩くのを見つめた。
金委員長は会談の冒頭、「ここまで200メートル歩いてくる間、強い感慨を覚えた。平和と繁栄の新たな歴史の出発点に立ち、信号弾を撃ち上げるつもりでやってきた」と発言。「腹を割って話し、良い結果を残そうではないか」と呼び掛けた。文大統領は金委員長が会談に合意するという「決断」に踏み切ったことを称賛。「全世界が朝鮮半島の春を注視しており、全世界の目と耳がここ板門店に集まっている」とした上で、「われわれ2人の肩の荷は重いと感じてる」と語った。
会談の成否はこの上なく重要だ。推計60発の核爆弾を持つ北朝鮮は、米全土を射程に収めるミサイル開発の完了目前で、トランプ政権は対北朝鮮経済制裁を強化するとともに、同国が米国に脅威を与え続けるのであれば、軍事行動も辞さないと警告してきた。
ホワイトハウスのサンダース報道官は発表資料で、「朝鮮半島全体の平和と繁栄の未来に向け、会談が前進することをわれわれは望む」と述べた。
首脳会談に先立つ報道では、南北両首脳は非武装地帯の両側から兵士と武器を段階的に撤去させるとともに、1953年の朝鮮戦争の停戦協定に代わる平和宣言に署名する可能性がある。また両首脳は、核査察と制裁緩和を巡る将来の協議のための仕組みについてもシグナルを発する可能性がある。これら2つの問題は過去の交渉で決裂の要因となってきた。
南北首脳会談に先立ち、金委員長は先週、さらなる核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験停止と核実験場の廃棄を表明。トランプ大統領はこの決定を「大きな進展」と評価し、その後、金委員長を「非常に高潔」だと述べた。大統領は昨年、金委員長を「小さなロケットマン」と呼び、北朝鮮が米国を脅し続けるなら同国は「炎と怒り」に見舞われるだろうと警告していた。
首脳会談の準備を指揮した青瓦台(大統領府)の任鍾ソク(イム・ジョンソク)大統領秘書室長は26日記者団に対し、「今回の首脳会談の焦点は非核化と持続的平和達成のための政策に尽きる」と指摘。合意内容がどのようなものになるか「予想は困難だ」と語った。
ソウルに拠点を置くシンクタンク「朝鮮半島未来フォーラム」の客員上級研究員、金杜妍氏は、「金委員長が文大統領を軍事境界線の北側に招き入れたことが最も興味深い」とし、「これは金委員長が自分の朝鮮半島への影響力を誇示する決意であり、南側にいても攻勢状態にあるということを示している」と説明した。
首脳会談に先立つ報道では、南北両首脳は非武装地帯の両側から兵士と武器を段階的に撤去させるとともに、1953年の朝鮮戦争の停戦協定に代わる平和宣言に署名する可能性がある。また両首脳は、核査察と制裁緩和を巡る将来の協議のための仕組みについてもシグナルを発する可能性がある。これら2つの問題は過去の交渉で決裂の要因となってきた。
核兵器は北朝鮮の自己存在の中心に位置しており、憲法に「核保有国」であることを明記している。このため核放棄は単なる戦術的選択肢以上のものになる。それは金正恩体制の権力維持手法の根本的変化を示唆する。また査察団受け入れなど、核プログラムの廃止に向けた進展には時間がかかり、複雑なものになる可能性が高い。
原題:Kim Jong Un Urges Peace After Historic Walk Over Korean Border、Kim Jong Un Makes History With Short Walk Over Korean Border(抜粋)