「地元に帰って、食べたくなるものってありますか?」
そんな質問を、取材で各県人に続けていました。進学や就職で地元を離れてみて、「その地域でしか食べられないもの」に気づくこと、ありますよね。長野県の人に先の質問をしたら、多く返ってきた答えのひとつが「サバとタケノコの味噌汁」。
え、サバを味噌汁に!?
サバはサバでも、サバの水煮缶を使うんですよ。(取材で集めた地元の方の声より。以下同)
なんと!
長野県は内陸地、海に面してないのにサバを使うとは驚きましたが、缶詰だったんですね。たしかに保存がきくもんな。
海なし県だからか、魚への執着はやっぱり強いんですよ。昔からサバの水煮缶はよく料理に使ったし、うちの親は買い置きしてました。ごちそうは必ずお寿司。山の中でもね(笑)。
スーパーのサバ缶の売り場面積、東京はちょっとだけだね。うちのほうはズラッとたっぷり置いてあるよ。
味噌汁にも入れるし、カレーもサバ缶でよく作った
こんな話がまさに“入れ食い”でした。「長野県民はサバ缶よく使うよ」という声、多かったんです。
こういうときは総務省の家計調査をチェック。長野市は「魚介の缶詰」年間の支出金額、全国第3位なんですね。※平成27年~29年平均。
www.stat.go.jpたしかに魚の缶詰愛、高そう。
ちなみに第1位は沖縄で、第2位は新潟。トップの沖縄はチャンプルにツナ缶を多用することから購入機会が多い……のかな? この2県についてはまた別に研究してみます。
さて、ともかくサバ缶味噌汁、実際に作ってみたんですよ。
目からウロコでした!
サバ水煮の味噌汁
コクがあって、実にうまい。
サバの味噌煮があるぐらいだから、サバと味噌の相性が悪いわけないですね。独得の香りが気になる場合は、ちょいおろしショウガを入れるとよさそう。
ともかくも、日常的な味噌汁が「一気にごちそう汁に!」という感じ。魚が入ることでうま味と「料理をしたぞ感」がグッと増す。
でも何せ缶詰だから、開けて味噌汁に入れるだけなんです。
それなのに「なんか俺、すごいもの作った……」って気持ちになれる。長野で愛される理由、一気に納得です。
あえてレシピにすると、
- サバ缶を汁ごと鍋に入れ、好みの野菜を入れる
- 全体が漬かる程度に水を入れて、煮る
- 味噌を溶いて、おわり
10分もかからずできます!
現地でサバとセットでよく具となるのが、ネマガリタケ、ヒメタケとも呼ばれる種類のタケノコ。
ちょっと手に入りにくいですよね。一般的なタケノコの水煮でやってもうまかったです。地域レシピから離れちゃうけど、タケノコなしでもうまい。
豆腐にネギ、サバ水煮で味噌汁なんてのも良かったですよー。いやはや、クセになっていろいろ試してみました。また後でまとめます!
長野でも北のほうの料理
この「サバ&タケノコ味噌汁」は長野でも北部の人達のふるさとフードなんだそう。いわゆる北信地方。
5月になると、このネマガリタケを探しに山に行くんですよ。見つかるとうれしくてねえ。
ヒメタケ採りは初夏の風物詩。
昔は季節のものだったけど、今ではシーズン以外も瓶詰にしたのが売ってるよ。外国産もあるけどね。
ちなみに、長野でも南のほうの人に聞いてみると当然のごとく「知らない」との答えが。「ケンミンショーで知りました」なんて人も。
長野、おっきいもんなあ。ちなみに県の大きさでいうと長野県は第4位なんですね(トップ3は北海道、岩手、福島)。
他の水煮缶でもやってみた
「サバの水煮缶の味噌汁がうまい」ということが分かったので、他の魚缶ではどうなるんだろう……と思って試してみました。
まず激推しなのが
イワシ水煮とキャベツの味噌汁
ハマりました。
これ、かなりリピートしました。イワシのコクとキャベツの甘み、すんげえ相性いい! このときはあまってたニンジンとブナシメジも入れてますが、そのへんはもう自由で。
サバ味噌汁もそうなんですが、もうこれと白飯だけで一食の満足度、じゅうぶんなんですよ。メインおかずになる味噌汁だ。
サケ水煮缶とホウレン草の味噌汁
これも良かった。ただサバやイワシに比べてインパクトは優しくなりました。サケとホウレン草ってよくクリームソース系で組み合わせるので相性いいかな、と思ったら案の定。もし苦手じゃなければ、ここに豆乳を加えてもおいしかったですよ。
サンマ水煮缶と白菜、ネギの味噌汁
これまたうまい……。
サンマのコクも味噌といい相性。白菜とネギ入れたのもあって、海鮮鍋食べてるかのような満足感。豆腐やエノキ入れてもいいだろうなー。七味ふってみたら、もう「つまみ味噌汁」って感じになりました。
【まとめ】
今回試したすべての「魚の水煮缶×味噌汁」にいえたことなんですが
- ダシ要らず
魚のコクだけでじゅうぶんなダシに。
- 手軽この上ない
缶詰を汁ごと鍋に入れる→野菜類と水入れて煮る→味噌入れる
この3プロセスで鍋を食べてるぐらいの満足感に。
- おかず要らず
味噌汁に主菜(魚)と副菜(野菜類)をインしてますからね。忙しいとき、おかず作るの面倒なとき、まさにこれ作らずしてどうする、という感じでした。
- 他のバリエーションも
「缶詰×野菜やキノコの組み合わせ」はもう自由に楽しめますな。チンゲン菜や小松菜、豆苗などはサバ、イワシ、サケ、サンマのどれにでも合いましたよ。豆腐や油揚げ、厚揚げ、大豆を入れてタンパク質さらにアップもよさそう。
【結論】
北信の人たち、素敵なものを教えてくれて、ありがとう。
土井善晴先生の『一汁一菜でよいという提案』をまさに地で行くような郷土メシでした。すばらしいおかずスープだ。さらに調べてたら妙高市や上越市など、新潟の上越地方でも同じようにサバ缶×ネマガリタケ味噌汁を作るようですね。
あと、残ったサバ水煮味噌汁を冷蔵庫に入れておいたんですよ。なんとなくそのまま冷えたの飲んでみたら…
これ、なんちゃって冷や汁だ!
早速キュウリスライスして入れたら、実にいい。これから暑くなったらおすすめ。
うーん、味噌汁観が今回グイっと広がりました。日本のローカルレシピ、やっぱり面白いぞ。